吉原に生まれ、自力で江戸の〝メディア王〟となった男・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)の仕事からプライベートまでを、AからZで始まる26の項目で解説するシリーズ【大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ】。今回は「Y=役者大首絵にブーイング!」をご紹介します! Zまで毎日更新中! 明日もお楽しみに。
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蔦重AtoZ
Y=役者大首絵にファンが大ブーイング!
寛政6(1794)年、浮世絵師・東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)が28枚の役者大首絵で華々しくデビュー!
実はこれ、寛政の改革の出版統制令に反したことで財産の半分を没収されてしまった蔦重が、幕府をこれ以上刺激しないように、地本出版をあきらめて浮世絵で勝負という策略に基づくものでした。
写楽が描いた、歌舞伎狂言(かぶききょうげん)を演じる役者の大首絵は、大胆な構図で、役の内面や役者の個性を見事に描写していて評判になりました。
しかし、ファンからはブーイングの嵐だったとか…。
役者絵は、贔屓(ひいき)にしている役者のポスターのようなものですから、できる限り美しく、かっこよくあってほしいもの・・・。それが、欠点のほうがが目立ってしまっては、不興(ふきょう)を買うのも仕方のないこと。しかし、その表現力が美術界における写楽の高評価につながっているのですから、皮肉なものです。
実際のところ、今日これほど有名になっている写楽の役者大首絵も、売り上げ面では決して大成功といえるほどではなかったというのですから、まさに毀誉褒貶(きよほうへん)。世の中の評価はわからないものです。
▼大首絵についてはこちら
賛否両論! 謎の天才絵師・東洲斎写楽の「大首絵」を詳しく解説
こんな長い顔じゃないのに!
『初代中山富三郎宮城野(しょだいなかやまとみさぶろうのみやぎの)』 東洲斎写楽 大判錦絵 寛政6(1794)年 東京国立博物館 出典:ColBase( https://colbase.nich.go.jp)
鼻が高すぎて不格好だよ!
『三代目市川高麗蔵志賀大七(さんだいめいちかわこまぞうのしがだいしち)』 東洲斎写楽 大判錦絵 寛政6(1794)年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art, The Howard Mansfield Collection, Purchase, Rogers Fund, 1936, JP2649
ふっくらしすぎじゃわい!
『天王子屋里虹 二代目山下金作仲居おかね(てんのうじやりこうにだいめやましたきんさくのなかいおかね)』 東洲斎写楽 大判錦絵 寛政6(1794)年 東京国立博物館 出典:ColBase( https://colbase.nich.go.jp)
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構成/山本 毅
※本記事は雑誌『和樂(2025年2・3月号)』の転載です。
参考文献/『歴史人 別冊』2023年12月号増刊(ABCアーク)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人 歌麿にも写楽にも仕掛人がいた!』車浮代著(PHP研究所)、『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』伊藤賀一著(Gakken)