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2024.01.26

イギリスは子どもに日本文化をどう伝えている? ロンドンで開催中Japan: Myths to Manga展【Young V&A】

2023年にリニューアルオープンしたイギリス・ロンドンの子供博物館「Young V&A」で、初の企画展「Japan: Myths to Manga (日本:神話からマンガへ)」が、2024年9月8日まで開催されています。

ロンドンの新しい子ども美術館

Young V&A (ヴィクトリア&アルバータ子供博物館)はヴィクトリア&アルバート博物館の分館で、以前はベスナル・グリーン博物館と呼ばれ、当時から子ども向けの博物館でした。
この展覧会では、日本の民話や風景が、アートやデザインに与えた影響を紹介。空、海、森、都市の4つのセクションにまたがる展示構成で、子どもたちに向けて日本文化をわかりやすく説明しています。

天井から下がるのは千羽鶴

モダンな伝統工芸

展示室に入る前から、和太鼓の音が聞こえてきて、日本らしい雰囲気が感じられます。中に入ると、小さな可愛らしい和太鼓が並び、子どもたちが自由に叩けるようになっています。雲と雷のモダンなグラフィックが施された和太鼓は、ちょっと見たところ、イギリス風のアレンジかと思いきや、浅草の和太鼓製造販売元「宮本卯之助」の印がありました。文久元年創業の製造元が作る、遊び心ある本物の和太鼓に、たくさんの子どもたちが夢中になっていました。Sky(空)という展示テーマから始まるので、風神雷神なのでしょう。

和太鼓のBGMに加えて、子どもたちが叩く音が響く空間

雲と雷のモダンなグラフィック

日本古来のものから繋がるキャラクターたち

Skyという展示の中には、七夕祭りの浮世絵とサンリオのキャラクターであるキキララ、十五夜のお月見とセーラームーン、というように日本古来の年中行事から人気のキャラクターの関連をみせてくれます。空=宇宙ということで、ロケットやロボットなどのおもちゃも。そして日本国旗の日の丸は、太陽であるという解説もありました。

七夕祭りの浮世絵とキキララ

そこから、Sea(海)へと展示は移っていくのですが、海上と海中に分かれます。海上のコーナーには、浮世絵の定番、葛飾北斎の神奈川沖浪裏から、船に乗った七福神の浮世絵、恵比寿様のスカジャン、大漁旗と続きます。
海中の展示では、貝を模した陶器や、サンゴのような髪飾り、浦島太郎伝説が紹介されていました。

七福神、スカジャン、大漁旗、と海上の世界

浦島太郎の物語

天災とキャラクター

そこから、ナマズとアマビエが登場。日本において、ナマズは地震のシンボルであることや、コロナ禍にアマビエが疫病退散の御利益があると、流行ったことが説明されています。アマビエのコーナーで「自然災害が多い日本ならではの感覚ね」と説明するお母さんと、それを興味深く聞く子どもたちがいました。
その横に、スタジオジブリ制作の「崖の上のポニョ」の一場面が流れていて、ポニョもまたナマズやアマビエに並ぶ、海中のキャラクターだと再確認。

地震のシンボル、ナマズ

アマビエを興味深くみる子どもたち

シルバニアファミリーのミニチュア文化は雛人形から

そこからForest(森)のコーナーへと移り、竹から生まれたかぐや姫の物語と雛人形の輿入れ道具、鳥獣人物戯画からシルバニアファミリーへの繋がりが、直感的にわかる展示になっていました。シルバニアファミリーは、雛人形的ミニチュア文化と鳥獣人物戯画の融合であったかと、納得。

かぐや姫の物語と雛人形の輿入れ道具

鳥獣人物戯画の屏風(後方)、シルバニアファミリー(手前左)、studioplayfoolの「森のクレヨン」(手前右)が並ぶ

子どもを飽きさせない体験型展示

中央には、くつろげる小さな森のスペースがあり、絵本が並んで、イヤホンからは日本の昔話の語りが英語で流れてきました。5歳の娘が「桃太郎のお話だ!」というので、なぜ英語なのに聞き取れたのかと驚いていると、なんてことはない「Momotaro」といっていました。
その他にも、折り紙や、漫画を描くコーナーなど、子どもを飽きさせない体験型展示が充実。

昔話が聞こえてくる森のコーナー

玖保キリコ氏監修の漫画コーナー

グローバルに活躍する日本人アーティストの作品

また、各テーマに関わる日本人の現代アートが並ぶのが、良いスパイスになっていました。
ほっこりとした緑色の森の空間の中で、目を引く真っ赤なハイブランドの紙袋。超絶技巧で切り出された小さな木は、照屋勇賢氏の「Notice-Forest」で、グローバルな資本主義と自然環境の問題を連想させます。

照屋勇賢氏の「Notice-Forest」

最後のテーマ、City(都市)はそれまでの天然色からは打って変わり、鮮やかな色に溢れていました。電飾の看板が溶け出したようなグラフィックは、古谷茂利の「TOKYO DIZZILY LAND」。古い自動車部品を組み合わせたオブジェは、宮崎啓太氏の「Double Spiral」。それぞれ、東京の街並みだったり、日本で発展した自動車産業を想像させる、日本的なモノといえます。

古谷茂利の「TOKYO DIZZILY LAND」(左)、宮崎啓太氏の「Double Spiral」(右)

そこから、原宿のドールファッション、レディー・ガガが愛用している「Heel-less Shoes」が並びますが、これは日本人の靴職人、舘鼻則孝氏の作品。横に並ぶ、犬用の着物も、とても日本的です。

原宿のドールファッション

舘鼻則孝氏の「Heel-less Shoes」と犬用の着物

美術館の館内には、妖怪のキャラクターがあちこちに潜み、企画展の場所を指し示していました。妖怪ウォッチは欧州にも進出し、人気を集めているので、日本の文化背景を深く知らずとも、海外の子どもたちにとっては既に親しみがあるものなのかもしれません。

館内の妖怪のサイン

なだらかに繋がって行く4つのテーマ

空の薄い青から海の濃い青、森の緑、そしてカラフルな都市という、4つのグラデーションに色分けされた空間は、いきなりテーマが切り替わるのではなく、全てが緩やかに繋がっていました。曖昧な境界線という考え方も非常に日本的で、展示内容だけでなく空間づくりに至るまで、全てが日本文化を感じられる仕上がりでした。
日本人にとっても説明するのが簡単ではない多面的な日本文化を、外国の子どもたちに感覚的に伝える素晴らしい展示。私は日本人の大人ですが、この展示を通じて、現代の身近なものたちが、実は日本古来から脈々と繋がっていた、ということに驚きと共感を覚えました。

小さい子から大人まで楽しめる展示

美術館外観

展覧会情報

展覧会名::「Japan: Myths to Manga」
会期:2023年10月14日〜2024年9月8日
場所:Young V&A (ヴィクトリア&アルバータ子供博物館)
公式サイト

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ウエマツチヱ

フランスで日本人の夫と共に企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の2児を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速いです。 日々の仏蘭西生活研究ネタはコチラ https://note.com/uemma
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