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Craftsmanship

2023.07.21

魅力の秘密が丸わかり! 魯山人のマルチな才能に迫る!Part7:キーワード(後編)

数ある作品に秘められた、魯山人の魅力の秘密が丸わかり!魯山人にまつわる5つのkeyword、4~5をご紹介します。

(前編)はこちら

keyword 4
書、画、工芸でも才能を発揮!

魯山人は20代の初めに書の才能で注目されるようになり、20代の終わりには書や篆刻で生計を立てるようになっていました。それから、陶芸や絵画、工芸へと手を広げていくことになるのですが、それらはすべて「星岡茶寮」で客人をもてなす必要に迫られて始めたこと。

用途に応じた作品を自ら手がけるようになった魯山人は、書に通じる一流の才能をあらゆる分野でいかんなく発揮し、優れた作品を数多く残しています。
書においては、代表作である『いろは屛風 』をはじめ、扁額や染付でもその粋を味わうことができます。

魯山人は師について絵画を学んだことはないのですが、古美術や古い陶器に囲まれて暮らしている間に鑑賞眼を身につけ、独自に研究。乾山を手本にした琳派風の作品や、書と画を同居させた文人画などののびやかな作品は、専門の画家にはない魅力を放っています。

そして、工芸品では、使う立場から考えてつくられたものが多く見られます。
庭を美しく彩る行燈や、汁物を入れてこそ美しい塗の椀などを見ていると、魯山人が食を供する空間を何よりも大切に考え、知恵を絞っていたことをうかがい知ることができます。

これも魯山人の作だった!

『鉄製透置行燈』 北大路魯山人 昭和5(1930)年ごろ 縦25.4×横26.3×高さ89.0㎝ 足立美術館 鉄という固い素材を使いながら、乾山風の意匠によって温かい雰囲気が醸(かも)し出されている。

琳派の美意識を継承

『武蔵野』 北大路魯山人 絹本彩色・軸装 昭和12(1937)年 63.2×82.2㎝ 足立美術館 琳派らしいデザイン的な作に、乾山への思慕が見え隠れする、大きめの掛幅。

keyword 5
日本美の究極の目利きだった!

魯山人が本格的に作陶に携わったのは、40歳を過ぎてから。陶芸家としては遅いスタートですが、魯山人は一切の妥協を許すことなく、熱心に古陶器や古美術を研究して確かな目を培っていたことから、先人に倣った見事な作品を次々に生み出すことができたのです。

魯山人が手がけた陶芸のジャンルは、有名な織部をはじめ、黄瀬戸や瀬戸、伊賀、染付、金銀彩、色絵など多種多様。自分が美しいと思ったものを分け隔てなく、率先して取り入れていくことができたのは、確かな目利きであったからにほかなりません。

もしも魯山人が従来の陶芸家の姿勢を踏襲していたら、このように自由に、たくさんの作品をつくり上げることは難しかったことでしょう。そこがまた、魯山人の特徴であり、魅力にもつながっているのです。

傲慢であったことを伝えるエピソードには事欠かず、敵対する人が多かったことから、ネガティブにとらえられるケースが少なくなかった魯山人ですが、昨今は再評価が進んでいて、その作品はMoMA(ニューヨーク近代美術館)にも所蔵されているほど。究極の目利きは、世界的な評価を受けているのです。

料理が引き立つものをつくる!

『青手古九谷風幾何学文飾皿』 北大路魯山人 昭和8(1933)年ごろ 径21.5㎝ 足立美術館 作陶に取り組み始めたころの魯山人は、古九谷の色合いを好み、盛んに倣っていた。

温故知新の心意気!

『染付葡萄絵鉢』 北大路魯山人 昭和7(1932)年ごろ 径22.4×高12.1㎝ 足立美術館 中国・明時代の染付に倣い、大きさや柄行などを工夫した逸品が、魯山人の知見を物語る。

構成/山本毅、吉川純(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2020年4・5月号)』の転載です。

シリーズ「魯山人の魅力」

「魯山人の魅力」シリーズ。下記リンクより他の記事もぜひお楽しみください!

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山本 毅

通称TAKE-G(たけ爺)。福岡県飯塚市出身。東京で生活を始めて40年を過ぎても、いまだに心は飯塚市民。もともとファッション誌から始まったライター歴も30年を数え、「和樂」では15年超。日々の自炊が唯一の楽しみ(?)で、近所にできた小さな八百屋を溺愛中。だったが、すぐに無くなってしまい、現在やさぐれ中。
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