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2021.02.26

艶やかな七宝ジュエリーにドキドキ!作家・近藤健一さんが北本にアトリエを構える理由【埼玉】

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仏教の経典に出てくる金・銀・真珠……極楽浄土をかざる7つの宝物にちなんでその名がついたといわれる「七宝(しっぽう)焼き」。名前を聞くだけで心ときめく美しさを想像してしまいます。

こんなに新しい七宝があるって知ってた?

七宝焼きは金・銀・銅などの金属に、色とりどりのガラス釉薬(ゆうやく)を焼きつけて作られます。古いものではツタンカーメンの黄金マスクの青いライン。あれも七宝と同じ技法でつけられたもの。シルクロードを通って中国から日本へ伝わり、刀の鍔(つば)や神社の釘隠しなどに使われているのを見ることができます。
しかし、七宝焼きも他の伝統工芸と同じように時代とともに作り手が減り、衰退しつつあるのが現実。
それを軽やかによみがえらせたジュエリーがこちらです。

春を先取りしたようなピアスたち (Kenichi Kondo instagramより)

神秘的なほどきれいな結婚指輪 (Kenichi Kondo instagramより)

「これが七宝!?」と新鮮な驚きに包まれたところで、作った人をご紹介します。
じゃん! 七宝作家の近藤健一さんです。

近藤健一さん
1981年 名古屋生まれ
小学生の時にさいたま市(旧浦和市)へ
武蔵野美術大学金工卒業
卒業後七宝に(正式に)出会い、のめりこむ
現在、埼玉県北本市のアトリエ兼住居にて制作を行う

アトリエ兼住居、埼玉県北本市の古民家を訪ねて

コトコト……とストーブの上でやかんのお湯が沸いています。お日さまがたっぷり入る、あたたかな部屋。窓の向こうは広々とした荒川の土手。
近藤さんの作品が生まれるアトリエ兼住居は、都心から1時間弱とは思えないほど豊かな緑に囲まれた、高台の古民家です。

階段をのぼって2階のアトリエへ。このランプシェードも七宝の作品です

2部屋の扉を取り払った右側が、ギャラリー&ミーティングスペース

壁を挟んで左側が工房です。使い込まれた道具がたくさん

色とりどりのガラス釉薬は、積み上げてあるだけできれい

窓を開けると、気持ちのいい風!

「この間、オオタカが庭でハトを仕留める瞬間を見たと子どもたちが教えてくれました。僕も見たかったなあ」
近藤さんはここで奥さまと子ども4人の家族と暮らしながら制作を行っています。

大学で金工を学び、卒業後に七宝の会社に就職した近藤さん。
やがてカラフルな七宝の美しさに魅了され、仕事の時間外に会社の道具を借りて作品を作りはじめます。
「もともと金属を扱っていたから、技術を活かすことができて相性がよかったんです」

北本に引っ越してきたのは今から10年ほど前。七宝作家として独立し、仕事が軌道に乗ってきたころです。
大学の同級生だった奥さまとの間には、卒業後すぐに子どもが誕生していました。
広いアトリエと子どもが遊べる庭が欲しくて、一戸建てを探していたときのことです。

移住のきっかけは、北本市のまちおこし

当時、北本では市内の空いている不動産を使って「アートでまちおこしをしよう」というプロジェクトがありました。その作品を巡る「おもしろ不動産」というバスツアーにたまたま出かけたのが近藤さんの奥さま、唯さんです。
そこで観光協会の人に何気なく「アトリエ兼住居を探している」と話したところ、数日後に電話がかかってきて、とんとん拍子に物件を紹介してもらえることになったのです。

「最初の家は築100年くらいの、昔は養蚕をしていたという古民家でした。太い梁(はり)が天井をバーンと通っていて、かっこよかった」と近藤さん。

6年ほどで賃貸契約の期限がきて新しい家を探す必要に迫られますが、そのときも地元の口コミや知り合いの紹介を経て、無事に今の家に引っ越すことができたそうです。
「庭に畑があって、家の向こうは荒川の土手。開放感があっていいなと思っていたら、びっくりするほど安く貸してもらえることになったんです。せっかく住むなら自分であちこち改装したいと思って、相談の末、譲っていただけることに。ありがたいです」

