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2020.12.19

SAKEをワインに次ぐ、パリジャンのライフスタイルアイテムに!パリ近郊の酒蔵で醸すWAKAZE

この記事を書いた人

「本来の日本酒は、ワインと同じようなアルコール度数です。40度ではありません。」と、この酒蔵のサイトのトップページに書いてあります。フランスでは、日本酒=アルコール度数が高いお酒、という認識をされているのです。ワインと同じぐらい、とフランス人にとって身近なものと比較することで、感覚的に誤解を解こうという作戦です。

「間違って伝わってしまった日本酒への偏見が我々の一番の敵」とフランス産のお酒を醸造するWAKAZEのCEO 稲川琢磨さんはいいます。パリは日本食ブームで、日本食レストランがとても増えましたが、残念ながら日本食と呼べないものを提供するお店も。私自身、そのようなレストランで、白酒(パイチュウ)や、質の悪い料理酒のような「SAKE」を出された経験があります。その影響でフランスでは「SAKE」というと、強いアルコール飲料、悪酔いする等のよくないイメージがついてしまいました。

WAKAZEのCEO 稲川琢磨さん

「日本酒を世界酒に」

日本からフランスにきたものの中には、在仏日本人の間では有名だけれど、現地のフランス人にはあまり知られていない、というものが多々あります。そんな中、WAKAZEの顧客の8割近くはフランス人という、現地での確かな売り上げ。フランスのテロワール(terroir:地のもの)を活かした酒造りで、南仏カマルグの米、フランスの硬水、フランスのワイン酵母、自家製の麹と、徹底してフランス産のものにこだわっています。そういった物語もフランス人たちを魅了する秘訣のようです。

2019年11月、パリ近郊の「KURA GRAND PARIS(クラ・グラン・パリ)」にて醸造を開始し、たったの一年足らずで、すっかりSAKE好きなフランス人たちの注目を集めているWAKAZE。なぜ、この短期間でここまでの知名度を上げることができたのか。そのビジネス展開の手法は、今までの世界を目指した日本発の酒蔵とは一線を画すものでした。「日本酒を世界酒に」を合言葉に、お酒をワインに次ぐ存在に押し上げるための、WAKAZEの活動をご紹介します。

秘密基地のような酒蔵の外観

ブランディングの素早い軌道修正

2020年、醸造二期目にして、大幅にブランドイメージを刷新しました。昨年までは、アルザスワインの細身のボトルに、和風でミステリアスな雰囲気のラベル、「C’est la vie セ・ラ・ヴィ(これが人生)」という儚げな印象のフランス名でした。
今年からは、ブルゴーニュのどっしりとしたボトルに、キャラクターも登場し、ポップな日本のサブカルエッセンスを感じるものに。印象的な色使いの、青はフランス、赤は日本を表現しています。「Bleu Blanc Rouge(青、白、赤)」のトリコロールカラーは、フランス人の誇りでもあります。

左が新しいデザイン、右が一年目のデザイン

お酒の種類も増えて、「HEROES」という定番商品シリーズとして3種類。基本の「THE CLASSIC」、南仏マントンのレモンとバーベナの果皮を配合したボタニカルな「THE BOTANIC」、ブルゴーニュのピノ・ノワールが入っていた樽で熟成させた「THE BARREL」。これらのラベルは統一感のあるデザインながら、それぞれのキャラクターで個性を示しています。それとは別に「LAB」という毎月実験的な試みをするシリーズの、2つの商品ラインが生まれました。

2つ異なるコンセプトのブランド

「LAB」の第一弾は、原点回帰をテーマに、WAKAZE創業の地、山形県庄内地方鶴岡市のお米「出羽燦々」の六割磨きで仕上げた吟醸酒「WA CLASSIC」。本来であれば、フランスのテロワールを使うというのがWAKAZEのコンセプトですが、これは例外的に日仏のお米の対比を楽しむ、という試みでもありました。この次は、フランス産の柚子を使ったお酒を予定しているそうです。

