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もし船を造りたいのなら、木を集めるために人を呼び込んだり作業や仕事を割り当てたりするのではなく、限りない海の広大さに憧れを抱くように彼らを教えなさい。(サン=テグジュペリ)
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Culture
2022.06.17

脱ぎ散らかしたら神様が大量発生!?「ひねくれ日本神話考〜ボッチ神の国篇vol.11〜」

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▼ひねくれ日本神話考、過去のシリーズはこちら

黄泉での苦い経験を忘れるべく、禊の場を求めたイザナギ。
出雲はきれいな海があるし、宍道湖には温泉だってある。さぞ手近なよい水場を選んだのだろうと思いきや。

イザナギの一挙手一投足で神が生まれる!

筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に到りまして、禊ぎ祓いたまいき。

(訳 九州の宮崎県にある橘の小門の阿波岐原というところに行って、禊をして穢れを払った)

え? 島根県から宮崎県まで行ったの? わざわざ? 直線距離でも400キロメートル以上ありますけど?
この遠距離、なにか理由があるはずだ。
イザナギの気持ちを探るべく、続きを読み進めることにした。
すると、いきなり怒涛の「新神誕生」フェーズに入ったのである。
イザナギが何かを行動を起こすたびに、神々がポコポコ生まれるのだ。
せっかくなので、生まれた神、全部列記する。

ついていた杖を投げ捨てる → 衝立船戸神(つきたつふなどのかみ/境界を明確にする神)
つけていた帯を投げ捨てる → 道之長乳齒神(みちのながちはのかみ/長い道を司る神)
持っていたバッグを投げ捨てる → 時量師神(ときはからしのかみ/時の神または旅程の神)
着ていたトップスを投げ捨てる → 和豆良比能宇斯能神(わづらひのうしのかみ/旅で起こるトラブルの神)
穿いていたボトムスを投げ捨てる → 道俣神(ちまたのかみ/二股の道=境界の神)
被っていた冠を投げ捨てる → 飽咋之宇斯能神(あきぐいのうしのかみ/大口を開けて罪穢れを食べる神または旅行中の食事の神)
左手につけていたブレスレットを投げ捨てる → 奥疎神(おきざかるのかみ/沖に遠ざかる神)、奥津那藝佐毘古神(おきつなぎさびこのかみ/渚の神)、奥津甲斐辨羅神(おきつかひべらのかみ/沖と渚の間にある海域の神または貝の神または他界の境界の神)
右手につけていたブレスレットを投げ捨てる → 邉疎神(へざかるのかみ/海辺から遠く離れる神)、邉津那藝佐毘古神(へつなぎさびこのかみ/渚の神)、邉津甲斐辨羅神(海岸線の神または貝の神または他界の境界の神)

旅行中の食の神「飽咋之宇斯能神」!これから推し神にします!

どうでしょう。
この、身につけていたものを片っ端から投げ捨てつつ禊場に行く感じ。
こういう人、たまにいますよね。風呂までの廊下に脱ぎ散らかした服を転々と放置する人。
しかし、イザナギは神なのでポイ捨てもただでは終わらない。
超サイヤ人になる悟空が金色のオーラを発散するように、全身からうりゃ~と怒りの神気をほとぼらせながら服を脱ぎ散らかすイザナギ(*イメージです)。
この行為が引き金になって、なんと合計十二もの新しい神が生まれたのだ。
十二神って、またえらく豪気に発生させたものである。シングルになった解放感、あるいは黄泉でのフラストレーションが為せる技だったのだろうか。もしかしたら、「イザナミがいなくたって、オレ一人で十分やれる!」アピールだったのかもしれない。妻に三行半を叩きつけられた夫の傷心隠しである。
と、まあ、あんまりふざけてばかりだと怒られそうなので、少しはまじめな話をしよう。
この十二神の正体に関しては、例によって例のごとくで「諸説あります」状態だ。
支持を集める説のひとつは、前半の六神が陸路の旅に関する神、後半の六神が海路の度に関する神とするもの。もう一つは前半六神が境界を明確にして災厄の侵入を防ぐ、後半六神が穢れを海に洗い流して捨てる行為を意味する、とする説である。
何にせよ、出雲から日向への長旅があってこそ生まれ得る神、であるらしい。
だが、この神生みは序章に過ぎなかった。
次の段階で、ようやくあの神々が生まれるからだ。
え、あの神々って? 決まっているじゃないですか。
三奇人、もとい三貴神とされる彼等ですよ!

ついに彼らが!

▼毎月第1・3金曜日に配信!「ひねくれ日本神話考〜ボッチ神の国篇〜」シリーズはこちらからチェック!

書いた人

文筆家、書評家。主に文学、宗教、美術、民俗関係。著書に『自分でつける戒名』『ときめく妖怪図鑑』『ときめく御仏図鑑』『文豪の死に様』、共著に『史上最強 図解仏教入門』など多数。関心事項は文化としての『あの世』(スピリチュアルではない)。

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平成元年生まれ。コピーライターとして10年勤めるも、ひょんなことからイスラエル在住に。好物の茗荷と長ネギが食べられずに悶絶する日々を送っています。好きなものは妖怪と盆踊りと飲酒。

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