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2021.05.04

日本人のゲーム好きとぶっとんだアイデア力。なんと!そのルーツは『鳥獣戯画』にあった

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カエルとウサギの相撲が有名な『鳥獣人物戯画』(以下『鳥獣戯画』、平安〜鎌倉時代、国宝、京都・高山寺蔵)。甲乙丙丁全4巻すべてを広げた形で見られるというので、東京国立博物館で開かれいている特別展 「国宝 鳥獣戯画のすべて」にいそいそと出かけたつあおとまいこは、そのユーモラスな内容に興じつつ、あることに気づきました。それは、日本人のゲーム好きのルーツともいえる描写が、この絵巻にこれでもかというくらいたくさんあったことだったのです。

最近『どうぶつの森』にハマってる私、興味津々!

えっ? つあおとまいこって誰だって? 美術記者歴◯△年のつあおこと小川敦生がぶっ飛び系アートラバーで美術家の応援に熱心なまいここと菊池麻衣子と美術作品を見ながら話しているうちに悦楽のゆるふわトークに目覚め、「浮世離れマスターズ」を結成。二人が『鳥獣戯画』で目の当たりにした数々の遊びとは!?

カエル界のマイク・タイソン登場!

『鳥獣人物戯画』甲巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

つあお:『鳥獣戯画』であまりにもお馴染みのカエルとウサギの相撲、何度見ても笑っちゃうんですけど。

まいこ:楽しいですよね!

つあお:カエルがウサギに勝った場面のアップはよく見るけど、その少し右で、2匹ががっぷり組み合ってる! こっちは今まで見過ごしてたなぁ。

まるでプロレス!?

『鳥獣人物戯画』甲巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

まいこ:ホントだ。カエルがウサギの足を引っ掛けて、耳をパクっとしてる。カエルが勝ちそー!

つあお:耳をかむのって反則じゃないのかなあ?

まいこ:かなり反則だと思いますよ! マイク・タイソンじゃないんだから!

つあお:うわ! マイク・タイソンの耳食いちぎり事件! ボクシング界の珍事! 懐かしい。っていうか、ウサギは相当痛そう。

まいこ:何しろ耳が2本ともかまれちゃってますからね。ある意味タイソンよりも狂暴。

つあお:『鳥獣戯画』のリアリティーは、すさまじいなあ! でも、そもそもこんなにでかいカエルがいたらかなり怖いですよ!

まいこ:確かに! ウサギと同じサイズ!

つあお:結局、カエルが勝ってるから、反則規定はかなりゆるい世界なのかも(笑)。

まいこ:勝負がついた場面では、カエルが気を吐いて超ドヤ顔してますね(笑)。

『鳥獣人物戯画』甲巻より 平安時(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

つあお:「気を吐く」ってよく言うけど、実はこういうことだったのか! なるほど! しかし、確かに吐いている「気」がすごい。このカエル、妖力の持ち主のように見えます。

まいこ:ウサギはすっかり負けたという感じで、転がっちゃってる。

つあお:こうやって見ると、物語の絵巻物でよく使われる「異時同図法」が『鳥獣戯画』でも使われていたらしいことがわかりますね。「異時同図法」は、漫画のようなコマ割りで話を進めるのではなく、同じ画面の中で場面がどんどん展開する手法です。

まいこ:『鳥獣戯画』ってやっぱり漫画の先祖みたいなものなんですね!

つあお:ギャグの要素もあるし、思いっきり漫画の先祖です(笑)。

まいこ:ギャグといえば、競技ではないんだけど、この絵巻の丙巻には木材を運ぶ作業としての「木遣り」の場面が描かれていて、要注目ですね!

つあお:ほぉー!

