Craftsmanship

2025.02.17

会話込みで骨董を選ぶ楽しみ。人気スタイリストchizuさんと骨董の名店「川口美術」へ【手仕事の京都】

洋空間のインテリアやテーブルコーディネートに、人の手がつくり出し、長い年月大切にされてきた骨董の品がスパイスになることがあります。 骨董尽くしは窮屈だけれど、いつもの食卓に小さなうつわをひとつふたつといった使い方なら親しみやすいはず。 〝手仕事の京都〟の第三弾では、室内スタイリングの先駆者であるスタイリストのchizuさんと、タイプの異なる4軒の骨董店を訪ねました。 chizuさんならではの骨董店でのモノ選びと、即興コーディネートに注目です!

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古いのに新鮮! 日本の暮らしにもなじみそうな韓国骨董の美品に惚れぼれ 「川口美術」

ご主人の川口慈郎さんは人生の転機を迎えたときに「感性で生きたい」と思って骨董業を選んだという人。そのころに韓国古代の新羅(しらぎ)土器に出合い、韓国の骨董を扱う店を56歳で始めました。

日本でも韓国の骨董でも、西洋アンティークでも、壊れたり、捨てられてしまうものがたくさんあるなか、店に並ぶのは脈々とだれかが残してくれた品。なんらかのストーリーやバックグラウンドがあるはずで、そういう話を聞かせてくれるのが信頼できる店だとchizuさん。

人の目や心を留める、そういうものがなければ魅力的な骨董とはいえません(川口さん)

左/店主の川口さんは、骨董屋の店主になりたくてホテルマンから転職。「古い建物の磨き上げられた手摺りに心打たれたり、美術館の隣に佇む喫茶店の文化性に浸ったりという、それまでの全ての経験が生きています」というやわらかな話しぶりに聞き入ってしまう。右/「つくられるのも残るのも、何かしら意味があるんですね。そういう話をうかがえるのが骨董店での楽しみです」とchizuさん。

川口さんも「ひとつひとつに思い入れはありますが、私は一時お預かりしているという気持ち。私にとってもお客様との会話はとても大切なのです」とおっしゃいます。

京都市中を流れる鴨川が、賀茂川と高野川に分かれる三角地帯に店を構える。2階はサロンのような居心地のいい空間。1階は韓国骨董だけでなく、企画展として現代作家の作品も並ぶ。

「この品がなぜ残されたのかということを知ると、好みに合うかどうかがわかるだけでなく、自分にとって面白いものになります。会話ができる店が私にとって理想の骨董店。
お話込みで品選びするのが、骨董ショッピングの真骨頂だと思うんです。川口さんには、韓国の古い手仕事のことをもっとお聞きしたい。物腰や会話に人間性の豊かさがにじみ出ている、とっても素敵なおじいちゃまです」(chizuさん)。

「ご自宅に招かれたような感覚。じっくりお話をうかがえます」(chizuさん)

左/スタイリスト・chizuさん。1955年、九州生まれ。食やインテリアを中心にしたスタイリストのパイオニア。店舗や商品開発にも携わる。著書に『私をぐっと素敵に見せる大人のおしゃれのひとさじ』(PHP研究所)が。右/八角に面取りした白磁に染付(そめつけ)の壺。このおおらかさもchizuさんの目を引いた。「ひと目で小鳥の瑠璃色に惹きつけられました」。

chizu’s select 店主としゃべって、知る、選ぶ、コーディネートする幸せ

夏と秋、空中と水中が同時に存在しているようなこの絵の何に惹かれるのか不思議だったんです。
でも、朝鮮の民画(みんが)はどこまでも自由で天真爛漫でさえあると聞いて、そこが私の琴線に触れたんだと理解しました。
和樂の読者はそういうことが味わえる世代なはずなので、店主との会話をぜひ楽しんでください(chizuさん)。

今回の訪問でchizuさんの心を捉えたのはこの朝鮮民画。高麗(こうらい)時代(14世紀)につくられた、白黒象嵌(はくこくぞうがん)の青磁鉢(せいじばち)を置き合わせた。

川口美術 かわぐちびじゅつ

住所:京都府京都市左京区下鴨宮河町62‒23 
電話:075-781-3511 
営業時間:12時30分~17時30分 
休み:月・火曜
公式サイト:https://kawabi.exblog.jp/
※来店はメール予約 kawabi@gmail.com

※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。

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和樂web編集部


構成/小竹智子 撮影/篠原宏明
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