期間限定の「LAB」シリーズ

また、これらの新しいブランドグラフィックは、イギリスのOUR FRIENDSというクリエイティブエージェンシーにお願いしました。イギリスの新しいものを生み出すカルチャー、フランスでも日本でもない中立な立場、そしてグローバルを目指す上で必要不可欠な英語表記に至ったというわけです。
下の総入れ墨の女性の写真は、稲川さんが衝撃を受け、ブランディングを依頼するきっかけにもなった、パリのアジアンフュージョンレストラン「Miss Kô」のイメージビジュアル。コロナ前はずっと満席という人気店で、イギリス人であるOUR FRIENDS独特の視点が、パリの人たちにウケていると感じたそう。

クリエイティブエージェンシーOUR FRIENDSが手掛けた「Miss Kô」のイメージビジュアル

お米から引き出す果実感

味に関しても、大きく変わりました。昨年まではほとんどお米を磨かずに醸造していたので、穀物っぽさが残り、甘みを強く感じるお酒でした。
今年は、カマルグの精米所との信頼も築き上げられ、より磨いてもらうことで、スッキリとした仕上がりになりました。磨けば磨くほど良い、という考えではなく、あくまでもその土地の特性をお酒に活かしたいと考えているので、削りすぎないバランスをみているところだそう。

味を探求する実験室のような空間

また、通常の清酒では黄麹を使うところ、あえて焼酎に使われる白麹も使い、切れ味がしっかりとした柑橘系の酸味が出るようにしています。フランスは果実の国、ワインは葡萄の果実からできているので、この地でより受け入れられるよう、米から甘酸っぱい果実感を引きだすのが狙いです。甘いといってもベッタリとした甘さではなく、幅広い食事に合いそうです。

「THE CLASSIC」をぬるめの燗でいただきました。フランス語で「SAKE tiède」

「洋食に合わせやすい」というテーマは一貫しつつも、フォアグラなどに合う貴腐ワインのように甘かった「C’est la vie」から、洋食全般に合うワインに近づいた「THE CLASSIC」は、飲む場面が広がりそうです。
ボトルはワインのものを使っていますが、さらにワイングラスで飲むという提案も、フランス人の暮らしの中に溶け込んでいくためのものです。

フランスらしい木骨組みにかかる、お酒を飲むためのワイングラス

SAKEのあるライフスタイルを提案

リブランディングされたサイトにアクセスすると、商品紹介、通販サイトにとどまりません。お酒をカクテルにアレンジするレシピや、音楽サイトSpotify内で聴くことができるミュージックプレイリストがあったり。それも「APÉRO TIME」や「DINNER TIME」など、お酒をいただくシーンを想定した選曲です。メインの顧客は、新しいものへの好奇心が強い30-50代の人たちで、そういった人たちの日常に寄り添うお酒というのが、目指している姿です。

「お客さんにとって、ただの1本のお酒に終わっちゃうと、それ以上ブランドとして価値がつかない時代なので、ライフスタイルという文脈でいろんな切り口のコンテンツを発信していきたい」と稲川さんはいいます。それには、アメリカのベンチャー企業や、スタートアップ企業のブランディングを参考にしているそうです。

Spotifyのミュージックプレイリスト

あえて顧客に委ねる部分をつくる

WAKAZEはスタートアップ企業なのですが、かつてビジネスコンサルティングをされていた稲川さんの語り口は、投資家たちに向け事業計画を何度もプレゼンテーションしてきたことを想像させるものでした。D2Cと呼ばれる自社の通販サイトから直接顧客に販売する方式により、コロナ禍においても売り上げは右肩上がり。
スタートアップ企業らしく、クラウドファンディングも行っていました。昨年の「C’est la vie(これが人生)」の生まれ変わりである「THE CLASSIC」ですが、2種類の酵母の候補があります。それぞれの酵母をA、Bとし、2本セットでクラウドファンディングで支援してくれた600人の元にこれから届ける予定です。そして、それを実際に飲んだ人たちと、最終的に使用する酵母を選んでいきます。土台となる部分はWAKAZEが提案するけれど、そこからの細かい調整は、顧客と一緒に作っていくことのほうが今の時代にあっていると考えているからです。WAKAZEで働く人のほとんどが日本人ですが、このようにして、フランスの顧客の意見に耳を傾けることで、フランスで愛される味を模索しています。

