シカもクマもイノシシも!「ジビエ革」で作るスタイリッシュな革製品に驚きっ

シカもクマもイノシシも!「ジビエ革」で作るスタイリッシュな革製品に驚きっ

街で、ドラマで、いまジビエがジワジワきてる

「ジビエ、食べられます」
ここ数年、東京では街の小さな料理店でも、こんな看板や貼り紙を見かけることが多くなった。主人公らがジビエ料理で腕を競うテレビドラマ『グランメゾン東京』の放映で注目度が一気にあがり、これをきっかけに「ジビエ」を知って興味をもった人もいるはず。

「ジビエ」はフランス語で、狩猟で得たシカやイノシシ、カモなど野生鳥獣の食肉を指す。臭味があるから苦手という人もいるけれど、逆に野生ゆえの肉々しさがたまらず、とりこになってしまう人も少なくない。なにより日本人は肉食が禁じられた江戸時代でさえ、シカ肉をモミジ、イノシシ肉をサクラや山くじらなんて呼び隠しながらも大っぴらに食べていたのだから、そのおいしさたるや魅惑の味であったことは間違いない。だから、いまは食の嗜好が原点に回帰した、といえるのかもしれない。

しかし、この記事で取り上げるのは「ジビエ革」。食べるだけじゃないジビエの紹介になります。

鹿革、猪革、熊の革。野生動物を活かすジビエ革

東京都台東区松が谷。かっぱ橋道具街にほど近い路地裏に、高見澤篤(あつし)さんが営む「と革 TO-KAWA」はある。「かっぱ橋道具街は多くの料理人が集まるところ。革はお肉を食べた後の副産物なので、この場所から革にまつわるあれこれを発信していきたいと決めました」。


店内には、牛や豚など普段から親しむ革製品と並んで、熊革のがま口型ポーチや靴、鹿や猪の革でできたバッグなど、実にさまざまなアイテムが置かれる。これらが、まさに「ジビエ革」でつくられた製品だ。

はじめ、動物素材は鹿の角などをバッグの持ち手に使って製品をつくっていた。「材料は骨董店で入手していたのですが、原価が高く、販売する価格として折り合いがつきませんでした」。そんなとき、知り合いに紹介してもらったのが北海道のクマ猟師さん。この出会いが「ジビエ革」誕生のきっかけとなる。

岩手産ツキノワグマの革のポーチ。熊革は毛穴がはっきりと見えるのが特徴。25,000円。写真提供/高見澤篤さん

熊革や鹿革でつくるがま口型ポーチはチェーンを付けても使える。うす茶のポーチは徳島産の鹿革でつくった。27,000円 白いポーチは福岡県糸島産の鹿革を使い、剥いだときのままの表情をあえて残して仕上げてある。30,000円

左/熊革製の男性用靴。130,000円。右/下駄は鼻緒の表部分に熊革、肌に触れる部分を鹿革とした。日光下駄の職人さんによる仕立て。参考商品

家畜を食肉加工する際の副産物として広く一般に知られる牛革や豚革に対して、ジビエ革は野生動物から得る。「熊革は厚みがあって男性的で力強い。鹿革は軽くて、しなやか。野生動物の革は種類だけでなく、個体によってもバラつきがあり、均質なものはありません。ひとつひとつの表情を見ながら、特徴を活かす製品づくりを心掛けています」と高見澤さん。 

高見澤さんはファッションスタイリストとしてキャリアをスタート。自身で制作したバッグを知人が褒めてくれたことを転機に、デザイナーとして始動。2006年にレザーブランド「Six COUP DE FOUDRE(シス クー・ド・フードル)」を立ち上げて、ジビエ革を発信している。ショップにはアトリエを併設。

捕獲される野生動物の数は想像をはるかに超えていた

ジビエとしてレストランで提供される肉は、秋から翌年の春先にかけての狩猟期間に猟師が捕獲するものと、駆除のために仕留められる獣のものが使われる。人里に降りてきて田畑を荒らし、人家に被害をもたらすシカやイノシシ、クマなどの捕獲は期間を問わない。ニュースで流れることが多いので知る人もいるかもしれないが、特にイノシシとシカが多い。北海道から沖縄まで全国いたるところに出没し、捕獲されている。

農林水産省の調べによれば、全国で捕獲される数はイノシシとニホンジカ(エゾジカを含む)だけで年間110万頭超(狩猟とその他の総数。平成30年度)。想像をはるかに超える数に、ただただ驚くばかり。農産物の被害も増え続け、実際、危機的状況にあるのだ。