まいこ:木を引っ張っている縄が切れてひっくり返った人たちが大笑いしてるんですよ! 現代にも通じるお決まりのギャグの要素を感じました。もうドリフ並みです(笑)。

まわりから、ワハハ! と笑い声が聞こえてきそう。

『鳥獣人物戯画』丁巻より 鎌倉時代(13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

『鳥獣人物戯画』丁巻より 鎌倉時代(13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

つあお:ホントだ、ドリフみたいにズッコケてる(笑)。それでね、擬人化されたカエルとウサギの相撲を見ていてはたと気づいたのが、人間たちも当時から相撲を取って遊んでたんだろうな、ってことなんです。

まいこ:『鳥獣戯画』でその場面が描かれた甲巻は、確か平安時代の終わり頃のものでしたよね!?

つあお:そうです。ひょっとすると、相撲史のうえでも重要な資料なんじゃないかな?

まいこ:相撲って、そんなに古い競技だったんですね!

つあお:和樂webの過去記事に相撲の歴史について言及されたものがあって(「相撲の起源は神話の時代?歴史や用語・作法をわかりやすく解説!」)、何と古墳時代の埴輪に「力士の姿を想起させるものがある」のだとか!!

まいこ:すご〜い! 力士の埴輪、想像するだけでもかわいいかも?!

つあお:調べたら、力士像の埴輪は文化遺産オンラインに載ってました!(『男子立像(力士像)埴輪』) 埴輪って形がとってもゆるふわ(笑)。心が和みます。それで考えたのがね、力士がいたってことは、きっと観戦者もいただろうってことなんですよ!

まいこ:当時から今みたいな競技だったのですかね。

つあお:詳しいことはわからないけど、そうだとすると、どの時点からか、相撲の鑑賞が一種の娯楽になっていた可能性もあるんじゃないかと。

まいこ:『鳥獣戯画』でも、相撲を取ってる2匹だけじゃなくて、周りで見てるカエルやウサギがいる。しかも、楽しそう!

わいわいがやがや、にぎやか〜!

『鳥獣人物戯画』甲巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

『鳥獣人物戯画』甲巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

つあお:取組中の2匹の右にはウサギの観客が、勝負がついた場面の左側にはカエルの観客がいるように見えますね。カエルの観客の方は、自分たちの側が勝って大喜びしているみたいに見える!

まいこ:すごい喜び方ですね。ひいきのチームが勝った現代のスポーツの観客を見てるみたいです!

つあお:こんなに昔からこういう競技があったと考えると、結構感慨深いなぁ。

まいこ:相撲なら、道具も何もなしにとりあえず体一貫でできるし!

日本の闘牛の大迫力

『鳥獣人物戯画』乙巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

つあお:『鳥獣戯画』って、動物同士が戦う場面がほかにもたくさんある! 眺めていると、いろいろ出てきますね。闘牛の場面とか。

まいこ:平安時代の日本で闘牛?! 闘牛はスペインだけじゃないんですね!

つあお:人と牛が戦うスペインの闘牛とは違って、日本の闘牛は牛同士が戦う競技のようです。

まいこ:確かに! この絵には闘牛士はいませんね。

つあお:ただ、『鳥獣戯画』の闘牛の場面はカエルとウサギの相撲とは違って、すごくリアルな感じがします。こっちは擬人化表現ではなく、当時ホントにあった風景を描いたんじゃないかと。

まいこ:ぶつかり合った2頭の牛、両方とも力がみなぎってますね! 足の盛り上がった筋肉とか目も超真剣。ちょっと右で戦う準備をしてる牛の目が大迫力!

つあお:牛の輪郭を描いた線はホントに巧みだなぁ。

まいこ:この牛たちは、人間が戦わせてるんですかねぇ。

つあお:明治時代の日本画家、菱田春草が画学生だった時代に描いた『鎌倉時代闘牛の図』という絵では、角を突き合わせた牛たちの周りを人間たちが囲んで見ています。

まいこ:観戦してるんですか?

つあお:そんな雰囲気です。春草はおそらく勉強のために接していた古画にインスピレーションを得てその絵を描いたんだと思う。きっとそういう絵を見たんじゃないかな。

まいこ:なるほど。

つあお:日本では牛が角を突き合わせる闘牛を人間が観戦する風習は今でも全国にあります。平安や鎌倉の昔からあったのでしょうね。

まいこ:へぇー!