クラウドファンディング用、2種類の酵母を使った「THE CLASSIC」

始まりは三軒茶屋のどぶろくブリュワリー

WAKAZEの酒蔵は最初からフランスを拠点にしていたわけでなく、東京は世田谷区の三軒茶屋から始まります。そこで2016年に醸造を開始。ただ「日本酒」を造るのには「清酒」の免許が必要なのですが、新規免許は下りない、という暗黙のルールがあり、参入するのが難しい業界と言われています。
そこで、WAKAZEは、発酵途中にハーブや果実などを、副原料として使用したお酒造りを開発。副原料を加えることで、清酒ではなく「その他の醸造酒」扱いとなり、そのための免許は下りたのです。清酒ではなく、どぶろくの醸造所併設ブリューバーというのが当時の事業構想でした。

三軒茶屋の酒蔵は今も続いており、その強みは短期間に小ロットで様々なお酒を作れること。「Whim」というバーも併設しており、顧客の声を直に聞いて反映させていく、フットワークの軽いお酒造りをしています。かつてお店で提供していたお酒のうち、51レシピのうち、どれが一番好きかというアンケートを取り、復刻版を販売したりなどのイベントも。

WAKAZE三軒茶屋醸造所

そもそも、お酒って?

「清酒」「吟醸酒」「その他の醸造酒」「柑橘系の香り」「ボタニカル」「樽熟成」と、様々な言葉が出てきましたが、柑橘系の香りって、果実をお酒に入れているのでしょうか…? ボタニカルってなんだろう? そんな疑問が湧いたので、杜氏の今井翔也さん監修のもと、WAKAZEの商品の特徴になる部分を取り上げた、お酒のつくり方をイラストにしてみました。

WAKAZEのポイント
・THE CLASSICは、「6.酒母」で、白麹を使って柑橘系の酸味を出す
・THE BOTANICは、「8.醪(発酵)」で、レモン果皮とバーベナの加えて香り付け
・THE BARRELは、「12.貯蔵」で、ワイン樽で熟成させて味わい深く

日本酒好きなパリジャンたちと試飲

稲川さんからお話をうかがった後で、フランス人の友人たちと試飲してみました。フランスではスクリューキャップは珍しいのですが、栓抜きが要らなくて便利だという話に始まったアペリティフ。昨年のWAKAZEのお酒は、ワインのようにコルクで栓をしていたのですが、今年からスクリューキャップの機械を新規導入したというポイントが効いています! ラベルにキラキラと白いパールがかかり、その上に立体印刷された文字が美しい!とも。
「THE CLASSIC」に合わせたものは、柚子をまぶしたシェーブルチーズと、トリュフ入りのオルトランチーズ。お酒のフルーティーさが、あっさりめのチーズの旨味を引き立てます。友人曰く「いわゆる日本酒よりも、白ワインに近い印象で、果実味があって飲みやすい。でも奥の方でちゃんとお米の甘みも感じる」とのこと。この爽やかな酸味は、重めのメインディッシュの脂っぽさをスッキリ取り除いてくれそうです。

食前酒にピッタリ

「清酒」がダメなら「その他の醸造酒」、日本で作れないなら海外で、という既存のルールにとらわれない、WAKAZEのお酒造りへの情熱。世界で闘っていくため、食の都パリから発信することで得られる価値。WAKAZEは、フランスのみならず、世界という大きな目標を掲げ、まだまだ進化を続けていきます。
第二期の新しいお酒は、2020年11月20日より日本でも公式サイトで受付を開始。12月12日以降、全国の取扱店にて、一般発売開始です! フランスのテロワールを活かしたお酒を、日本で飲み比べてみるのはいかがでしょうか?

店舗名: WAKAZE三軒茶屋醸造所 + Whim Sake&Tapas
住所: 東京都世田谷区太子堂1丁目15−12
営業時間:
月 18:00-23:00
火 18:00-23:00
水 定休日
木 18:00-23:00
金 18:00-23:00
土 15:00-23:00
日 15:00-21:00
公式webサイト:https://www.wakaze.jp/

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書いた人

フランスで日本人の夫と共に企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育てしています。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速いです。 日々の仏蘭西生活研究ネタはコチラ https://note.com/uemma

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