ここ数年のボードゲームやカードゲームの流行で、実にさまざまなゲームが世に出ています。
そのなかでも、「日本人らしい自分の謙虚さ」を競い合い「負けるが勝ち」という、とびきりユニークなコンセプトのゲームが登場しました。
その名は「四季折折」。和菓子の菓子折りを作るというチャーミングなものですが、譲り合いの精神が問われるちょっとシビアな世界観。
果たしてそれはどんなゲームなのか、これから紹介しましょう。
「四季折折」の概要
ゲームの舞台設定は、仲の良い数人がお茶会を開き、そこで供されたの数々の和菓子を折箱に詰めてゆくというものです。本来は、できあがった菓子折りの美しさを競い合うつもりだったのが、誰もが相手に喜んでもらおうと、別の人の菓子折りを充実させることに夢中なり…かくして「自分の謙虚さ」を競い合う遊びが始まった、というものです。
「四季折折」は、3~6人で遊べて20分程度で終わるゲームです。ゲームの要は、正方形の厚紙に描かれた全60枚の和菓子タイルです。これらを縦3マス×横3マスに並べ、完成した9枚の和菓子タイルの配列によって、持ち主に得点が与えられます。
ですが、ゲームに勝つには、自分の菓子折りの得点が最も低くなければいけません。ここが肝心なところです。目指すは、一番謙虚さに勝る人。得点が高ければ勝てる通常のゲームとは真逆なので、ここが難しくて(ルール自体はシンプルですが)、面白いところです。
「四季折折」の始め方
ゲーム開始時に、春・夏・秋・冬のどれかの季節が記されたプレイヤーカードを無作為に1枚、各プレイヤーに配ります。自分がどの季節のカードを持っているかは、他のプレイヤーには明かさないでください。そのため、裏面(役一覧)をおもてにして手元に置いておきます。
和菓子タイルをよく混ぜ合わせ、だいたい3等分に分けて山札を3つ作ります。各山札の一番上の和菓子タイルは、イラストがある面を見せておきます。お茶マーカーを、誰からも手の届く適当な場所に置きます。
一番最近和菓子を食べた人とかじゃんけんで先手を決め、ゲームを開始します。
「四季折折」の遊び方
先手プレイヤーは、山札からどれか1枚の和菓子タイルを選びます。それを自分の手元に置きます(置いた場所を折箱エリアと呼びます)。和菓子タイルが抜かれた山札の一番上をめくり、新たな和菓子タイルをおもてにします。
これで自分の手番は終了。左隣のプレイヤーに手番が回ります(今誰が手番なのかこんがらがらないよう、人型の手番マーカーをその人の手元に置きます)。そのプレイヤーも同じことをします。
手番が1周したら、同じ要領で和菓子タイルをピックアップしますが、今度はそれを自分が選んだ他のプレイヤーの折箱エリアに置きます。置き方のルールですが、既に折箱エリアにある和菓子タイルの最低1つに隣接するように置く(斜め隣接OK)、そして、縦4個または横4個となるような置き方はできません。置くとき、第三者のプレイヤーと相談して、置くプレイヤーと配置場所を決めます。
自分の折箱エリアに和菓子タイルが置かれるのを防ぐため、「お茶くみに出かける」ことができます。その場合、お茶マーカーを自分の折箱エリアに置きます。お茶マーカーの効果は、次の自分の手番が回ってくるまで持続します。これができるのは、ゲーム中1回だけです。
このように手番をぐるぐる回していき、縦3マス×横3マスに9個の和菓子タイルが置かれた時点で、そのプレイヤーの菓子折りは完成します。その人はプレイヤーカードをおもてにして季節を明かします。
「四季折折」の勝敗の決め方
全員が菓子折りを完成させたら、プレイは終了。各自の得点を計算します。
得点は、特定の条件を満たした並べ方(役と呼びます)に基づいて生じます。例えば、「四季集め」。これは、春夏秋冬の和菓子タイル(地色が赤=春、緑=夏、薄茶=秋、青=冬)がもれなく縦2マス×横2マスに並んでいれば成立。1点獲得となります。
ちなみに、減点要素が1つだけあります。それは、折箱エリアの中に同一の和菓子タイルがあった場合。余剰の和菓子1つにつき2点引かれます。
実際に遊んでみて
「四季折折」には、他にも細かいルールは若干ありますが、ほぼ上記の情報で遊べてしまえます。
また、マンガ形式のルール解説も公開されています(こちらよりダウンロード)。
ルールは簡単ということで、さっそく4人集めてやってみました(以下、書き手の「自分」、他の人たちはAさん、Bさん、Cさんと呼びます)。
ルールの説明を読むと、オプションルールに「両家顔合わせ」というのがあり、2チームに分かれての対抗戦ができるというので、「自分」とAさんのチーム対BさんとCさんのチームで対戦することにします。この場合、各チームの2人の得点を合計し、それが低いチームが勝利します。