つあお:ちなみに『鳥獣戯画』には、闘鶏とか闘犬の絵も描かれてますね。

まいこ:動物たちも人間の道楽につき合わないといけないから大変ですね。

『鳥獣戯画』って、こんな迫力あるシーンも描かれているんですね。初めて知りました!

日本人のゲーム好きのルーツをたどる

つあお:全巻を一気に眺めてみて改めて認識したんですけど、この絵巻の名称は『鳥獣人物戯画』、つまり「人物」もけっこうたくさん描かれているんです。

まいこ:確かに、全4巻のうちの2巻は人物ばっかりですね。

つあお:そして、描かれた人間たちは、結構遊んでるんです!

まいこ:えっ!?

つあお:日本人って昔からこんなに遊び好きだったのか!? って感じなんですよ!

まいこ:どんな遊びをしているのでしょう?

つあお:けっこうぶっ飛んでます。たとえば、この絵、「耳引き」という遊びをしてます。

な、何かの罰ゲームなの(笑)!?

『鳥獣人物戯画』丙巻より 平安〜鎌倉時代(12〜13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

まいこ:とりあえず、耳が痛そう(笑)。

つあお:これ、多分引っ張り合って勝負をつける遊びだと思うんだけど、あんまりやりたくないですね(笑)。

まいこ:そもそも、この絵のように耳にひもを引っ掛けられることからして不思議です。

つあお:きっと、『鳥獣戯画』が描かれた平安・鎌倉時代の人々は何でも遊びにしちゃったんだろうな。とにかく遊び好き!

まいこ:ひも一本でできる遊び!

つあお:素晴らしく経済的な遊びですね。うちの子供たちにも見習って欲しいなあ。

まいこ:シンプルなだけに、むしろクリエイティブマインドが問われる気がします。

つあお:ほかにも、「首引き」とか「目比べ」(にらめっこ)とか「腰引き」とか、お金のかからない遊びがいっぱい出てきますね。

体を張ったゲーム!

『鳥獣人物戯画』丙巻より 平安〜鎌倉時代(12〜13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

まいこ:とにかく遊ぶためにイマジネーションフル活用! ひも一本であらゆる遊びを考えだしてる!!

つあお:人間は遊びの動物である! って感じです。

まいこ:この遺伝子、現代人にも受け継がれてるのでは? ファミコン(ファミリーコンピュータ)とかプレイステーションとか、おとなもけっこうやってますよね。

つあお:日本人て、ホントにゲーム好きですもんね。

まいこ:つあおさんはゲームはするんですか?

つあお:実は一時期ゲームやってたんですけど、素質がなくてまったく上達しなかったので、早めに離脱してしまいました。

まいこ:へぇ! やってたということ自体、ちょっと意外です。どんなゲームをやってたんですか?

つあお:『平安京エイリアン』とか……。

まいこ:えっ?! 「平安」って。。。微妙に『鳥獣戯画』とつながっている!

『平安京エイリアン』気になりすぎます。なんですか一体......!

平安京エイリアン:東京大学のサークル「理論科学グループ」によって1979年に開発された。最初はマイコンゲームであったが、1980年にアーケードゲームとしてリリースされた。スペースインベーダー以降「テレビゲーム」として流行していくアーケードゲームとしては初期の作品となる。
プレイヤーは検非違使(けびいし)となり、敵のエイリアンを倒すことになる。ステージは平安京を模した碁盤目状になっており、道路に落とし穴を掘ってエイリアンを埋めることで倒すことができる。エイリアンが落とし穴にかかると一定時間以内に穴を埋め戻さなければならない。
(ニコニコ大百科より引用)

つあお:やっぱり自分も日本人だったんだなぁとしみじみしてしまいます(笑)。実は『鳥獣戯画』でも、囲碁や将棋、すごろくなどをしている人々も描かれています。昔から日本人は、ゲームが大好きだったんですね!

