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2020.02.20

『NARUTO』『ゴールデンカムイ』『ルパン三世』登場人物のモデルになった「日本三大盗賊」って?

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大人気漫画に登場するあのキャラクターたちのモデルが、まさか江戸時代に描かれていたなんて!『NARUTO -ナルト-』に登場する自来也(じらいや)、『ゴールデンカムイ』に登場する蝮(まむし)のお銀、そして『ルパン三世』の石川五ェ門(ごえもん)。彼らのモデルとなった人物たちは「日本三大盗賊」と呼ばれ、江戸時代の歌舞伎や浮世絵などさまざまなメディア作品に登場し、庶民の間で人気を博していました。3人とも架空の人物とされていますが、中には「実在していたのでは?」といわれる人物もいるのです。この記事では、そんな3人の大盗賊をご紹介しましょう。

1.蝦蟇の妖術使い!自来也

岸本斉史による漫画『NARUTO -ナルト-』で伝説の三忍のひとりとして描かれた自来也。彼のモデルは、文化3(1806)年に書かれた感和亭鬼武(かんわてい おにたけ)による読本『自来也説話』に登場する自来也です。そこで描かれている自来也は義賊で、その正体は浪士・尾形周馬寛行(おがた しゅうま ひろゆき)。漫画でもおなじみの、蝦蟇(がま)の妖術を使って活躍します。

ちなみに天保10(1839)年に書かれた、美図垣笑顔(みずがき えがお)らによる合巻『児雷也豪傑譚』では、「自来也」から名前を「児雷也」に改め、上記の設定をベースに忍者として活躍しています。越後妙高山に棲む精霊から蝦蟇の妖術を教わり、妻の蛞蝓(なめくじ)の妖術を使う綱手(つなで)、そして宿敵である大蛇丸(おろちまる)と戦う物語です。この設定はそのまま『NARUTO -ナルト-』にも生かされています。

岸本斉史『NARUTO -ナルト-』19巻 集英社

なお描かれている伝説の数々は、フィクションとされていますが、人物のモデルは宋代の中国に実在し、盗みに入った家の壁に「我、来たるなり」と書き記したという盗賊「我来也」を元にしたとされています。

2.ドクロを抱いて眠る!鬼神のお松

野田サトルによる漫画『ゴールデンカムイ』に登場した女盗賊、蝮のお銀。彼女のモデルとなった人物のひとりが、鬼神のお松です。下の浮世絵で描かれているシーンも、漫画で見覚えあるような…!

『鬼神於松四郎三郎を害す図』月岡芳年 ロサンゼルス・カウンティ美術館

深川の遊女だったお松は、亡くなった父のドクロを抱いて眠るなど、妖艶な一面を持つ美女でした。そのうちに「骸骨お松」の異名を持つ評判の芸者になります。
お松は、仙台藩士の立目丈五郎のもとに嫁ぎ、幸せな結婚生活を過ごしました。しかしある日、夏目四郎三郎という男に殺されてしまいます。お松は復讐を決心しました。夫の仇を討つべく長旅に出ますが、その途中に強請り(ゆすり)や強盗を重ねて、女盗賊となるのです。

旅を続けた末、ついに敵の夏目を見つけ出したお松。正体を隠して旅の道中を一緒に歩き、川を渡る際に「ここを歩いて渡るのは難しいわ」と持病を訴えて夏目に背負ってもらいます。そして、彼の首筋めがけて、隠していた小刀を振り下ろすのです。
夏目を殺し、本懐を遂げたお松。その後も20人を超える盗賊に囲まれるも巧みに盗賊頭を倒し頭目に収まったり、手下を率いて近隣の村々を略奪して回ったりして「鬼神のお松」と恐れられようになりました。

これらの伝説は、浮世絵や講談、小説などで描かれてきましたが、決定的な史料はみつかっておらず、お松は実在しなかった人物とされています。

3.天下の大泥棒!石川五右衛門

最後に紹介するのは、安土桃山時代に出没したといわれる盗賊の首長、石川五右衛門。モンキー・パンチ原作の漫画『ルパン三世』でおなじみの「石川五ェ門」のモデルになった人物です。五右衛門は、実はこの3人の中で、唯一実在していたとされています。

漫画の五ェ門のイメージといえば「またつまらぬものを斬ってしまった…」ですが、歌舞伎の五右衛門は『桜門五三桐(さんもんごさんのきり)』で南禅寺山門から身を乗り出し「絶景かな、絶景かな」というシーンが有名です。そのほかにも、文禄3(1594)年に豊臣秀吉の手下に捕えられ、京都三条河原で処刑された残忍なエピソードが、人形浄瑠璃や歌舞伎などの作品で描かれてきました。その内容とは「見せしめとして釜で煎り殺され、さらに彼の親族たちも極刑に処された…」というもの。

安土桃山時代から江戸時代初期の20年ほど日本に貿易商として滞在していたベルナルディーノ・デ・アビラ・ヒロンによる『日本王国記』には

かつて都(京都)を荒らしまわる集団がいたが、15人の頭目が捕らえられ京都の三条河原で生きたまま油で煮られた。

といった記述があり、イエズス会の宣教師として日本に滞在していたペドロ・モレホンがこの本に注釈を入れており

この事件は1594年の夏。煮られたのは「Ixicava goyemon」とその家族10人ほど。

と書かれていたそうです。

その最期は多く語り継がれていますが、実は出生については謎が多く、伊賀流忍者の抜け忍の弟子という説もある五右衛門。

江戸庶民に愛された五右衛門の伝説。人気を博した背景として、時の権力者である豊臣秀吉の命を狙う者として描かれたことが、理由のひとつとして挙げられます。社会や政治に対する不満を代弁するかのような、石川五右衛門の活躍。現代ドラマなどにも通じる、庶民のヒーロー的存在だったのでしょう。

今回紹介した「日本三大盗賊」のほか、江戸時代のメディア作品には、まっとうな道からはずれたアウトローな人物たちが数多く描かれてきました。現代の漫画やドラマ、ゲームなどの作品をきっかけに、かつての江戸で人気を博した、悪人キャラクターたちに注目してみてはいかがでしょう。