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日常の大事な時間に漆を!
「食後のお茶や軽食など、こんな場面でも漆のものがあったらいいな、と思うアイテムをおすすめします。漆の落ち着いた色やつやが目に入れば気分が和らぐ。慌ただしく流れる日々のちょっとした時間を豊かにしてくれます」
最新の著書『85歳現役、暮らしの中心は台所』で披露された髙森さんの私物の中でも読者から問い合わせが集中した品を中心に、さらに新しく選び直した〝漆のいいもの〞を紹介します。
漆のなめらかな質感は口福を呼ぶ〝カトラリー〟
カトラリーの中でも特に「スプーンやさじ」が「漆が口に触れる心地よさを直接感じることができます」と髙森さん。「優しい口あたりは食事の味わいまで変えてくれます。漆のなめらかさに慣れてしまうと、ほかの素材に戻れなくなりますよ」。
長きにわたり漆塗りのカトラリーを使ってきた上での結論は、「持ちやすさ」や「すくいやすさ」に加えて「口から抜き出したときに何も残らないこと」が重要。
竹に漆塗りで仕上げる作風の伏見眞樹(ふしみまき)さん、下の写真の左から4・5番目のようにイタヤカエデに拭き漆を施す平岡正弘(まさひろ)さんは髙森さんのお眼鏡にかなったつくり手たちです。
日本茶もワインも、甘味もOKの〝フリーカップ〟
「家で料理をしないのでお椀は不要、水やアルコールを飲むことは日常で必須というお客様にはこのコップをすすめました」。伏見眞樹さんのカップはもともとはワイン用ですが、温かいお茶や甘味などにも。「白漆の温もりのある色味が好きです。カップ内部も白く塗ってあるので、中に入るものが美味しく見えるところもいい」
おもてなしの盛り器にも使える〝変形盆〟
鎌倉彫職人の祖父と漆芸家の父から木と漆の扱いを学んだ矢澤寛彰(やざわひろあき)さんの作。長方形の箱を折り畳んだような角を落とした〝十字シリーズ〟の意匠が髙森さんのお気に入り。「栗材をノミで削り、大胆な刃の跡と古色の塗りが印象的。漆器のよさもありつつ、木工の力強さが味わえるのが面白い」。
大きなトレーはオードブルや寿司、小菓子などの盛り器としても迫力があり、おもてなしで活躍しそう。縁の立ち上がりに指がかけやすく、持ち運びもスムーズ。
簡単な昼食も豊かな気持ちになる〝どんぶり〟
「コロナ自粛で自炊の機会が増えた今、昼食は麺類と決めたら献立を考えるのが楽に。そこで見直したのが大きな椀。たっぷりとしたうつわに盛るだけで、豊かな気持ちになります」。仁城逸景(にんじょういっけい)さんのうつわは、「木を丈夫にするために漆を施しているので、漆塗りは必要最低限。だから手触りが木そのもので優しい。使い込むと漆の色の透明感が増します」
こどもにも大人にも犬好きにも!〝おちゃめな蒔絵椀〟
愛らしい犬の顔が蒔絵で描かれた、その名も『わん椀』。手のひらで包みたくなるようなお椀の形は作者・山口浩美さんの夫である木地師・高田晴之さんによるもの。丸っこいフォルムがやんちゃな犬の表情にぴったりはまっています。蒔絵といっても山口さんのは伸びやかでモダン。ふだんは優美で繊細な絵をうつわに描く人だとわかっているから、ギャップが愉快だった。たっぷり入るサイズなので、子どものみならず大人にも好評です」
髙森寬子 たかもり・ひろこ
エッセイスト。婦人雑誌の編集者を経て、日本にあるさまざまな生活道具のつくり手と使い手をつなぐ試みを行う。東京・小石川の「スペースたかもり」を主宰し、漆の日常食器を主体に、年に5〜6回の企画展を開催。著書に『美しい日本の道具たち』(晶文社)、『心地いい日本の道具』(亜紀書房)などがある。写真は著書『85歳現役、暮らしの中心は台所』より。
初春展「普段使いの漆の器/安比塗と輪島の漆」開催のお知らせ
2024年1月1日に発生した「令和6年 能登半島地震」により、髙森さんと交流がある輪島の作り手さんも皆被災されました。現在は作品完成の目途が立たない状況ですが、ギャラリーで輪島の作品を若干預かっていました。そこで今年初春の企画展は、少しでも応援につながるよう、当初予定していた安比塗(あっぴぬり)に輪島の作り手さん作品を加えて開催されます。
期間:2月16日(金)~3月2日(土)の金・土曜のみ開廊
時間:12時~18時(最終日は16時まで)
場所:スペースたかもり(東京都文京区小石川5-3-15 一幸庵ビル3階 ※企画展開催時のみ開廊)
電話:03-3817-0654
撮影/長谷川 潤 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※掲載商品の価格は2024年1月現在のもので、税込価格です。
※すべて手づくりのため、売り切れや、価格が変更になる場合があります。
※サイズはおおよその目安です。
■商品の問い合わせ先:「スペースたかもり」電話・ファックス:03-3817-0654 メール:space-t@ab.auone-net.jp