Culture

2024.12.10

京都・鍵善良房の「花びら餅」はひと味違う。その理由は?

京都・祇園の一角で享保年間(江戸時代中期)より菓子をつくり続ける「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」。菓子づくりに携わるさまざまな食のプロフェッショナルたちの仕事と、それを束ねる鍵善主人の奮闘を記した異色の和菓子本『鍵善 京の菓子屋の舞台裏』が発売されました。その中から、上生菓子の中でもいちばん人気を誇る迎春菓子「花びら餅」をご紹介。

鍵善は「ごぼうの蜜漬け」も「白味噌あん」もすべて自家製

「花びら餅」とは、丸く伸ばした餅に白味噌のあんとごぼうの蜜漬けを包んだ菓子のこと。宮中にて、新年の儀式で食べられた餅料理「菱葩(ひしはなびら)」に由来し、明治時代に京都の茶道の家元が初釜にこの菓子を用いたことから、迎春菓子になったとか。

ということで、「花びら餅」は本場・京都の味をまずは試してもらいたい。長い時間をかけて、それぞれの店が切磋琢磨しながらおいしい工夫を重ねてきたのだから。中でも、鍵善の「花びら餅」は個性がきわ立つ。年末年始、ほかの迎春菓子の製造で追われるなか、仕入れものには一切頼らず、自家製でつくるのが自慢だ。

キャラメリゼされたごぼうの風味、土の香りが風味満点の「ごぼうの蜜漬け」をはじめ、備中白小豆の白あんに白味噌をあわせた「白味噌あん」、そしてむっちりとした食感が楽しめる羽二重餅(昨今は賞味期限の長い求肥製が多くなってきている)。羽二重餅を“福々しく”包むこだわりに至るまで、「ここまで書いていいの?」と心配になるぐらい『鍵善 京の菓子屋の舞台裏』で明かされている。

鍵善の「花びら餅」は掛け紙も特別な一枚に

「花びら餅」を食べる楽しみは、包み紙をあけるところから始まっている。箱に掛けられた特別な掛け紙は、画家・鈴木悦郎(1924-2013年)の挿画。この絵は描き下ろしではなく、絵手紙からとられたもの。おいしい菓子を口にして至福の思いが、この温かみのあるパステル画につながったのだろう。

「花びら餅」、「園の賑い 正月向け特別版」の販売予約が始まります

鍵善のオンラインストアでは予約受付を開始(1月14日にはオンラインストアは締切に)。四条本店での販売は「花びら餅」は12月27日より、「園の賑い 正月向け特別版」は12月14日以降に。おいしいお菓子とあわせて書籍『鍵善 京の菓子屋の舞台裏』もお楽しみください。

【書誌情報】
『鍵善 京の菓子屋の舞台裏』
著:今西善也
定価:1980円(税込)
体裁:A5変形版/144頁
発売日:2024年11月1日
小学館・刊
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311577

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藤田 優

職人の手から生まれるもの、創意工夫を追いかけて日本を旅する。雑誌和樂ではfoodと風土にまつわる取材が多い。和樂Webでは京都と日本酒を中心に寄稿。夏でも燗酒派。企画・聞き書きを担当した本に『85歳、暮らしの中心は台所』(髙森寛子著)、『ふーみんさんの台湾50年レシピ』(斉風瑞著)、『鍵善 京の菓子屋の舞台裏』(今西善也著)がある。
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