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2021.03.19

たんたん狸の金玉は、なぜあんなに誇張されるの?招き猫は男根そのもの?大真面目に検証してみた!

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たんたんタヌキの金玉は~♪ と聞けばその続きは、どんな深窓の令嬢や良家のご子息でも、誰もが歌えるのでは。

居酒屋などの店先や民家の玄関などで、滋賀県でつくられる信楽焼(しがらきやき)のタヌキの焼き物を見かけることがあります。そこで、おなじみの公然エロこと、「タヌキの金玉」です。「たんたんタヌキ」の替え歌や、アニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」のほか、浮世絵でもオーバーに描写されます。

いくらなんでもこの大きさはヤバいでしょ(笑)!

引返狸之忍田妻 2巻(国立国会デジタルコレクション) ムクムクと膨らんでいます

なぜ、あんなに睾丸が誇張されるのでしょうか。探ってみました。

生物のタヌキ…金玉…でかくなくないよな

タヌキは、哺乳綱(ほにゅうこう)食肉目イヌ科の動物。丸顔・太鼓腹として描写されますが、吻(ふん。鼻づら部分)は細く、顔も体もシュッとしています。そりゃあ、そうです。ペットではなく、野生動物ですもの。

令和時代の大都会・東京でも、目撃情報が絶えません。それから、動物園でも「身近な存在ながら意外と知られていない存在」として、タヌキも隠れた人気動物です。「よこはま動物園ズーラシア」では、ライオンやオカピなどの人気動物、珍しい動物が見られますが、タヌキも飼育・展示され、見ると心が安らぐんです。冬になると毛のボリュームが増え、愛嬌は格別となります。

かわいい〜!癒やされる。

でも、タヌキを観察しても、信楽焼のタヌキ像とは違い、金玉=睾丸はデロ~ンと垂れ下がってはいません。

「馬並み」なんて俗語がありますが、馬の像にも特に誇張されたものは見当たりませんね。

人よりは大きいみたいですよ。

タヌキを超える性的置物こと、招き猫

京都に、日本文化を共同研究する施設「国際日本文化研究センター」(通称、日文研)があります。2019年から所長を務める井上章一先生にお話をうかがいました。

–最初に、なぜ日本ではタヌキ=金玉なのでしょうか?

井上先生:私がこうじゃないかと思っている説をお話します。江戸時代、金を精錬するために、溶かした金属に風を送るためのふいご(鞴、吹子)という道具があり、これにタヌキの皮が使いやすく「タヌキの金袋」という言葉が生まれ、転じて「タヌキの金玉はよく伸びる」となったのではないかという説です。

–タヌキのような動物の置物でも、招き猫などには金玉はありませんよね?

井上先生:信楽焼のタヌキだけでなく、招き猫、ダルマ、福助人形なども、根っこには生殖器崇拝があると思うんですね。猫は床に落ちてもすぐ起き上がることから、勃起力の象徴とされています。これは、関東の養蚕家の間で広まった話と聞いています。江戸時代の遊郭では、商売繁盛を願う「縁起棚」という棚に、女郎さんが男根の置物を置き「いいお客さんがありますように」と手を合わせたようです。それは、招き猫のような手をしており、いつしか招き猫になったといわれています。幕末に西洋人がやってきて、明治になると警視庁が男根置物を取り締まるようになります。処理に困った数万本のそれを隅田川に流したところ、形状ゆえ水面に突き出しながら流れていき……。

–ということは、ダルマも傾けても起き上がるから……!

井上先生:すぐによみがえる活力の象徴です。

なるほどー!!

さらに、「招き猫は裏返すとチンチ○がついているものがある」「2つの米俵に乗る招き猫は、米俵が金玉で猫が男根の象徴」なんて話を楽しそうに話してくれました。今度、招き猫を見かけたら、うやうやしく裏返して拝みたいところです。

「たんたんタヌキ」の替え歌は讃美歌だった!?

あんなかわいいネコチャンが男根の象徴だったなんて、ちょっと見る目が変わりそう。それに比べて、タヌキの金玉の愛嬌ったら。ところで、「たんたんタヌキ」の替え歌は、キリスト教の讃美歌でもあるらしいのです。ライターのDyson尚子さんが「花園キリスト教会」を紹介していました。

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花園教会は、キリスト教の中でもプロテスタントという流派に属し、併設の水族館とともに牧師の篠澤俊一郎さんが運営しています。大変な失礼を承知で、お話を聞きました。

–「たんたんタヌキ」の替え歌は、讃美歌がもとになっているって本当ですか?

篠澤牧師:アメリカでつくられた「Shall we gather at the river」という讃美歌がもとで、邦題は「まもなくかなたの」となります。葬儀などで歌われ、「また天の国で会いましょう!」「別れは寂しいけれど神様と一緒にいることは喜ばしく、そこで再会しましょう」といった意味です。それが日本に来て俗的に歌われたものです。ただ、いつの時代にどのように広がったのかまではわかりません。神を賛美する歌から、タヌキの○○~はなかなかパンチが強いです。

知らなかった...!そうやって下の替え歌を楽しむのも日本人の遊びゴコロなのかな。

–キリスト教の信者さんも、金玉替え歌はきっとご存じですよね。どんなお気持ちなのでしょう?

篠澤牧師:気づかない人もいるかもしれません。聖歌(讃美歌)がそうなったのは残念な気持ちもありますが、タヌキの替え歌は歴史も長く、地域ごとに替え歌に違いがあるようですし、市民権は得ています。千差万別ではありますが、めちゃくちゃ嫌悪ということもないような気がします。ただ、替え歌しか知らないのはもったいないので、讃美歌としての本当の歌詞や歌を知ってもらうと、なぜそうなかったのか? という歴史に対する好奇心が生まれます。

ついでに教えていただきましたが、「豚に真珠」「目から鱗」ということわざも、聖書がルーツなんですって。

「聖書の中に、『動機がどうであれ、結果的にキリストを宣べ伝えられているのなら動機は問題ではないし、どちらでもいい』といったことを綴った文章があります。私はこの言葉から、『広く知られたことにより、実はそこには多様な人間の歴史とさまざまな想いがあると知れ、また私たちの人間としても深みが与えられることはとても良いこと』と受け取っています」と篠澤牧師。

本当は偉大なる神を讃える歌なのに、親しみやすい微エロな替え歌になり、広く日本中で歌われることになりました。これも、神による深遠なるご計画なのかもしれませんね。

おいしいと評判のもつ焼き店の店先にも石像が鎮座。いやあ、ご立派です!

■取材協力
井上章一先生(国際日本文化研究センター) http://www.nichibun.ac.jp/
篠澤俊一郎牧師(花園キリスト教会) http://hanazono-church.net/

書いた人

出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。民謡、盆踊り、俗信、食文化など、人の営みや祈りを感じさせるものが好き。四柱推命・易占を行い、わりと当たる。

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‪‪銀行に10年務めたあと和樂webのスタッフに。音声コンテンツ『日本文化はロックだぜ!ベイベ』聞き手担当。頭も体も硬いので、今一番欲しいのは柔軟性。