11月になり、年の瀬が迫ると、酉の市(とりのいち)の話題がちらほらと耳に入ってきます。意外と知らない酉の市の起源や、縁起物の「熊手(くまで)」について知識を深めましょう。知って得する開運情報も盛り込みました。
まず、酉の市についてザックリ紹介
「酉の市」は、毎年11月の「酉」の日、各地の鷲(おおとり)神社や大鳥神社などの寺社で開かれる祭礼に立つ市のこと。主に関東地方で、「おとりさま」と親しまれています。酉の市の日は、境内や参道に熊手などの縁起物を売る店のほか、さまざまな食べ物の屋台が立ち並び、多くの人でにぎわいます。
さて、「酉」といっても生物の鳥ではなく、十二支の酉です。ちょっと十二支の話をすると、古代中国で、年月や日時、方角を、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥の12文字で表す方法が誕生。それが日本に伝わると、子=ネズミ、丑=ウシなどの動物が当てはめられました。
12の干支がある中、なぜ「酉」なの?
なぜ、酉の日に行うのか? それについては諸説があります。
そのうちのひとつが、伝説上の英雄である日本武尊(ヤマトタケルノミコト)にちなむ説。鷲神社の御祭神である日本武尊が、松の木に熊手をかけて勝ち戦を祝ったのが11月酉の日だったという内容です。
もうひとつの説は、浅草の鷲神社に隣接する長國寺(ちょうこくじ)に伝わる日蓮聖人の伝説。この長國寺には、「鎌倉時代、日蓮聖人が鷲妙見大菩薩を見た」のが11月酉の日だったという伝説が残ります。
浅草・鷲神社の江戸・東京屈指の酉の市
鷲神社、長國寺に伝わる起源のほか、「農民が花畑大鷲神社(足立区)に熊手を奉納したのが、酉の市のはじまり」という説もあります。しかしながら、花畑大鷲神社は江戸の郊外であるため、前述の浅草の鷲神社の酉の市が大いににぎわったようです。
また、浅草といえば、遊郭・吉原に近い土地柄。酉の市が立つ日には、遊郭内の通行が許可されるなど、吉原と結びついて栄えたという事情もあります。
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熊手の飾り方と開運フード
酉の市といえば、縁起物の熊手が知られています。熊手は穀物などをかき集める竹製の道具で、お金や幸運の象徴のような存在。酉の市が行われる11月は米の収穫期であり、豊作や商売繁盛をイメージさせるラッキーアイテムそのものです。熊手は1年飾ったら社寺に納め、お焚き上げをしてもらいます。新年用に新しい熊手を求め、新たな運をゲットしましょう。
ところで、熊手以外にも、酉の市ならではのラッキーアイテムがあるのをご存じでしょうか。それは、里芋の一種「八つ頭(やつがしら)」や「切り山椒(きりざんしょう)」。八つ頭は「頭の芋(とうのいも)」とも呼ばれ、「人の頭に立つ」=出世を連想させる開運フードです。また、ひとつの芋からたくさんの芽が出るため、子授けのご利益があると信仰されています。切り山椒は、山椒をきかせた和菓子のこと。山椒は生薬であり、花や実、樹皮などすべてが利用できるありがたい食べ物なのです。
最近の酉の市では、じゃがバターやたこ焼きなどの現代的なフードがメインですが、八つ頭や切り山椒といった伝統的な屋台にもご注目を。
2024年の酉の日は?
11月の酉の日(酉が巡る日)は、毎年変わります。2024年は以下の通り。
一の酉……11月5日(火) 癸酉(みずのととり)
二の酉……11月17日(日) 乙酉(きのととり)
三の酉……11月29日(金) 丁酉(ひのととり)
11月に酉の日が3回ある年があり、そうした年は火事が多いという言い伝えもあります。2024年はその「酉の日が3回」の年。火の始末や寒さ対策をしっかりして、新年の福を探しに酉の市へ出かけませんか。
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