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Jewelry&Watch

2025.03.01

日本の伝統工芸「輪島塗」とフランスの宝飾芸術が融合!ヴァン グリーフ&アーペルの国宝級ジュエリー「パピヨン ラケ」日本の美をまとった蝶の物語

幸運のシンボルである「パピヨン(蝶)」は、「ヴァン クリーフ&アーペル」にとって大切なモチーフであり続けてきました。
2004年、新たな試みとして蝶のクリップを日本の蒔絵が彩る「パピヨン ラケ」が誕生——輪島塗の漆芸家・箱瀬淳一氏による作品は世界を魅了し、約20年の歳月を経て、その芸術性はさらなる高みへ。
今回は、能登半島地震以前に制作された2023年の作品を、尾形光琳の名作「竹梅図屛風」との共演でご紹介します。竹林に舞う蝶が、幸福を運ぶことを願って…。

パピヨンのなかで融合した日仏の異なる文化が、新たな物語を生み出す

季節を感じさせるモチーフを繊細かつモダンに表現したデザイン。
〈上〉紅葉、松、いちょうの葉が、風に吹かれて集まる様子が描かれている。風を表す軽やかな線に、高度な技術が宿る。「パピヨン ラケ 吹き寄せ クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×YG]参考商品・〈下〉日本の国花であり、不老長寿を象徴する菊がモチーフ。花芯を彩るのは色の異なる貝殻。羽にはイエローとホワイトゴールドの粒状の箔が使われている。「パピヨン ラケ 菊 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×YG]参考商品(ヴァン クリーフ&アーペル)

蝶の羽の左右を大胆に使ったアシメトリーのレイアウトが、伝統的な蒔絵のイメージを覆す。
〈上〉紅葉と鹿を描いた秋の景色。赤、白、金の3色だけを用いて洗練された印象に。白の紅葉は、地のマザーオブパールを生かしている。「パピヨン ラケ 秋野 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×YG]参考商品・〈下〉昼と夜の景色を描いた現代的な作品。ビルは伝統的な市松模様をアレンジして表現された。「パピヨン ラケ 街 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×WG]参考商品(ヴァン クリーフ&アーペル) 

日本美術や工芸品に多く用いられる古典的なモチーフも、配置や色使いによって現代的に。
〈上〉尾形光琳の国宝「燕子花図屛風」を想起させるグラフィカルなデザイン。水面の煌めきは螺鈿によって繊細に表現された。「パピヨン ラケ 花菖蒲 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×YG]参考商品・〈下〉舞う蝶の残像までも描かれた幻想的な作品。羽の白い部分には、うずらの卵の殻を細かく砕いて使用している。「パピヨン ラケ 蝶 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×WG]参考商品(ヴァン クリーフ&アーペル)

歴史と伝統を再解釈した革新的デザインが、世界に漆芸の美を伝えて…

鼓は調和、鞠は幸福を願うモチーフ。極細の筆でいっきに引いた線が、作品に躍動感をもたらす。螺鈿の技法で埋め込まれた青く光る貝殻が、デザインのアクセントに。背景は、江戸時代に流行した麻の葉文様で、魔除けの意味をもつ。「パピヨン ラケ 鼓 クリップ」[漆×ダイヤモンド計0.23ct×MOP×WG]参考商品(ヴァン クリーフ&アーペル)

世界を魅了する漆芸家・箱瀬淳一氏が語る
「パピヨン ラケ」の誕生と 20年以上の歳月がもたらした進化

ものづくりの情熱がかなえた、奇跡のコラボレーション

石川県輪島市を拠点に、同地の伝統工芸である輪島塗の作家として、独自の表現を探求する箱瀬淳一氏。2004年、その作品がパリのハイジュエリーメゾン「ヴァン クリーフ&アーペル」の目に留まり、フランス宝飾の伝統と日本の漆芸の技術を融合させた「パピヨン ラケ」が誕生しました。

この奇跡のコラボレーションは、ヴァン クリーフ&アーペルの提案から始まったといいます。突然の話に戸惑いはなかったのでしょうか?

「ジュエリーを汚さずに作業できるのかが不安で、最初は難しい話だと感じました。しかし同時に、挑戦してみたいと思ったのです。新しい取り組みは新しい世界を見せてくれますから」

そう語る箱瀬氏は、以前から海外ブランドとの取り組みに興味をもっていましたが、決断を後押ししたのは、ヴァン クリーフ&アーペルのクリエイション統括部門の責任者で、のちにプレジデント兼CEOとなるニコラ・ボス氏の行動力と「単純にものをつくって売ることが至上命題ではない」というメゾンの驚きの理念でした。ボス氏は箱瀬氏が提案に前向きであることを知るとすぐに来日し、輪島市の工房へ。意気投合したふたりは、ともに仕事をしていくことになったのです。

創作の制限がいっさいない、自由を得た「蝶」が世界へ

「ニコラ・ボス氏の意向により、パピヨン ラケの創作に対しては制約がなく、何ごとにも挑戦できる環境で取り組むことができました」

具体的な作品制作について、箱瀬氏の話はさらに続きます。

「自身の作品づくりにおいて、何よりも重要なのはデザインです。あとは色彩の表現。パピヨン ラケの制作で苦労したのもデザインでした。かなり小さい面積にデザインを施さねばならないため、その構想に苦心したのです。また、色彩は左右で異なる表現にして、左右非対称に。そうしたデザイン観はメゾンと共通しているかもしれません」

苦労はあるものの、新作を発表するたびに世界中から寄せられる声が箱瀬氏の喜びに…。そのパピヨン ラケもついに46作を数えました。

「初期と新作のデザインを比べると、徐々にエレメントが組み合わさってきているという感覚をもっており、それに伴い、技術的にも緻密になってきていると感じています」

 新作はかつてないほど精度の高いデザインを追求したためにやり直しも生じました。それほどまでに愛情を注ぐパピヨン ラケ。幸福の象徴である蝶は、箱瀬氏に何をもたらしたのでしょう?

