そして結婚相手には、恐ろしい女性を選ぶこと。恐ろしい女性こそが理想的な妻であるからです。その理由をご説明しましょう。
男性(昔話限定)がお相手を選ぶ際に気をつけるべきこと
昔話には、人間と動物の婚姻を巡る話がたくさんあります。
人間に助けられた異類、つまり人間以外のものが人間に姿を変えてお礼にくるというのは、昔話ではよくあることです。
こうした出会いを偶然と呼ぶか、運命と呼ぶかで結婚したいあなたの今後の人生は大きく変わることでしょう。
動物報恩譚では、動物たちが女性に身を変えて現れることがあります。彼女たちはたいてい、若くて美しい姿をしていることも見逃せません。
魅力的な相手との一期一会の出会いを大切にするためにも、まずは昔話の不思議な女性たちをおさらいしておきましょう。
まずは昔話の不思議な女性たちを知ろう!

出典:国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/1306527)
妻は、鶴(『鶴女房』より)
むかし、あるところにひとりの貧しい若者が暮らしていた。
ある冬の寒い日。山へ出た若者は傷ついた一羽の鶴を見つけ、手当てしてやった。
それからしばらくして、若者の家の戸を叩く者があった。戸口には美しい娘が立っていた。
「すみませんが、ひと晩泊めてください」
旅の途中で行き暮れたのかもしれない。気の毒に思った若者は、泊めてやることにした。しかし娘はそれから何日も若者の家にいて、旅立つ気配がない。ふたりはいつの間にか夫婦のように暮らしはじめた。
ある日、娘が若者に機織場を建ててほしいと頼んできた。若者が建ててやると娘は言った。
「これから錦を織ります。どうか七日の間、中を見ないでください」
錦は高く売れた。しかし糸もないのに、どうやってあんなきれいな錦を織るのか不思議に思った若者は、機織場の中を覗いてしまう。そこには、一羽の鶴が己れの羽を抜いて織りこんでいる姿があった。
「正体を見られたからには、ここにはおられません。わたしは以前、あなたに助けられた鶴です。ご恩返しをしたい思いで人間に化けておりました。短い間でしたが、楽しい毎日でした」
というと、鶴ははるかかなたへ飛び去っていった。
妻は、狐(『信太森の葛の葉』より)
平安中期、摂津の国の豪族安倍保名(あべのやすな)という人が住んでいた。信太大明神に参詣したときのこと。保名は、追いかけられて傷ついた狐をかくまい、逃がしてやった。
しばらくすると、保名のもとへ若い娘がたずねて来た。この娘こそ、保名の助けた狐だった。娘は保名に自分の家で休むように誘った。娘の好意に甘えた保名は、ひと晩のつもりが二日、十日と居ついてしまい、やがてふたりのあいだに男の子も生まれ、幸せな月日が過ぎていった。
ある春の日、心地よい眠りについ油断して、娘は狐の姿で寝ているところを我が子に見られてしまった。娘は、ともに暮らすのもこれまでと、家族を残して信太の森へと去っていった。
妻は、魚(『娘と川鱒』より)
むかし、あるところに漁師が暮らしていた。漁師が魚を釣っていると、川鱒が柳の枝に顎をかけて動けなくなっていたので漁師は助けてやった。
漁師が家にいると、戸を叩く者があった。戸を開くと美しい娘がいた。娘に求婚されて、ふたりは夫婦になった。
魚を釣ってくると、娘は美味しい汁を煮てくれた。
こんなに美味しい汁をどうやって作るのか。娘が料理しているところを漁師がこっそりのぞくと、娘は水の中に入り、ばちゃばちゃして汁をこしらえていた。
娘が魚であることを知った漁師が問いつめると、娘は答えた。
「以前、柳の枝にかかっていたところを助けてもらいました。そのお礼にきたのです」
そう言って家を出て行ってしまった。
あなたの結婚を阻む「禁忌」にご注意
『娘と川鱒』によく似た話に、蛤と結婚する『蛤女房』という昔話があります。この娘(もとは蛤)も美味しい汁をこしらえてくれるのですが、さすが海から上がってきただけあって、魚や貝は料理上手です。
彼女たちの調理方法にはいくつかあって、なかには覗いたことを後悔するような場面に出くわすこともあります。まあ、相手の思いもよらない一面に出くわすのは夫婦生活の醍醐味なので、それも楽しみましょう。
ただ、人間でない女性を妻にする場合には、注意すべき点があります。
どのような場合でも、正体を見破ろうとしてはいけません。彼女たちは自分の本当の姿を知られてしまうと、瞬時に「実家に帰らせてもらいます」モードになります。こうなったら、もう夫婦生活は終わりです。
しかも彼女たちは、口にしたことは必ず実行する堅実な女性ばかりです。帰る、と言ったら絶対に帰るし、二度と戻って来ることはありません。
これはもう、昔話を読めばすぐに分かることです。
料理をしているところを見るのはダメ。個室を覗くなんてもってのほか。「見るな」「開けるな」と言われた場合には、秘密を暴くようなことをしてはいけないのです。
相手は人間でない、ということをいつも忘れないように。異類との円満な夫婦生活のためには誠実に、そして上手に嘘をつくことを覚えましょう。
お相手選びは外見だけで判断してはならない