まず、プレイヤーカードの配布。「自分」は春、仲間のAさんは秋でした。ということは、相手チームの持っているカードは夏と冬ということになります。ただ、どちらがどちらのカードを持っているかは、わかりません。
スタートプレイヤー(先手)はBさんに決まりました。ゲーム開始時は下写真のようになっています。
最初のラウンドにすることは、山札から各自1枚の和菓子タイルを選んで、自身の菓子折りの1つめとすることです。ここで、あまり考える必要もなさそうなので、すぐに1周して終わります。
2ラウンドめ以降も、山札から和菓子タイルを選ぶのですが、今度は相手チームの折り箱エリアに置くことになります。各人、山札にある3枚から選ぶという制約のなか、できるだけ相手チームに得点がいくように考えねばなりません。
ここで、得点の入る並べ方、つまり「役」について補足しましょう。「四季集め」は前述しましたが、ほかには以下の役があります。
・月並べ:7、8、9というように、和菓子タイルの月が縦横斜めのいずれかの並びで順番に3つ並ぶと1点。
・季節揃え:同じ季節の和菓子タイルが一列に並ぶと1点。
・紋章揃え:同じ紋章の和菓子タイルが一列に並ぶと1点。
・季節加点:持っているプレイヤーカードと同じ季節の和菓子タイル1個につき1点
両家顔合わせで対戦開始
Bさんは、「自分」のヒマワリの左横に、山札にあった練り切りの笹を置きました。これだけで、月並べ(7月と8月)と季節揃え(夏)へのリーチがかかってしまいます。
次は「自分」の番です。山札から最中を選んで、Bさんのモモの斜め下に置きます(紋章が同じ)。続いて、AさんはモモをCさんの桜の横に。月並べと季節揃えがねらえていい感じです。最後にCさんが錦玉羹を「自分」のヒマワリの下に置きました。夏で固められつつあって、状況はよろしくありません。
夏の和菓子で窮地に陥る「自分」
3ラウンドめに入ります。Bさんは、Aさんの錦玉羹の下にうさぎを置きます。そして、「自分」は、うさぎが取り去られて新たに山札のてっぺんに登場した天の川を、Cさんの桜の下に置きます。これを選んだのは、自分の折箱エリアに、(夏の和菓子である)天の川を置かれピンチに陥らないようにするためです。
そのように、おしとやかな攻防が続き、後半戦に突入。夏の和菓子で埋め尽くされようとする「自分」の折箱エリアですが、「お茶くみに出かける」を利用して1ラウンドしのごうとしました。ただ、このとき山札にあるのは、いずれも春の和菓子。この作戦に効き目があったかと言えば、微妙かもしれません。
山札の流れが変わって逆転の機会が?
ですが、山札の和菓子タイルの顔ぶれが変わっていき、次第に相手チームに不利なものが増えてきました。チャンスとばかりに、得点源を相手のエリアに作っていきます。でも、形勢逆転は厳しいかなと思っていたところで、全員の菓子折りが完成しました。
季節加点が勝敗の要に…
さて、得点を計算します。「自分」は、夏の和菓子タイルを次から次へと置かれて、季節揃えだけで3つ=3点もありました。このほか、月並べで2点、紋章揃えで2点、ヒマワリが2つあって減点2点となり、合計5点です。
以下、同じようにチームメイトのAさんも計算すると、季節集めで1点、月並べで1点、紋章揃えで1点の計3点。しかし、Aさんは秋カードを持っており、秋の和菓子タイルがあちこちにありました。そこで秋の和菓子タイル1個につき1点を加えねばなりません。それは5個もあって5点が加算されます。しめて8点。チーム全体で5+8=13点。
相手チームを見ると、Bさんは月並べで2点、紋章揃えで3点、季節加点で1点(合計6点)、Cさんは月並べで2点、紋章揃えで1点、季節加点で2点(合計5点)。チーム全体で6+5=11点。
結果として、2点差をつけられた「自分」&Aさんチームが敗北しました。
この後、本物の和菓子を食べながらの感想戦がありました。初めてやってみての共通した印象としては、「季節加点は侮れない」です。相手チームは、Aさんが秋カードを持っているだろうという「読み」で、優先的に秋の和菓子タイルを投入してきました。対して、こちらのチームは、季節加点のことはほとんど考えておらず、季節や紋章を並べることに熱中していました。しかし、季節加点はタイル1個で1点。3個並べることに比べれば断然ラクです。もちろん、相手の季節の推測が外れればダメですが。いずれにしても、季節加点を軽視してしまったことが反省点となりました。
このように、「四季折折」は簡単にルールが学べて、みんなで楽しく遊べる愉快なゲームです。特に和菓子好きにはおすすめ。プレイの後は、和菓子を食べたくなることうけあいなので、あらかじめ茶菓を用意しておきましょう。
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