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Craftsmanship

2024.02.05

〝料理が映えるうつわ〟にはスキがある? 【一生愛せる「うつわ」と出合う・その5】村田森(1)

「村田森(むらたしん)という、とてつもなくスバラシイうつわをつくる陶芸家がいる。 古いものの写しの腕は抜群。料理を生かすうつわをつくる人だ」との噂を聞いたのは、十数年前のこと。 その村田さんが近年、二十四節気(にじゅうしせっき)きをテーマにした作品づくりに取り組んでいる、とうかがいました。 二十四節気は、立春、雨水(うすい)、啓蟄(けいちつ)、春分…と1年を24等分にした季節の区分。春夏秋冬よりも細かい季節のうつろいです。 なぜ村田さんは、二十四節気に注目したのでしょうか。山深い京都・雲ケ畑(くもがはた)で、自分と向き合いながら作陶を続ける村田さんの元を訪れ、そのうつわの魅力に迫りました。

村田森さんの〝季節を楽しむ暮らし、刻を映すうつわ〟

手にしているのは灰黄釉瓢簞文六角小付(はいおうゆうひょうたんもんろっかくこづけ)。横6.0㎝13,200円。下は、渦巻文が特徴的な銹絵蓋付碗(さびえふたつきわん)。直径8.5㎝ 22,000円。奥は染付(そめつけ)の千成り瓢簞図皿。直径19.3㎝ 18,700円。

料理を盛ることができれば、うつわとしてはそれで十分。けれど、それだけでは満足できないと感じることがあります。どうして私たちは、うつわにこだわるのでしょうか。

それはきっとうつわと料理の美が、「美味しい」「楽しい」という感情を喚起することを知っているから。だから、素敵なうつわを目にすると、私たちはどうしても欲しくなってしまうのかもしれません。

なぜ私たちは、〝村田森〟のうつわに惹かれるのか

かねてより村田さんは、将来に残っていくようなうつわを生み出したい、と考えてきました。そのため、中国の古染付(こそめつけ)や韓国の古いやきものを数多く写してきました。といって、名品をキッチリ再現している感じでないのが、村田さんの面白いところ。描線はちょっとゆがんだり、花や魚の絵付けもゆるゆるしていたり……ほんのちょっぴりスキがあるのです! 本格的な懐石にも、家族が食卓を囲む家庭料理にも、すっとなじむやわらかな味わいが、村田さんのうつわの最大の魅力です。

二十四節気のうち「大寒(だいかん)」の作品である上の緑釉刻文鉢(りょくゆうこくもんばち)には、柿といんげんの白和えを。直径20.5㎝ 27,500円。「霜降(そうこう)」の作品である下の青磁影青高坏(せいじいんちんたかつき)には四方竹(しほうちく)とお揚げさんの煮びたしを。直径14.5㎝ 16,500円。

村田さんのうつわは、
心がほどけていくような優しさや
古いものに通じるおおらかさがある

イヌタデをあしらった染付虫籠文(そめつけむしかごもん)箱皿 横11.5㎝ 22,000円。二十四節気「処暑(しょしょ)」の作品のひとつとして制作された。虫籠に見立てられており、なかに小さなコオロギ2匹が描かれている。

のびやかな描線をもつ麦藁手(むぎわらで)の飯碗は、村田森さんの骨董コレクションのひとつ。

集中して轆轤(ろくろ)を回す村田さん。成形後、なめし革でうつわの口縁(こうえん)を整える。口造りの大切な作業のひとつ。

村田 森 むらた しん
1970年京都生まれ。1993年に京都精華大学陶芸科を、翌年に同研究科を卒業。荒木義隆氏に師事後に独立。2003年に京都・雲ケ畑に築窯し、年間10回以上個展を開いてきた人気作家でありながら、2016年に新作の発表を停止。2020年に、現代美術家の村上隆氏とともに陶芸専門店「となりの村田」(https://tonarinomurata.com/)を立ち上げ、二十四節気をテーマにした392点のうつわの受注生産を始める。

撮影/篠原宏明 構成/植田伊津子、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示価格はすべて税込価格です(「となりの村田」https://tonarinomurata.com/)。
※掲載商品には1点ものや数量が限られているものがあり、取材時期から時間がたっていることから、在庫がない場合もあります。

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和樂web編集部

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