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Culture
2019.10.28

日本人は見立て好き? 歌舞伎からテレビまで日常に潜む「見立て」を考えてみる

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日本人は見立て好きである。思い当たる節がなくても「じゃあこのペンが人間で、この紙が舞台で…」と、デスクにあるものを何かに見立てて説明したことのある人は多いだろう。

見立てとは何か?

「見立て」を辞書で引いてみると以下のように記されている。

1.見て選び定めること。選定。
2.病気を診断すること。
3.あるものを、それと似た者で示すこと。
4.思いつき。また、趣向。
5.見送り。送別。

出典『大辞泉 増補・新装版』小学館

私たちが日常会話でよく使う意味は、冒頭で述べたように「3.あるものを、それと似た者で示すこと」だ。子どもの積み木遊びやおままごとも「見立て」と言って良いだろう。こういった日常的な表現にとどまらず、日本文化や芸術において見立ては技法として用いられてきた。

江戸時代の趣向の一つでもあった「見立て」

例えば、歌舞伎において「見立て」は非常に重要な要素だ。別の辞書を引いてみると次のように記されている。

江戸時代の芸術創作上の趣向の一つ。
江戸文芸の全般に共通の趣向であるが、ここでは歌舞伎に直接関係のある面に限って記す。

歌舞伎の演出のうち、周知のある形を背後に想像させるような特別の形を作る場合にいう。たとえば《曾我の対面》の幕切れは、工藤祐経を鶴の形、五郎・十郎と朝比奈とを富士山の形に見立てた見得になる約束で、初春狂言にふさわしいめでたさを象徴する。

《忠臣蔵》七段目で、酒宴の余興に仲居たちが〈見立て〉の遊びをするところがある。

出典『世界大百科事典』平凡社

こうした高度な演出に限らず、落語でも扇で蕎麦をすする仕草を見せたり、日本庭園は石だけで水の流れを表現したりと、日本には見立てによってイマジネーションをふくらませる文化が根付いている。

注目を集める見立て作家の作品

現代アートにも目を向けてみよう。これまでの芸術と異なり、もっとダイレクトに「見立て」をテーマに創作活動をする日本人がいる。ミニチュア写真家で見立て作家の田中達也さんだ。2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以来、毎日作品をインターネット上で発表し続けている。

ダイゴー「MINIATURE LIFE DIARY」より

私たちの慣れ親しんだ雑貨や食べ物が、田中さんの手にかかると別世界が見えてくる。例えば付箋はヨガマットに、アイスクリームは地球に見えてくるから不思議だ。

ダイゴー「MINIATURE LIFE DIARY」より

▼「MINIATURE LIFE DIARY」の商品詳細はこちら
https://www.pal-shop.jp/category/IP_001_000_000/A12912008.html

またアーティストの鈴木康広さんは「見立て」にまつわる作品を多く発表している。船の航跡をファスナーに、剣玉の赤い玉をリンゴに見立てるなど、見慣れたものや現象を独自の視点で捉え、世界の見方を広げている。

まばたきとはばたき』鈴木康広 青幻舎

私たちは毎日「見立て」にふれている

こうした作品や活動が注目を集めているように、日本人の見立て好きは、現代においても変わらない。

ファーストフード店やレストランでは「爆弾」や「お月見」なんて名前のついた商品を見かけるし、テレビをつければ芸人が相方を家族や恋人に見立ててコントをしたり、サスペンスドラマではその土地の物語や歌になぞられて事件が続々と起きている。私たちは知らず知らずのうちに、どこかで「見立て」を楽しんでいるのだ。

茶の湯、浮世絵、演劇、作陶。和樂webの記事のテーマは日本文化の入り口であり、見立てにまつわるものも多くある。和樂webの記事が、見立てを読み解き、想像をふくらませるヒントになることを願っている。