Culture

2025.04.01

蔦屋重三郎は、江戸の“ラノベ”でベストセラーを連発していた! 大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ【J】

吉原に生まれ、自力で江戸の〝メディア王〟となった男・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)の仕事からプライベートまでを、AからZで始まる26の項目で解説するシリーズ【大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ】。第7回は「J=地本」をご紹介します! Zまで毎日更新中! 明日もお楽しみに。

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蔦重AtoZ
J=地本(黄表紙)のベストセラーを連発!


蔦重が活躍した江戸時代中期、江戸は人口100万人を超える大都市に成長していました。
そんななか、娯楽のひとつとして人気を集めていたのが本で、新進の版元・蔦重が目を付けていたのが、庶民も気軽に読める草双紙(くさぞうし=絵入りの本)。今の漫画やライトノベルのようなものでした。

草双紙は表紙の色で内容が分かれ、黄表紙(きびょうし)は成人向け、赤本は童話、黒本は歴史と歌舞伎のあらすじ、青本は恋愛や滑稽(こっけい)もの。これらの本は江戸(=地元)で生まれたことから「地本(じほん)」と呼ばれました。

蔦重が執筆を依頼していた作家は、盟友でもあった戯作者で絵師の山東京伝(さんとうきょうでん)、鱗形屋(うろこがたや)から出した『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』のヒットで黄表紙の祖と称された戯作者で絵師・狂歌師の恋川春町(こいかわはるまち)、戯作者で狂歌師の朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)、文人で狂歌師の大田南畝(おおたなんぽ)、以上3人は武士でもありました。
さらに、狂歌師で国学者の宿屋飯盛(やどやのめしもり)など、多彩な異能ぞろいでした。

人魚が主役の面白絵本!


『箱入娘面屋人魚(はこいりむすめめんやにんぎょう)』3巻 作/山東京伝 画/歌川豊国 黄表紙 寛政3(1791)年 国立国会図書館デジタルコレクション

浦島太郎が乙姫(おとひめ)の目を盗んで鯉と浮気して生まれた人魚の物語。
人魚は浦島太郎に捨てられたものの、数奇な運命をたどるという荒唐無稽(こうとうむけい)な内容は今読んでも超面白い!

▼あらすじはこちら
浦島太郎の子どもが人面魚遊女に!『箱入娘面屋人魚』のストーリーが斜め上すぎる

世相を揶揄した内容が大受け!

『文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくどおし)』 作/朋誠堂喜三二 画/喜多川行麿 黄表紙 天明8(1788)年 東京都立中央図書館

将軍徳川家斉(いえなり)と老中・松平定信を茶化した大ヒット作。武士の喜三二は、この本の噂を聞きつけた主君・秋田藩主より以後の執筆を禁じられ断筆する。

寛政の改革を茶化して、さらにヒット!

『鸚鵡返文武二道(おうむがえしぶんぶのふたみち)』 作/恋川春町 画/北尾政美 黄表紙 寛政元(1789)年 東京都立中央図書館

喜三二が筆を折ってしまったことから、その遺志を継ぐようにして恋川春町が、寛政の改革を皮肉った作品を著してまたまた大ヒット。しかし、それがもとで松平定信に呼び出された春町は、まもなく絶命。黄表紙の隆盛はミステリアスな事件で幕を閉じた。

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和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2025年2・3月号)』の転載です。 参考文献/『歴史人 別冊』2023年12月号増刊(ABCアーク)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人 歌麿にも写楽にも仕掛人がいた!』車浮代著(PHP研究所)、『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』伊藤賀一著(Gakken)
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