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Craft
2019.10.18

柄に浮世絵が!贈って喜ばれるダマスカス鋼折り畳みナイフを検証

この記事を書いた人

ナイフマニアではないごく普通の人に贈って喜ばれるナイフ、というものは存在するのだろうか。

ナイフマニアというだけで、日本では怪訝な顔をされることが多い。「怖い」「恐ろしい」「怪我したらどうするんだ」等々、筆者もいろいろなことを言われている。

だが、ナイフは元来生活必需品である。それを恐れる必要は全くない。

また、ナイフは様々な角度から付加価値を与えることができる製品だ。製造者の工夫と意欲次第で、ナイフの設計はいかようにも変化する。

ということで今回は、「他人に贈って喜ばれるナイフ」を探してみたいと思う。

刃物鍛造は「男ばかりの世界」

CS放送のヒストリーチャンネルというチャンネルに『刀剣の鉄人』という番組がある。

これは全米から毎回4人の鍛冶職人を呼び、指定した刀剣を鍛造させてチャンピオンを決めるという内容だ。刀剣職人協会の名匠J・ニールソン(ニールソンの療養中はジェイソン・ナイトに交代)、武器再現専門家デービッド・ベイカー、武道家ダグ・マルカイダが提出された武器の審査を担う。アメリカでは武器再現専門家という職業が成立していることに驚きだが、ともかくこれだけでも男心くすぐる人選だ。

そう、男心である。逆に言えば、刃物鍛造の世界には女性が少ないのだ。『刀剣の鉄人』でも、シーズン3エピソード21でようやく女性職人がチャンピオンになったほど。

最近ではどのメディアで書くにもジェンダーに関する言及には気を配る必要があるが、それでも刃渡り20cm越えのボウイナイフを見て「格好いい!」と思う女性よりも、「怖い」と思う女性のほうが圧倒的に多いはずだ。

だからこそ、格好いいボウイナイフを鍛造する女性職人は極めて貴重な存在なのだが。

山茶花とダマスカス鋼

ということを男の筆者が考えてもあまり意味はないのかもしれないが、この記事では先述の通り「他人に贈って喜ばれるナイフ」をどうにか探していきたいと思う。

ここで言う「他人」とは、もちろん女性も含まれる。「怖い」よりも先に「美しい」「格好いい」という言葉が出てくるようなものでなければ、とても贈呈用にはできないだろう。

そのようなテーマを抱えつつ今回筆者が見つけたのは、このナイフだ。全長96mm、ブレード長41mm、重量40gの小さな折り畳みナイフ。ハンドル部分に『草木花鳥図会』の山茶花が描かれ、上品な印象を醸し出している。

メーカーは岐阜県関市のジー・サカイ。ナイフマニアならば誰でも知っている名前だ。

このナイフの商品名は『浮紋-UKIMON- ダマスカス 山茶花』。その名の通りブレードはダマスカス鋼。異なる種類の鋼材を積層鍛造したものである。細かい糸目模様が美しい。最近ではブレード表面にプリントしただけの「なんちゃってダマスカス」もある中、5cm未満の小型ナイフに本物のダマスカス鋼を使用する意義は決して小さくない。

この『浮紋』はシリーズ製品で、ハンドルの絵柄は全5種類の用意がある。中には葛飾北斎『凱風快晴』の赤富士もあるから、このナイフを設計した人は粋な趣味の持ち主であることが想像できる。

ブレードと柄は「一心同体」

先日、小学館の本社で和樂webの他のライターと交流する機会があった。

その時に日本刀に詳しい人と話したのだが、ナイフは日本刀とは違い「柄がブレードと一体になっている」ということを指摘された。

それはフルタング構造のナイフを指す意味に留まらず、柄の美しさが本体そのものの評価に含まれるということでもある。対して日本刀はいつでも柄と鍔を分離できるから、「刀の評価」とはブレード単体の評価を表す。

ナイフの場合は柄の表面に施された装飾の他、その機能性も考慮される。折り畳みナイフは持ちやすさとブレードの収納を両立しなければならない。筆者を含めた素人が迂闊に考えるよりも、奥の深い製品なのだ。だから筆者のナイフ関連記事は、ブレードと共に柄を語る機会が多いと思う。それは編集長にも指摘されたことではあるが。

「ナイフを愛でる」ということ

今回取り上げた『浮紋』は、ある意味でナイフの魅力を抽出しているかのような製品だ。

ブレードと共に柄の模様や形状を楽しむ。銃刀法の問題で理由なく携帯することはできないが、それならそれで構わない。ナイフを愛でることなら自宅の中でもできる。

ブレードを畳んだ状態であっても、製品をじっくり鑑賞することができる。普通の人間がナイフマニアになる第一歩は、つまるところその要素である。男だろうと女だろうと、美しいものを見て癒される心理は不変のものだ。

そういう意味で、他人に贈呈するための1本はこのナイフが一番相応しいのでは、と筆者は考える。

【参考】
浮紋-UKIMON- ダマスカス 山茶花(さざんか)-ジー・サカイオンラインショッピング

書いた人

ノンフィクションライター、グラップリング選手、刀剣評論家。各メディアでテクノロジー、ガジェット、ライフハック、ナイフ評論、スタートアップビジネス等の記事を手がける。