『鳥獣人物戯画』丙巻より 平安〜鎌倉時代(12〜13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

『鳥獣人物戯画』丙巻より 平安〜鎌倉時代(12〜13世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

まいこ:ホントだ。こちらは道具も複雑化して、頭脳系で洗練されてる。

つあお:ウサギやカエルにはできないかも。

まいこ:えーっと……模本を見ると、ウサギと猿が囲碁をしている絵、ありますよ。ほら!!

『鳥獣戯画模本(住吉家旧蔵本)』より 安土桃山時代、慶長3年(1598年) 東京・梅澤記念館 展示風景

つあお:おお、ホントだ。何ごとも、先入観で決めつけてはいけないなぁ! うちの庭にカエルが住んでるから、もっとちゃんと観察してみよう。カエルだって囲碁や将棋をするかもしれない!

まいこ:昔から日本人がゲームのアイデアに長けていたとわかり、そんな日本人が開発した現代版のゲームが世界中で流行っていることを誇りに感じられるようになりました!

つあお:『鳥獣戯画』はやっぱり素晴らしい!

まいこセレクト/『子犬』

『鳥獣戯画』の展覧会なのに子犬の彫刻で失礼します(笑)。
でも、犬大好き派の私としてこの作品を取り上げないわけにはいかないという使命感に燃えるほどの天才的愛らしさなのです!
しかも、木彫という渋い技法で!!
この子犬の彫刻は、『鳥獣戯画』を所蔵する京都・高山寺中興の祖である明恵上人が所持し、かわがっていたものとのこと。
まずこの後ろ姿を見てください。瞬殺です。

『子犬』 鎌倉時代(13世紀)京都・高山寺 重要文化財 展示風景

彫像とは信じられないほど愛らしい後ろ姿。私は、子どもの頃パッピ君という犬を飼っていたのですが、後ろ姿がかわいくて仕方なかった! でも、それを絵や彫刻などで表現するのは無理だと思っていたのに。。。

『子犬』 鎌倉時代(13世紀)京都・高山寺 重要文化財 展示風景

前から見るとこんな感じですよ。会場のキャプションにも「いとおしさ、きわまりなし」と書いてありました。パチパチパチ!
この展覧会のラストを飾るのにふさわしすぎる圧倒的な可愛らしさ。
遊びながら全力で生きる、すべての動物、人間が大好きになりました。

つあおセレクト/猫

『鳥獣人物戯画』乙巻より 平安時代(12世紀)京都・高山寺 国宝 展示風景

画面左上のキツネの前に静かに鎮座してます。『鳥獣戯画』に登場する猫は少ないので貴重。カエルと同じ存在感!

犬派も猫派も今回の展覧会、注目ですね!

つあおのラクガキ

浮世離れマスターズは、Gyoemon(つあおの雅号)が作品からインスピレーションを得たラクガキを載せることで、さらなる浮世離れを図っております。

Gyoemon『うさ戯画』

平安時代にヴァイオリンがあったら、きっとこんな場面も描かれていたに違いありません。

展覧会基本情報

展覧会名:特別展 「国宝 鳥獣戯画のすべて」
会場:東京国立博物館 平成館
会期:2021年4月13日(火)~2021年5月30日(日)※事前予約制
(緊急事態宣言に伴い臨時休館、再開は未定です。今後の最新情報は展覧会公式サイト等でご確認ください)

公式ウェブサイト:https://chojugiga2020.exhibit.jp/

書いた人

つあお(小川敦生)は新聞・雑誌の美術記者出身の多摩美大教員。ラクガキストを名乗り脱力系に邁進中。まいこ(菊池麻衣子)はアーティストを応援するパトロンプロジェクト主宰者兼ライター。イギリス留学で修行。和顔ながら中身はラテン。酒ラブ。二人のゆるふわトークで浮世離れの世界に読者をいざなおうと目論む。

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我の名は、ミステリアス鳩仮面である。1988年4月生まれ、埼玉出身。叔父は鳩界で一世を風靡したピジョン・ザ・グレート。憧れの存在はイトーヨーカドーの鳩。