たったこれだけしか残ってないなんて! フェルメールが「謎多き画家」と称される理由のひとつに、作品の少なさが挙げられるでしょう。画家として活動した約20年の間に描いたのは50数点。そのうち現存するものはわずか35点といわれています。また小さめの絵が多いのも特徴で、縦横50㎝前後がお気に入りだったよう。寡作で小品好き。それがフェルメールです。さて、現存する作品全35点をずらりと見て、お気に入りを見つけてみましょう。
ヨハネス・フェルメールとは何者?
ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は1632年に生まれたオランダを代表する絵画の巨匠です。彼が作品を描いた時代の風俗画には、作品の中のモチーフに寓意(物事にそれとなく意味をほのめかすこと)を込めることが多くありました。
例えば代表作のひとつ「水差しを持つ女」の水差しには、“純潔”や“節制”という寓意が込められたといわれています。そんな点からも、頭巾の白さにも同様な意味を感じずにはいられません。
ヨハネス・フェルメール「水差しを持つ女」油彩・カンヴァス 1664〜65年ごろ 45.7×40.6㎝ メトロポリタン美術館 Bridgeman Images/PPS通信社
「水差しを持つ女」に登場する女性のように、就寝時に白い頭巾を被るのは、17世紀の女性の典型的なスタイル。清々しい窓からの朝日を受けた頭巾の布には光が透過して、顔にもやわらかな輝きが映ります。
頭巾やケープなどの白さが強烈な印象。女性の物憂げな表情との対比も意味深です。フェルメールがこの構図にどんな意味を込めたのか、いろいろ想像してみると、作品の見方がまた変わってくるかもしれません。
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▼ 書籍『フェルメール全作品集: スタンダード・エディション』
フェルメールの代表作品を一挙紹介
1/35:マリアとマルタの家のキリスト
1654~56年頃 158.5×141.5㎝ スコットランド国立美術館
2/35:ディアナとニンフたち
1655~56年頃 97.8×104.6㎝ マウリッツハイス美術館
3/35:取り持ち女
1656年 143×130㎝ ドレスデン国立絵画館
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4/35:眠る女
1656~57年頃 87.6×76.5㎝ メトロポリタン美術館
5/35:窓辺で手紙を読む女
1658~59年頃 83×64.5㎝ ドレスデン国立絵画館
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6/35:小路
1657~58年頃 53.5×43.5㎝ アムステルダム国立美術館
7/35:士官と笑う娘
1658~59年頃 50.5×46㎝ フリック・コレクション
8/35:牛乳を注ぐ女
1660年頃 45.5×41㎝ アムステルダム国立美術館
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9/35:ワイングラス
1661~62年頃 67.7×79.6㎝ ベルリン国立絵画館
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10/35:ワイングラスを持つ娘
1659~60年頃 77.5×66.7㎝ アントン・ウルリッヒ公美術館
11/35:中断された音楽の稽古
1660~61年頃 39.3×44.4㎝ フリック・コレクション
12/35:デルフトの眺望
1660~61年頃 96.5×115.7㎝ マウリッツハイス美術館
13/35:音楽の稽古
1662~64年頃 74×64.5㎝ バッキンガム宮殿王室コレクション
14/35:青衣の女
1663~64年頃 46.6×39.1㎝ アムステルダム国立美術館
15/35:天秤を持つ女
1664年頃 39.7×35.5㎝ ワシントン国立美術館
16/35:水差しを持つ女
1664~65年頃 45.7×40.6㎝ メトロポリタン美術館
17/35:リュートを調弦する女
1662~63年頃 51.4×45.7㎝ メトロポリタン美術館
18/35:真珠の首飾りの女
1662~65年頃 56.1×47.4㎝ ベルリン国立絵画館
19/35:手紙を書く女
1665年頃 45×39.9㎝ ワシントン国立美術館
20/35:赤い帽子の娘
1665~66年頃 23.2×18.1㎝ ワシントン国立美術館
21/35:真珠の耳飾りの少女
1665~66年頃 44.5×39㎝ マウリッツハイス美術館
22/35:合奏
1665~66年頃 72.5×64.7㎝ イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館
23/35:絵画芸術
1666~67年頃 120×100㎝ ウィーン美術史美術館
24/35:少女
1666~67年頃 44.5×40㎝ メトロポリタン美術館
25/35:婦人と召使い
1667年頃 90.2×78.7㎝ フリック・コレクション
26/35:天文学者
1668年 50×45㎝ ルーヴル美術館
27/35:地理学者
1669年 51.6×45.4㎝ シュテーデル美術研究所
28/35:レースを編む女
1669~70年頃 23.9×20.5㎝ ルーヴル美術館
29/35:恋文
1669~70年頃 44×38.5㎝ アムステルダム国立美術館
30/35:ギターを弾く女
1670年頃 53×46.3㎝ ケンウッド・ハウス
31/35:手紙を書く婦人と召使い
1670~71年頃 72.2×59.7㎝ アイルランド国立美術館
32/35:信仰の寓意
1671~74年頃 114.3×88.9㎝ メトロポリタン美術館
33/35:ヴァージナルの前に立つ女
1672~73年頃 51.8×45.2㎝ ロンドン国立美術館
34/35:ヴァージナルの前に座る女
1675年頃 51.5×45.6㎝ ロンドン国立美術館
35/35:ヴァージナルの前に座る若い女
1670年頃 19.5×24.5㎝ 個人蔵
過去最大規模のフェルメール展!(会期終了しました)
現存する全35点(研究者によって見解が異なる)のフェルメールの作品のうち、日本での美術展史上最多となる9点がそろう大規模な「フェルメール展」が上野の森美術館で開催中。2019年2月16日からは、大阪市立美術館でフェルメール作品6点が公開されます。
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▼美術品といえばこの漫画!21巻ではフェルメールの作品も登場します。
ギャラリーフェイク(21) (ビッグコミックス)