肉は食べるけど、皮はどうなる? 小さな疑問からはじまった「ジビエ革」

ジビエとしての肉の活用割合は、現状、捕獲される野生鳥獣の1割程度だ(農林水産省調べ)。高見澤さんが猟師さんと出会ったときには、その数はさらに少なかった。ただ、数は小さくとも、肉は食べられ、活用されるが、「動物たちの皮はどこへ?」。そんな疑問を高見澤さんは抱く。

クマ猟師はこう言ったという。「皮はぜんぶ捨ててしまうんだよ」。

皮を活用する発想が猟師にはそれまでなかったそうだ。皮は産業廃棄物であり、処理をするにもお金がかかる。それなら、と山で仕留めた獲物をその場で解体して、皮をそのまま山に捨ててくる猟師さんもいた。「捨てられるだけの命をなんとか活かす方法はないか。そこで、捕獲される獣たちの皮を総称してジビエ革と名付け、活用していくことを考えました」(高見澤さん)。

とはいうものの、野生動物の皮の加工は牛や豚などとは勝手が異なる。猟師さんだけでなく、タンナー※の協力も得ながら、試行錯誤のなかでジビエ革をともにつくり上げてきた。

※革の製造業者。タンナーによるなめしや染色などの加工を経て、「皮」は「革」となる

こうした高見澤さんをはじめとする草の根の活動が広がって、農林水産省も旗を振り始めた。そして、野生鳥獣に悩まされていた自治体が地域資源として肉や皮の積極活用をはじめ、ジビエがいま身近になりつつあるのだ。

一部ではあるものの、皮をそのまま捨てるのを忍びなく思っていた猟師さんがいた。そんな猟師さんが「これ、なんとかできる?」と送ってきたのがクマの手。はじめてつくったジビエ製品はクマのツメのネックレスだった。12,000円

キズやスレなど生きた証をデザインに。余すことなく、すべてを使い切る

いち早く秋を迎える北海道に続いて、日本各地で野生鳥獣の猟が解禁される。「岩手では11月1日にクマ猟が解禁されました。さっそく、クマが獲れた、と連絡がありました」。そう言って見せてくれたのが、大きなクマの写真。体長は1m70㎝ほどという。

岩手県の猟師さんが仕留めたツキノワグマ。この腕利き猟師さんは年に20頭ものクマを捕らえるそう。写真提供/高見澤篤さん

このようにしていただく命をいっさい無駄にしたくない、と高見澤さんは思う。各地に出向いて狩猟の現場も目の当たりにした。だから、キズがついた革も使うし、革に加工する段階で穴が開いたものも別の革をあてて使う。縫い代分さえムダをなくそうとカスタマイズした特殊なミシンで縫製して製品をつくりあげる。端切れもパッチワークしてつなげて、余すことなく使い切る徹底ぶりだ。

縫製の際には一般に縫い代が必要だが、特殊な縫製で革と革をフラットにつなげる。1ミリもムダにしない。


「うちをよく知ってくださっているお客様のなかには、穴をふさいだものやパッチワークの製品から先に購入してくれるんですよ。これこそ1点ものですから」。パッチワークの写真提供/高見澤篤さん

革を通して、社会を考えていく

ファッションスタイリストからスタートしたとあって、高見澤さんのつくるプロダクトはどれもスタイリッシュだ。「単純に野生動物の革を使っていくことだけを考えると、とかくクラフト的になりがちですが、僕はそうしたくない。加工を終えて革が手元に届いたとき、『君はどうなりたい』と問いかけながら、モノづくりを進めています。革製品を選ぶ際のひとつの選択肢として、牛革や豚革と同じようにジビエ革を考えてもらえたら」

地域によって個体の大きさも異なる。上が徳島産の鹿。下は北海道産の鹿。写真提供/高見澤篤さん

「手に取った製品がお客様の出身地で獲れた猪の革であったら、そこからお客様が地元の野生鳥獣のことを考えるきっかけになるかもしれません。いただく命に常に感謝をしながら、革を通して社会を考えていきたいのです」(高見澤さん)

●掲載商品の価格は2019年12月時点のものです。価格には、別途消費税が加算されます。

と革 TO-KAWA 基本情報

店舗名: と革 TO-KAWA
住所: 111-0036 東京都台東区松ケ谷2-29-8
ベビーマンション105号室
営業時間、定休日は月によって変わるため、
事前に電話いただくか、公式サイトでご確認ください。
TEL 070-5589-5934
公式webサイト: http://to-kawa.com/

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