出会った者を皆とりこにすると噂のトラりん。京都国立博物館の人気公式キャラクターです。2018年和樂2・3月号では、トラりん独占インタビューを掲載しました。今回は、そんなインタビューの様子を少しだけご紹介。チャーミングな姿と珠玉の名言をお届けします。
「トラりん」独占インタビュー
まずはトラりん、日本美術は好きですか?
トラりん:大好きだリン! 美術に詳しくなくても、おともだちになりやすいリン! ボクは日本美術を見始めてまだ2年足らず。知らないことも多いけど、「この景色、素敵だなぁ」とか「ここに描かれている人がかわいい!」とか、単純にワクワクして楽しいリン。ね、福士さん!
福士さんは京都国立博物館の研究員で、トラりんにとっては日本美術のよき師匠。本日も同席してもらいました。
福士研究員:日本美術って高尚で難しそうと思っている人も少なくないと思いますが、そんなことはないんですよ。今は世界的な日本美術ブームで、海外でも若い人の間でも、若冲や琳派の絵画が大人気。日本美術って、実はすごくモダンで斬新だったりするんです。トラりんのように無垢な目で向かい合うと、楽しみやすいかもしれません。
トラりんは「虎ブログ」で日本美術の勉強もしていますよね?
トラりん:作品が生まれた物語や時代背景を聞くと、その作品に愛が生まれちゃうリン!
トラりん自筆です!
トラりん:ボクの「虎ブログ」では、いろんなジャンルの研究員にお話を聞くんだ。絵や彫刻に隠されたひとつひとつのストーリーや、つくられた時代の話を聞くと、たくさんの人の想いがこもっていることが感じられて、自然と作品に対して愛が芽生えちゃうリン。
福士研究員:見て感じる魅力だけでなく、作品の背景を聞くともっと親近感がわくなんて、いい点に気づいたね。西洋美術にもそういう側面はあるけど、日本美術は背景や歴史がわかりやすいので、より共感しやすいし親しさを強く感じるのかもしれない。トラりん、「親しみ」や「共感」は、美術がもつ幸せ感のひとつだと思うよ。
日本美術のどういうところが好きですか?
トラりん:作品を通して昔の人の想いを受け取れるのが素敵だリン!
トラりん:ずっと昔の人たちが描いたものが時代を超えて残ったり伝わったりして、今の時代にいるボクたちがその作品から想いを受け取ることができるって、とっても素敵でうれしいことだリン!作品が、昔の人とボクたちをつないでくれているみたいだよね。
福士研究員:今、とても沁みることを言ったね…
トラりん:ちがう時代に生きている人どうしが、作品でつながれるリン。
トラりんがいちばん好きな日本美術は?
トラりん:どれかひとつなんて選べな…「竹虎図」で!
トラりん:光琳さんが「竹虎図」を描いてくれなかったら、ボクは生まれなかった。今ボクがここにいることにはきっと意味があると思うから、みんなに文化財の大切さや楽しさを届けられるようにガンバル!
トラりん的2018年注目の日本美術は?
トラりん:タイガー…タイガー…池タイガー…池大雅(いけのたいが)だリン!
トラりん:景色を描いた絵は静かなのに、人を描いた絵はトボけていてかわいくて、違う人が描いたみたい。そのギャップが面白いリン。
福士研究員:表現の違いに気づくとは鋭い! 18世紀の京都で活躍した池大雅は「山水画」と呼ばれる風景画が有名。いっぽうで、人物を描いたものには、思わず笑ってしまうようなゆるめの表現が多いんだよ。
トラりん:色もきれいだリン。
池大雅「瀟湘勝概図屛風」(部分)重要文化財 個人蔵。18世紀京都の画家、池大雅。山水を点描の水彩画で表した。
福士研究員:そのとおり、大雅の絵は明るく超ポジティブなのが魅力。それにはヒミツがあって、たとえば上の絵は屛風絵の一部だけど、大雅はこういう大きな絵を庭に出して太陽の光の下で描いたんだって。木の葉をさまざまな色の点々で描く「点描」という技法で、光や風の動きなど、目に見えないものまで表現したんだ。まさに「江戸の印象派」だね!