出典:国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/pid/10303544/1/10)
若くて美しい女性は魅力的ですよね。そうした女性と親しくなりたいという気持ちは、よく分かります。しかし、人間ではない相手にこちらから結婚を申し込むのは気が引けるもの。
幸運なことに、昔話の女性たちは積極的な方がおおいようです。押しかけ女房(という言いかたは古いですが、まあ昔話なので)のようにやって来ては、そのまま居ついてしまう、ということもままあります。
ただ良い話には裏があるもので、たとえば『喰わず女房』はこんな話。
妻は、蜘蛛(『喰わず女房』より)
むかし、あるところになかなか結婚できない男性がいた。見合い話があっても「安上がりだから、ご飯を食べない女性がいいなあ」というばかり。
ある晩、美しい娘が訪ねてきた。
「お嫁さんにしてください。わたしはちっともご飯を食べません」
それならいいと、ふたりは結婚。娘は、ほんとうにご飯をちっとも食べなかった。不思議に思って娘のあとをつけると、山に入るのが見えた。
娘は山鳥を三羽捕まえると家に帰って汁をつくり、釜で大飯を炊いて握り飯にした。そして髪をほどき、頭の上の口の中へ握り飯と汁とを放りこんでいった。
娘の正体は蜘蛛だった。
結婚するなら恐ろしい妻一択
こんな恐ろしい妻はぜったいに嫌だ、という声が聞こえてきそうですが、じつは喰わず女房は理想の妻と言えるでしょう。
この昔話の主人公が食事をしない女性を妻に望んだ理由は、性格が悪いという理由のほかにもうひとつ、生活が苦しかったから、という事情があります。その日その日をわずかな稼ぎで暮らしている彼にとって、飯を食わない嫁は切実な願いだったのかもしれません。
『喰わず女房』の正体は、蜘蛛だったり山姥だったり話の結末はいろいろです。共通しているのは、頭に口があるということ。頭に口をもつもの、といえば蜘蛛。蛇もそうといえるかもしれません。
日本の伝承では、蜘蛛は水神の化身として語られてきました。水神は滝壺などの水底に棲み、蜘蛛の姿で現れると語られます。だとしたら、彼女の来訪にはべつの目的があったかもしれません。
神さまの化身である女性を妻に迎える、という本来なら望んでも叶わない奇跡のようなことが起こったのに気づけなかったのはとても残念なことです。もしかしたら、人間界よりももっと美しくて素晴らしい世界へ行くことができたかもしれないのに。
大切なのは互いに幸せな結婚生活を送ること

出典:Art Institute of Chicago(https://www.artic.edu/artworks/21720/cranes-on-snow-covered-pine)
この世のものならぬ不思議な女房は、ほかにも山鳥だったり蛇だったり竜宮の乙姫だったりさまざまな形で現れます。彼女たちの中には富をもたらす者もいれば、命を奪う者もあります。どのような相手でも、正体を見破られることによって破局が訪れるのだということを覚えておきましょう。正体を見られた者は、必ずもとの世界に帰らなくてはならないのです。
たとえ仲睦まじく暮らしていても、相手は人間ではありません。かといってただの動物でもない。人間界の常識を超えた、美しくも恐ろしい世界からの来訪者です。成婚への道のりをより確かなものにするためにも、今回紹介したポイントをおさえながら婚活を進めてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
「民話と伝説」学習研究社、昭和52年

