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2017.04.18

金の京琳派・俵屋宗達VS銀の江戸琳派・酒井抱一。あなたはどっちがお好き?

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金と銀の背景

平安時代に始まるやまと絵のころから、金や銀は色彩のひとつとして使用されてきました。戦国時代から桃山時代に隆盛を極めた狩野派も金箔や金泥を多用した豪壮な画風でしたが、狩野派の金の使い方は水墨画の画題を金箔で飾り立てるという方向性でした。

それに対して、京都の町衆文化に育まれた本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)や俵屋宗達(たわらやそうたつ)に始まる琳派は、水墨画を基本にしながら、やまと絵の技法を取り入れ、華やかでデザイン性に富んだ画風を確立。金と銀の表現も狩野派とはおのずと異なり、金銀の箔や泥を大胆に背景として用いますが、それは単なる装飾にとどまりません。金や銀に岩絵具や墨画を重ねることによって、描かれた絵には華やかさと深みが加わります。

そして、空間の広がりや時間の隔たりを表す効果まで生み出し、画面に奥行きや深みを与えるようになりました。琳派の作品が多くの人の心をとらえて離さないのは、このような金と銀の背景の用い方が一因となっているのです。

宗達ならではの自由で大胆な筆使いを堪能
『蔦の細道図屛風』を読み解く!!

『伊勢物語』の東下(あずまくだ)りの段で、在原業平(ありわらのなりひら)が蔦の細道を心細く歩いている場面を描いた作品。主人公を描くことなく、物語を描き上げるという抽象的な表現方法も琳派画風の特徴のひとつ。右隻と左隻を入れ替えて置いても絵柄が続くという、計算し尽くした遊び心に、宗達の大胆さとデザイン性の高さがしのばれる。
DMA-074-075上段合成画像六曲一双 紙本金地着色 江戸時代(17世紀) 各159×361㎝ 重文 相国寺蔵

金地に緑青だけを用いているのに、色彩豊かに見える

墨の濃淡で表現する水墨画の技法によって、金の背景は落ち着き、新たな世界に到達。
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琳派の銀を代表する、抱一渾身の名画
『夏秋草図屛風』を読み解く!!

銀地に丹念に描かれたすすきや白百合、昼顔が風に吹かれ、雨に打たれている情景を描いた本作こそ、抱一の最高傑作。これは一橋治済(ひとつばしはるさだ)が所蔵していた光琳の『風神雷神図屛風』の裏に貼るために依頼されたもので、風神の裏に風にたなびく秋草、雷神の裏に夕立に打たれた夏草が描かれている。
DMA-074-075下段合成画像二曲一双 紙本銀地着色 文政4(1821)年ごろ 各164.5×181.8㎝ 東京国立博物館蔵

冷たく冴えた銀地は、月明かりに照らされた趣

江戸琳派の抱一は金よりも、銀の背景を好んで用いた。それは江戸後期の人々の好みに合わせたとされる。
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-2013年和樂10月号より-