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2019.12.11

稀代のモテ男に学ぶべし!「源氏物語」光源氏の女性を虜にするテクニック5連発!

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『源氏物語』の主人公光源氏は、想像上の人物ではありますが、稀代のモテ男として有名です。容姿端麗で身分も申し分なし。そんな光源氏が、何の努力もせずモテていたと思っていませんか?
どんなにイケメンで社会的地位があっても、モテない人はモテないものです。光源氏もあの手この手のテクニックを使って、女性たちを虜にしていました。
数ある光源氏のモテテクニックの中から、人妻を振り向かせようと躍起になっていた時期『帚木(ははきぎ)』の巻に焦点を当ててご紹介します。

光源氏のモテテクニック5連発

まだまだ恋愛経験の浅い、でも相手への想いに素直な所が魅力的な17才の光源氏がとったモテテクニックとは? 『源氏物語』が書かれたのは千年前とはいえ、今でも十分通用するテクニックなので、ぜひ令和の紳士のみなさまも参考にしてみてはいかがでしょうか。

チラリズムで隙を見せる

死語となって久しい「チラリズム」ですが、源氏のモテテクニックのひとつでもあります。
ある暑い夏の日、光源氏は正妻の実家で美人女房たち(貴人の家などで働く女性)と寛いでいました。
そこで光源氏は、「暑いなぁ・・・」と言いながら着物をしどけなく着崩し、女房たちはその姿にうっとり見とれてしまいます。

はだけすぎないのがポイント

現代でも、いつもピシッとスーツで決めている男性が、ちょっとネクタイや襟元をゆるめている姿にキュンとくる女性も多いもの。
しかも「暑いから」という理由が自然でいいですね。なんの理由もなくはだけていては、ただのだらしない人か変態か。細かいところまで光源氏はぬかりないのです。

【光源氏のチラリズムの描写シーン】
原文:中納言の君、中務などやうのおしなべたらぬ若人どもに、戯れ言などのたまひつつ、暑さに乱れたまへる御ありさまを、見るかひありと思ひきこえたり。
訳:中納言、中務などの美人で若い女房たちに冗談などを言いながら、暑くて衣服をゆるめている様子を、彼女たちはなんと美しいことと思い見とれている。

決め台詞「ずっと前から好きだった」

光源氏は、つい最近好きになった人にも「ずっと前から好きだった」と、まるで一途に恋焦がれていたかのようなロマンチックな言葉をかけます。

いきなり「好きです」と言われるより「ずっと前から好きでした」と言われた方が、確かにちょっと嬉しく感じませんか? もしそれが嘘だったとしても、ずっと前から好きだったかどうかなんて、どうせ他人にはわからないのですから。それに”ずっと”の具体的な基準もありません。2時間前が”ずっと前”の人もいるかもしれません。そんな言葉の盲点を突いた、なんとも巧妙なモテテクニックと言えるでしょう。

「ずっと前から好きでした!(今日だけど)」

【「ずっと前から好きだった」を語るシーン】
原文:「うちつけに、深からぬ心のほどと見たまふらむ、ことわりなれど、年ごろ思ひわたる心の中も聞こえ知らせむとてなむ。かかるをり待ち出でたるも、さらに浅くはあらじと思ひなしたまへ」
訳:「私がこんなことをするのを、ただの出来心だと思うでしょう。でも本当は長い間ずっとあなたを思い続けていて、二人きりになれる日をずっと待っていたのです。浅はかな気持ちからではないことをわかってください。」
※空蝉との初めての逢瀬で語った言葉です。”年ごろ思ひわたる”と言っていますが、この日見つけたばかりでした。

相手を見て織り交ぜる、自虐風自慢

「おれって背高いから、なかなかサイズ合う服ないんだわ。普通の身長の人が羨ましいわ~。」みたいな、自虐と見せかけて自慢する「自虐風自慢」。実は光源氏も自虐風自慢の使い手でした。しかも相手を選んでおり、自虐風自慢とバレなそうな子ども相手に自虐風自慢しています。

光源氏は憧れの人妻の弟をつかまえて、「君のお姉さんは、私のことを首の細い頼りない男とみくびっているのだよ。」などと言います。平安時代、首が細くてナヨナヨとした身体は、高貴さの象徴でした。高貴であればあるほど、自分で体を動かして何かをする必要はなかったので、色白のナヨナヨした身体の方が偉いのです。それに対し屈強な身体の男性は、卑しいものとされていました。

つまり、「おれってヒョロいからバカにされてんだよね」と自虐してる風に見せかけ、自分の高貴さを自慢しているのです。それが大人なら自虐風自慢とわかるでしょうが、まだ幼い少年は素直に真に受け、「なんてひどい」とうちひしがれます。そしてその様子を見て源氏は笑うのです。弟を通して空蝉に伝われば、自分が自虐風自慢を言ったかどうかなんてわかりませんから。