近藤さんがDIYしたアトリエ。よく見ると、奥の棚は元押し入れでしょうか

日常×制作 ちょうどいい北本暮らし

近藤さんの1日はゆったりとはじまります。子どもたちを学校に送り出したらまずはお茶の時間、それから制作。18時ごろには仕事を切り上げ、家族と一緒に晩ごはんを食べます。
以前は夜も制作をしていたけれど、最近ではSNSの更新や書類仕事をするくらいで、夜遅くまで働くことは減ったそう。
「とはいえ、電気炉のあったまり具合によっては食事中に作品を焼きに戻ることもあります。仕事とプライベートが一緒だからメリハリがつきにくい部分はあるかもしれない。でも、今はバランスをとれているかな」と近藤さん。

「これがジュエリーなど小さなものを焼く電気炉」約800度で1分、焼いている間は目を離せません

昨年は新型コロナウイルスの影響でイベントが中止になり、オーダーメイドの結婚指輪は対面での打ち合せが難しくなりました。
「正直、不安はあります。でも、これまでなら北本まで足を運ぶのは難しいとオーダーを諦めていたお客さんが、オンラインだからこそ問い合わせてくれることもある。悪いことばかりじゃないって思うようにしています」

北本は大きなまちではないので、もの作りをしている人、まちおこしをしている人、自然と顔見知りが増えます。
「会えば挨拶をする程度で、ベタベタしたつきあいをしているわけじゃないんだけれど」と前置きしてから「北本のこの環境や、仲間に救われている部分はとても大きいです」と話してくれました。

「この間は、家の近くではじめて野ウサギを見ました。10年住んでいて、はじめて」と明るい声。
庭で畑をはじめたり、ニワトリを卵からあたためて孵(かえ)したり、時間のゆとりがあったからこそ挑戦できたこともあります。
「今年は畑に何の種をまこうかな、種イモも買いにいかないと……。ニワトリが成長して卵を産むのもすごく楽しみにしています」

お話の途中、1歳の末っ子ちゃんもアトリエに顔を出してくれました。近藤さんの足元でしばし遊んでからお昼寝へ

都心から電車で40分、駅から車で10分のところに、こんな暮らし方があったとは。
近藤さんの作品と同じくらい、北本での暮らしからも目が離せません。

■移住については⇒きたもと暮らしの編集室
■ふるさと納税でもらえます⇒Kenichi Kondo パール付き七宝ピアス

Kenichi Kondo 公式サイト:http://www.kenichikondo.com/index.htm

【連載 全11回】縄文と雑木林のまち、北本

自然とともに暮らすまち、埼玉県北本市。独自の縄文文化と豊かな自然を入り口に北本の暮らしの魅力を考えてみました。
第1回 都心から50分!人に一番近い自然ってなんだ?を埼玉県北本で考えた
第2回 感度の高い縄文人が集う、埼玉県北本。1万年前からずっと住みやすいまち「縄文銀座」で銀ぶらしてみた
第3回 100年に1度の大発見?関東最大級の環状集落「デーノタメ遺跡」は縄文のタイムカプセルだ!【埼玉】
第4回 縄文界に新アイドル誕生?北本土偶「きたもっちゃん(仮)」愛用の呪術アイテムも紹介!
第5回 デーノタメ遺跡で貴重な発見!なぜ北本縄文人たちは「オニグルミの土製品」を作ったのだろう?
第6回 縄文VS現代!災害リスクの低いまち、埼玉県北本市「どっちが住みやすいの?」対決
第7回 艶やかな七宝ジュエリーにドキドキ!作家・近藤健一さんが北本にアトリエを構えた理由
第8回 埼玉県北本市に、今こそ行きたい店がある。日々の小さな幸せが見つかるgallery&cafe yaichi
第9回 人も、自然を構成する一部。縄文文化の根付く埼玉県北本市に聞いた「雑木林」の今
第10回 貴重な動植物の楽園!埼玉のまほろば、北本雑木林散歩が楽しい
第11回 ここは地上の楽園か?鷹やキツネ、希少な植物も育つ「トンボ公園」が教えてくれること【埼玉】

書いた人

岩手生まれ、埼玉在住。書店アルバイト、足袋靴下メーカー営業事務、小学校の通知表ソフトのユーザー対応などを経て、Web編集&ライター業へ。趣味は茶の湯と少女マンガ、好きな言葉は「くう ねる あそぶ」。30代は子育てに身も心も捧げたが、40代はもう捧げきれないと自分自身へIターンを計画中。