Culture
2020.04.01

今これやったらマナー違反!昔の食事風景とともに、日本の箸置き文化を探る

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お箸を使う国は、中国・韓国・ベトナム・モンゴルなど多数ありますが、純粋に”お箸だけ”で食事をするのは、世界中で日本だけです。

「箸に始まり箸に終わる」ということわざもあるように、単に食事するための道具としてだけでなく、神事や仏事にも密接に関わっている日本のお箸。そんなお箸の名脇役「箸置き」はどんな歴史を辿ってきたのでしょうか?日本の箸、箸置き文化に迫ります!

平安時代はごはんにお箸を立てていた!

まずはこちらの絵をご覧ください。『病草紙(やまいのそうし)』という平安時代に描かれた絵巻で、庶民の食事の様子が描かれた大変貴重な資料です。

国立国会デジタルコレクションより 『病草紙』歯槽膿漏を病む男 土佐光長 画[他]

歯槽膿漏の男性が、歯がグラグラして痛くて噛めない様子を描いています。ここで注目したいのはお箸です。なんと、ごはんにグサッとお箸が刺さっているではないですか!現代ではこのスタイルはお葬式で使われるため、食事中にごはんにお箸を刺すのはマナー違反です。

しかし、平安時代では庶民だけでなく、貴族の「大饗」と呼ばれる宴会でも、このようにお箸を刺していたことがわかっています。お箸だけでなく、匙というスプーンのようなものまで刺していたのだとか。ただし、天皇や上流貴族は「馬頭盤(ばとうばん)」と呼ばれるお皿に足が付いた形の箸・匙置きを使っていたこともわかっています。

上の『病草紙』を見ると、「ごはんの陰に隠れているものが箸置きなのでは?」と気が付いた方もいるかもしれませんが、これは箸置きではなく、調味料入れだと考えられています。平安時代の食卓では、基本的におかずには味付けがほとんどされておらず、自分で塩などをつけて食べていたのです。

※平安時代の庶民が全員「歯槽膿漏を病む男」のような食事ができていたわけではありません。描かれた庶民の男女は、箸の長さなどからある程度裕福な生活を送っていたと考えられます。

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病気をポップかつエキセントリックに描く!平安時代の衝撃的な絵巻『病草紙』を見てくれっ

今の箸置きは神事が起源?マイ箸はあるのに、マイフォークがない理由

お箸の歴史は諸説ありますが、七世紀の飛鳥板蓋宮遺跡(あすかいたぶきのみやいせき)で出土したものが比較的古い例です。この当時のお箸には、ピンセット型のものも見られました。

国立国会デジタルコレクションより 『大嘗会悠紀主基神饌調進物図』

今の私たちが使っているような2本に別れたお箸が大量に出土したのは、奈良の平城京跡です。つまりお箸は七世紀頃には伝わっていたようですが、発掘された場所が限られていることから、主に公的な行事や神事で使われるものだったようです。

また、神事では古くから「箸の台」や「御箸台」という箸置きのような物が使われていました。

国立国会デジタルコレクションより 『葵御祭供進之神饌諸品色目書』 賀茂一社中 [著]
※右上が箸を置く調度品

箸は神事と密接な関係があるもので、箸の台・御箸台に代表される調度品に丁重に置かれていました。ここから現代の「箸置き」に発展していったものと考えられます。

私たち日本人は、たとえ家族であってもお箸を共有するのは憚られませんか?きっとどこのご家庭も、お父さんのお箸・お母さんのお箸・子どものお箸といったように、それぞれのお箸をお持ちのはずです。その一方、「マイスプーン」とか「マイフォーク」を持っていて、絶対他人と共有したくないという人は少ないでしょう。それは、お箸が神に近しいものという意識が根付いているからかもしれません。

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今の箸置きのスタイルが登場したのは江戸時代

箸置きは神事で使う特別なもので、平安時代は貴族から庶民まで、食事中お箸をごはんに立てちゃっていました。一般に今のような箸置きが使われるようになったのは、江戸時代に入ってからと考えられています。

しかし江戸時代ではそこまで流行せず、本格的に使われるようになったのは明治時代に入ってから。というのも、和食は膳に乗せて頂くのが一般的だったので、そこまで箸置きの必要性がなかったのでしょう。

現代ではお祝い事などで使われることの多い御膳。折敷(足の無い御膳)というものもある。18世紀には箱膳という持ち運び式御膳が登場し、ちゃぶ台が登場したのは明治時代。

明治時代に西洋文化が入ってくると家族でひとつのテーブルを囲むようになったことから、衛生面に配慮して箸置きが流通したと考えられます。

今ではお客様へのおもてなしや、食卓に花を添える存在として、多種多様な箸置きが販売されています。

箸袋アートにチャレンジ!

お弁当や外食に欠かせない「割り箸」が流通しはじめたのは明治時代前後です。割り箸を包む「箸袋」が使われたのは、1888年の山陽鉄道開通にあたって、幕の内弁当に添えた箸をくるんだのが始まりと言われています(諸説あり)。

箸置きがない時に、箸袋を箸置きに見立てて使うことは問題ありません。食事中に箸袋であっと驚く作品を作る人もいますよね。和樂webスタッフ・ライターから自作の「箸袋アート」の写真を送ってもらいました!


白鳥でしょうか?とってもゴージャスです!


安定感があって使い勝手が良さそうですね。


りぼん型。お子さんにも喜んでもらえそう!


わんちゃんもかわいい~!!


最後は富士山!箸袋より、お寿司に目がいってしまいました…(笑)

ぜひみなさんも気軽に小さなアートを楽しんでみてください!

参考書籍:『箸(はし)』一色八郎著 『日本人は何を食べてきたのか』永山久夫監修 『祝いの食文化』松下幸子著 『日本型食生活の歴史』安達巌著 『日本料理の歴史』熊倉功夫

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書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。