「フランスのエスプリです。日本の輪島で制作したパピヨン ラケをヴァン クリーフ&アーペルに送ると、作品への評価が戻ってくる。それはフランスの感受性をもらったようなもので、自身の作品づくりに影響を与えています」

 昨年の能登半島地震から1年以上、ヴァン クリーフ&アーペルはサヴォアフェールの保護に取り組むメゾンとして、箱瀬氏の工房に支援を行っています。

「伝統はつくり出すもの。未来を新たにつくっていけるよう、過去に学びながらも進化していきたいと考えています。私の活動が漆芸を守ることに繫がれば、これほど幸せなことはありません」

パピヨン ラケの物語は、次章へと続いていきます。

2004年に誕生した最初の作品のひとつ、「パピヨン ラケ KIKUMAKIE クリップ」(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション)。羽のベースの素材には、スネークウッドが使われている。

輪島市の工房で作品を制作する箱瀬氏。2024年の地震によって、ここも甚大な被害を受けた。復興への取り組みは今も続いている。

箱瀬淳一(はこせ じゅんいち)

石川県輪島市出身の漆芸家。1975年より蒔絵師・田中勝氏に師事し、5年間の修行ののち独立。蒔絵、螺鈿などの技巧を使い、現代的な漆芸の表現を追求している。ラグジュアリーブランドとの協働でも、世界の注目を集める。

「パピヨン ラケ」の制作工程を公開!
華麗な蝶を彩る「蒔絵」——その比類なき美しさの秘密

知れば知るほど奥深い!「蒔絵」制作の舞台裏へ


「パピヨン ラケ」の羽を飾る「蒔絵」。それは漆工芸における代表的な加飾技法のひとつで、その起源は奈良時代まで遡ります。平安時代に「蒔絵」と呼ばれるようになり、鎌倉時代に基本的な技法が確立されました。

蒔絵独特の美しい艶、立体的な装飾はどのようにして生まれるのでしょう? 塗、蒔絵、螺鈿の卓越した技法を自在に使いこなす箱瀬氏から、パピヨン ラケのメイキングを通して蒔絵の制作工程を学びます。

「パピヨン クリップ」はダイヤモンドもセッティングされ、ジュエリーとして完成した状態でフランスから箱瀬氏の工房へ。蒔絵を施すパピヨンの羽は、ホワイトやグレーのマザーオブパールでつくられています。
まず、羽に蒔絵のベースをつくっていきます。炭を塗って漆で固め、乾燥させて研ぐ(磨く)ことを2〜3回繰り返し、ようやく作業が始められる状態に。
次に、絵付け。とても重要な工程で、デザインを腰の強い筆で描いていきます。それが終わると、絵の下地づくり。約100分の3ミリの金銀粉を蒔き、蒔絵独特の凹凸をつくります。
ここでデザインによっては、卵殻や螺鈿などの装飾を加えることも…。それに用いるうずらの卵の殻は細かく砕いて漆の上に配置します。鶏の卵を使用しない理由は、殻が厚く、繊細な仕事に向かないため。螺鈿には夜光貝などが用いられます。
そして、蒔絵にとっては研ぎ出しという作業が非常に大切で、漆を固めては研ぐことを繰り返し、漆の層をつくっていきます。
仕上げは、絵漆と専用の筆を使って絵や文様を描く、上絵付けと呼ばれる工程。その後、艶出し仕上げを2〜3回行ってようやく完成に至ります。

ひとつを制作するのに約3〜4か月の期間を要する「パピヨン ラケ」。それは、身に纏うことのできる芸術にほかなりません。

1 蒔絵の下地づくりの工程。炭を固めた土台の上に漆を塗り、その上から微粒子の金銀粉を蒔く。それが固定されたら余分な粉を筆で落とす。この工程が蒔絵の美しい層をつくる。2 フランスから届いた「パピヨン クリップ」のマザーオブパールの羽の部分に漆を塗っていく。ジュエリーが小さいため、細い筆を使って作業が行われる。3 箱瀬氏が使用している漆芸専用の筆の数々。漆が硬いため、絵画用の筆は使用できない。腰の強さが特徴で、さまざまな太さ、形状の筆がそろえられている。4 蝶の図案に卵殻の技巧を施しているところ。細かく砕いたうずらの卵の殻をひと欠片ずつ、漆を塗った場所に配置していく。砕いた殻の形状もこだわって選択する必要があり、非常に根気のいる作業。5 仕上げの上絵付け。絵漆によって彩色され、線が引かれることで、作品全体に生き生きとした表情が生まれる。箱瀬氏はこうした線一本一本を大切にし、引きたい線に合わせて筆を選んでいるほど。

蝶が舞う竹林は、尾形光琳による「竹梅図屛風」

Image : TNM Image Archives

吉祥モチーフである「松竹梅」のうち、竹と梅を描いた屛風。金地に墨のみで大胆かつ簡潔に竹林が表現されている。これは竹を描いた第2扇。梅は第1扇で花を咲かせている。

「竹梅図屛風(ちくばいずびょうぶ)」 第2扇 重要文化財 尾形光琳 紙本金地墨絵屛風(2曲1隻) 65.2×181㎝ 18世紀・江戸時代 東京国立博物館

画像提供/ヴァン クリーフ&アーペル
画像編集/宇佐美政郁

※本記事は『和樂』2025年4・5月号の転載です
※文中のWGはホワイトゴールド、YGはイエローゴールド、MOPはマザーオブパール、ctはカラットを表します

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福田 詞子(英国宝石学協会 FGA)

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