光源氏ほどの人でも、自虐風自慢せずにはいられなかったとは・・・

【自虐風自慢のシーン】
原文:「あこは知らじな。その伊予の翁よりは先にみし人ぞ。されど、頼もしげなく頸細しとて、ふつつかなる後見まうけて、かく侮りたまふなめり。」
訳:「君はしらないだろうけど、伊予のじいさん(空蝉の旦那のこと)より私の方が先に恋人だったのですよ(大嘘)。だけど、首の細い頼もしげのない男とみくびって、あんなくだらない夫と結婚して、私のことをバカにしているのですよ。」

好きな人ができたら、外堀から埋める

好きな女性ができたら、まずはその人の召使や家族などの外堀から埋めるテクニックは、光源氏に限らずよく見られます。特に多いのが、召使の女性と恋人関係になることです。懇ろになったところで、「君のところのお姫様が一人でいる日、教えてよ」などと情報を漏らさせたり、夜這いの手伝いをさせたりしました。

光源氏にいたっては、憧れの人妻の幼い弟まで使います。その小君(こぎみ)と呼ばれる少年は、なんと光源氏と男色関係にもあったと推測されています。

光源氏はそんな少年に向かって「お姉さんのことずっと前から好きだったのに、あの年より旦那にとられちゃって・・・」と言いくるめ、恋の仲立ちをさせます。

現代でそこまでする人はいないと思いますが、まずは好きな人の友達と仲良くなるなど、外堀から埋めていくのは、今でも通用するテクニックではないでしょうか。

「急いては事を仕損じる」とも言います。まずは好きな人の周りの人と仲良くなるのもアリ?

【光源氏が空蝉の弟を懐柔するシーン】
原文:「かの、ありし中納言の子は得せてむや。らうたげに見えしを、身近く使ふ人にせむ。上にも我奉らむ」
訳:「あのときの中納言の子(空蝉の弟、小君のこと)は、私に任せてもらえないか。かわいらしく見えたので、傍で使ってみようと思う。出世もさせてあげるから。」
※「小君の継父=伊予介」に対して言った言葉。小君の出世をちらつかせ、実際は人妻との橋渡しに使おうと思っている。

女性の悪口を言わない

『帚木』の巻には、「雨夜の品定め」という有名なシーンがあります。これは、遊び人の男たちが、こんな女は嫌だ、理想の女性とはなんぞや、と語り合う場面です。

ここで遊び人たちはあれやこれや女性の悪口を言うのですが、光源氏はそんな悪口には参加しません。相槌を打ったり聞き流したりする程度です。

どんなに素敵に見える男性でも、女性の悪口を言っていたらマイナスイメージですよね。さらに光源氏は、悪口の矛先が自分の妻に向かいそうになったら寝たふりをして、華麗にスル―するテクニックも身に着けていました。どうしても参加したくない愚痴や悪口に巻き込まれてしまったら、光源氏を見習ってぜひ寝たふりをしてみましょう。

コソコソ悪口を言う人って、男女問わずかっこわるいものです

【妻の悪口になりそうなところ、寝たふりでスルーするシーン】
原文:わが姉妹の姫君は、この定めにかなひたまへりと思へば、君のうちねぶりて言葉まぜたまはぬを、さうざうしく心やましと思ふ。
訳:妹の姫君(光源氏の正妻は、語り主の妹)は、この議論にぴったりだと思ったけれど、光源氏は居眠りをして何も言わないのを、物足りなくいまいましく思っている。

テクニックを駆使した恋の結末は・・・

このようなテクニックを駆使した光源氏の恋は、どのような結末を迎えたのでしょうか。実は空蝉に二度目に会いに行ったところ、拒絶され逃げられてしまいました。

「なんだ、結局モテてないじゃん」と思うかもしれません。しかし、空蝉も本心では光源氏に惹かれていたのです。ただ中流階級に落ちぶれた自分が、高貴な光源氏との恋に溺れるのはみっともなくて耐えがたく、そのプライドや自尊心から光源氏を拒絶するしかなかったのです。

そして空蝉は夫亡きあと出家し、光源氏のもとに引き取られ、何不自由なく暮らしました。恋人同士という結末にはなりませんでしたが、「一度愛した女は一生見捨てない」がモットーの光源氏と、生涯の心の友として過ごしたのです。

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国立国会図書館デジタルコレクションより
タイトル:源氏物語五十四帖 箒木
著者:広重
出版年月日:嘉永5年

参考:日本古典文学全集『源氏物語』小学館 

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。