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2018.12.11

凄っ!フェルメールの名画に登場する牛乳は意外な方法で描かれていた!

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フェルメールが描いた著名な作品のひとつ「牛乳を注ぐ女」。ミルクピッチャーから流れる牛乳に鑑賞者の視線が集まるのは、ピュアな白色の輝きに魅かれるから。この作品のなかに登場する牛乳やパン、女性が頭に被った頭巾を、フェルメールはそれぞれの異なった質感を表現するため、様々な技法を用いて描きました。同じ“白”でも表現方法が全然違うのです。

「牛乳を注ぐ女」で見る、フェルメール 白の表現方法

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」油彩・カンヴァス 1660年ごろ 45.5×41㎝ アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum,Amsterdam/PPS通信社

フェルメールがこの絵を描いたのは20代後半。すでに白い粒を点描するポワンティエ(点綴)技法によって、液体である牛乳やパンの粉を表すことを体得していたことがわかります。牛乳、器の縁、パンなどに光の粒子を白で点描。これは、フェルメールならではのテクニックです。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!

頭に被った白い頭巾には、白い絵具を重ね塗りして、布地のパリッとした手触りまでをも感じさせます。粘度の高い白い絵具・鉛白を厚塗りして、厚手の頭巾の生地感を手触りまで表現しました。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!

また、女性の腕に注目すると、光があたる部分を白くしています。窓から射し込む光を腕に白く載せることで、肌に立体感を与えているのです。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!

伊藤若冲はひとつの絵の具で多様な雪を表現 

一方、日本美術界には、“白で雪を表現すること”に並々ならぬ情熱をもっている絵師がいました。江戸時代中期に活躍をした伊藤若冲です。フェルメールと異なる点は、「ひとつの絵具」で多様な雪を表現したということ。木に降り積もって粘り気を感じる雪も、まさに今降ってきている粉雪も…貝殻を砕いてつくられる白い絵具・胡粉だけでリアルに描き分けました。まさに神技! 絹地の表面だけでなく裏面にも胡粉を施しながら雪の質感やボリューム感を調整する表現力に驚愕します。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!伊藤若冲「雪中鴛鴦図」一幅 絹本着色 宝暦9(1759)年 142.0×79.8cm 宮内庁三の丸尚蔵館

上の作品は、若冲が「動植綵絵」の中で雪を描いた3作品のうちの冬の水辺を描いた1枚。水分を含んで重くなった雪は、部分的に絹地の裏からも胡粉を塗る裏彩色で、雪に明度差を与えて、質感を表現しました。この技法により雪に湿度と重みを与えています。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!

舞い落ちる粉雪は、胡粉を裏から吹き付けたものと、表から吹き付けたものを織り交ぜ、奥行きのある風景に。また、花びらの上に降り積もって時間が経ち、氷のようになった雪もリアルに描き分けました。

「牛乳」の質感を点で描いたフェルメール。白の表現方法がスゴい!

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