和樂webでは過去に百人一首にまつわる記事をお届けしてまいりましたが、2020年1月14日に興味深いニュースが飛び込んできました。『ちはやふる』を手がけた漫画家の末次 由紀(すえつぐ ゆき)さんが発起人となり、「一般社団法人 ちはやふる基金」が設立されたのです。
なぜ百人一首は今もなお愛されているのか?
鎌倉時代初期の歌人、藤原定家によって『小倉百人一首』が編まれたのは、770年も昔のこと。以来百人一首は、時を超えて、強い光を放ち続けています。そこには、日本人が紡ぎ続けた言葉の記憶があり、百首の向こうには、何万何十万という奥深く、そして美しい和歌の世界が横たわっています。『万葉集』以来の秀歌を的確に引き出して、示してくれたのは定家の力量です。定家の晩年の目の高さは、並の歌人のものではありませんでした。古典の世界への入り口であると同時に、ある到達点をも示している存在、それが百人一首なのです。
競技かるた人口増加に伴う課題
そんな百人一首の普及や競技かるたの情報発信、各種大会の運営支援等を目的とした基金の設立が、今回のニュースです。基金設立の背景には、2008年から連載中の漫画『ちはやふる』がありました。競技かるたに打ち込む高校生の成長を描く本作は連載開始以来、多くの人に愛されてきました。また、この作品の連載以降、国内における競技かるた人口は大幅な増加傾向にあり、現在その数は100万人に達すると言われています。
しかしながら嬉しいニュースの一方で、競技かるたの普及振興、選手の育成支援、大会運営等に携わってきた関係各所は、運営負担の増大をはじめ、新たな課題に直面しているのが現実です。
「かるたに恩返ししたい」
そこで「かるたに恩返しがしたい」という末次さんの強い意向のもと、“かるたを愛するみんなのために”をスローガンに、今回の基金が設立されました。
競技かるたで、仲間と楽しい時間を過ごしてもらいたい。
競技かるたからもらった、たくさんのものに恩返しをしたい。
かるたの競技人口は右肩上がりを続けています。
だからこそ、競技かるたに親しみを持つ子どもたちに
「ずっとかるたを続けていたい」
という夢をもって、強くなっていってもらいたい。
競技かるたを通じて、百人一首の文化に触れ、
世界中に友達を作ってもらいたい。
これまで競技かるたの世界を支えてきた皆様と連携し、
子どもたちの情熱を応援するとりくみが必要だ
——そういう想いから、ちはやふる基金を立ち上げるに至りました。
ご理解、ご協力いただけますと幸いです。末次 由紀さんより
基金では、スポンサーからの寄付金、また『ちはやふる』関連グッズ販売の収益金をもとに、競技かるたや小倉百人一首の情報発信、大会の運営支援、子どもたちへの啓発支援、ファンの育成支援などが継続的に行われます。
また、2020年2月23日(日)に、京都府・嵐山文華館にて開催される「小倉百人一首競技かるた 第1回 ちはやふる小倉山杯」への協賛も決定しています。
競技かるたの未来を支援する、新しい試み。今後の展開が楽しみです!
公式サイト:https://chihayafund.com