秋の季節はアートを楽しむのにぴったりですね!日本の美を感じることができる「花鳥画(かちょうが)」をご存知ですか? 実は意外な絵師も描いていたそうです。
花鳥画とは
「花鳥画」とは東洋画の伝統的な画題で花や鳥のたたずまい、またその遊ぶさまを多くは自然の景色のなかに描いたものです。(獣や虫も含むこともあります。)
数多くの絵師が描いており、今なお人々の心を惹きつけています!
ここで二枚の花鳥画を紹介します!
まず最初は切手にもなったことがある、花鳥画です。
タイトルは「月に雁」月夜に雁が三匹。月と雲と雁の構図が見事で、夜を表現している青が綺麗な作品ですね!
こちらは「紫陽花に鶏」限られた色数で紫陽花(あじさい)を描き、鶏を強調するすっきりとした画面構成が秀逸です。(colbaseより)
温かみを感じられる素敵な作品ですね。
作者はあの有名な絵師!
さぁ、ここでクイズです!二作品の作者は誰だと思いますか?
ヒントは風景画で有名な絵師です!
正解は
歌川 広重です!
風景画で有名な歌川広重ですが、膨大な数の花鳥画も残しています!
実は苦労人?
歌川広重は火消同心という今でいう消防士の家に生まれました。小さいころから絵を描くのが大好きだったのですが、広重が十三歳の時とき両親があいついで亡くなり、幼くして火消の仕事を継がなくてはいけませんでした。
十五歳のとき思い切って浮世絵師になることを決意し、歌川豊広の弟子になります。まさに火消と浮世絵師の二足のわらじでした!
才能のあった広重は翌年には流派をしめす「歌川」と「広重」という画家としての名前を名乗ることが認められましたが、なかなか人気は出ません。一念発起して二十七歳で浮世絵師に専念、三十五歳のころ『東都名所』という本格的な名所絵(風景画)を発表しましたが、売れたのは同時期に発表された北斎の『富嶽三十六景』でした。その二年後に代表作『東海道五十三次』が大ヒット! やっと人気絵師の仲間入りをすることができました。
歌川広重については詳しくはこちら
歌川広重が「風景画のエンターテイナー」である理由【カリスマ絵師10人に学ぶ日本美術超入門】vol.10
東海道五十三次とは
東海道五十三次は江戸と京都を結ぶ東海道の宿場町をえがいたシリーズです。広重は雨や霧などの天気の変化、その土地の名物、旅人や土地の人のようすなどを大胆な構図で描いています。また広重は、西洋の遠近法であった透視図法を正確に使いこなし、見たままのおだやかな風景を描きました。
広重の構図の凄さはこちらで読めます
元祖インスタグラマーは浮世絵師!?歌川広重の作品から学ぶ「映える構図」5連発★
広重は名所絵の成功と同時に花鳥版画にも取り組みはじめ、普及にも尽力し、素晴らしい作品を残したのです!そのほとんどが短冊型など小型な判型を用いています。安価に手に入れることができたのも支持を得た理由かもしれません。
風景画とはまた違う広重の魅力が花鳥画には詰まっていますね!
参考文献
『よんで しらべて 時代がわかる ミネルヴァ日本歴史人物伝 歌川広重―名所絵で名をはせた浮世絵師-』監修者、大石学・文、西本鶏介・発行者、杉田啓三 ミネルヴァ書房 2012年
『伝統の美がひかる!江戸時代の天才絵師 歌川広重』 監修、山下裕二 発行者、中村宏平 ほるぷ出版 2022年
『アート・ビギナーズ・コレクション もっと知りたい歌川広重 生涯と作品 改訂版』内藤 正人 東京美術 2024年
日本大百科全書
「月に雁」、「紫陽花に鶏」はColBase (https://colbase.nich.go.jp) より引用