都内でも有数の賑わいを見せる池袋から鉄道各線で2駅ほど、徒歩でも30分程度の場所に、緑豊かな住宅街があります。この閑静な地・目白台をたびたび賑わわせてきたのが、肥後細川家伝来のコレクションを保存・研究・公開している「永青文庫(えいせいぶんこ)」。確かな審美眼で収集されてきた名品と興味深い展示テーマで、美術・歴史・刀剣ファンから注目を集めています。
しかし近年、新型コロナウイルス感染拡大等の影響により、全国でも珍しい独立採算の美術館である永青文庫もまた、収蔵品の修理費用の確保が非常に困難となっています。
2021年、菱田春草『黒き猫』などの修理のために立ち上げた「文化財修理プロジェクト」(細川家伝来のコレクションを未来へ!「永青文庫」文化財修理プロジェクト第1弾)は、多くの賛同・支援を得て、修理が実施される見通しとなりました。
今回は名宝を未来に繋ぐ文化財修理プロジェクト第2弾、「史上最大のキリシタン一揆・島原の乱出陣の鎧|文化財修理プロジェクト」をご紹介します。
永青文庫とは?
肥後熊本54万石を治めた大名・細川家伝来のコレクションを保存、研究、公開している永青文庫は、細川家の広大な下屋敷跡(東京都文京区目白台)に佇む、東京で唯一の大名家の美術館です。
国宝8件・重要文化財35件を含むコレクションの総数はなんと9万点以上。ジャンルは武器武具・書画・彫刻・茶道具・能道具・歴史資料・古典籍など多岐にわたり、日本国内のみならず中国など東洋の美術工芸品も多くみられます。紀元前から近代まで、幅広い時代から収集されている点も特徴です。
南北朝時代の頼有(よりあり)を始祖に、現在の細川家は初代藤孝(幽斎、1534~1610)より戦国時代に始まりました。足利将軍に仕えた藤孝は、古今和歌集の秘伝を受け継ぐ屈指の文化人として知られます。さらに2代忠興は信長に仕え、信長から自筆の感状を受けるほどの武功を重ねました。また千利休高弟の一人としても名高く、明智光秀の娘・玉(ガラシャ)を妻に迎えたことでも有名です。
永青文庫は、およそ700年もの伝統が息づく細川家伝来の美術工芸品や歴史資料のほか、設立者・16代護立(1883~1970)の蒐集品を一般公開することで、細川家の歴史・文化の魅力を発信し続けています。
永青文庫 文化財修理プロジェクトとは?
所蔵作品の修理費用の確保が厳しい状況をふまえ、永青文庫が大切に伝えてきた作品を引き続き守り・公開し・未来へ繋げていくことを目的として立ち上げたプロジェクトです。現時点では世の中にあまり知られていない作品にも目を向け、修理とともに調査研究を進めていくことで、それらの価値を再発見し、広く発信していくことを目指しています。
<参考>第1弾プロジェクト:https://readyfor.jp/projects/eiseibunko_01
永青文庫館長・小松大秀氏コメント
日本の甲冑は、金工、染織、漆工などさまざまな工芸技術の粋を集めて作られていますが、それだけに傷みやすく、修理に充てる費用も増大しているのが現状です。今回、重ねてご寄付のお願いをするのはまことに心苦しいのですが、わが国独特の甲冑の美しさを後世に伝えていくため、みなさまの一段のご支援をお願い申し上げる次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
クラウドファンディング概要
永青文庫のクラウドファンディング、文化財修理プロジェクト第2弾のテーマは「細川家伝来の甲冑2領の修理」。島原の乱で実際に着用された細川家伝来の甲冑2領の修理を目指します。目標金額は1000万円。
修理費用を募る作品
永青文庫コレクションでも重要な位置を占める、細川家歴代当主の甲冑。これらは主に、三斎流と呼ばれる形式で作られました。武功を重ねた2代・忠興(三斎 / 1563~1645)の経験から生み出され、戦国時代末の実戦に対応するため、軽量に仕立てられています。存在を誇示する山鳥の尾羽を束ねた頭立(ずたて)も特徴です。今回修理を予定している甲冑2領も三斎流形式で、現在は経年による損傷も激しく、形状を維持するのが難しくなっている状態です。 <主な修理必要箇所>兜、胴、籠手、佩楯、鎧立
【1】3代 細川忠利所用『銀札啄木糸射向紅威丸胴具足』 江戸時代(17世紀)
3代・忠利(1586~1641)は、晩年に島原の乱に出陣し、乱の鎮圧に大きな戦功をあげました。本甲冑は、その際に着用したと伝わります。
今回の修理では、細川家にまつわる武具類を描き写した『御甲冑等之図』内の図様に則り江戸時代の姿へ戻す方針です。威糸の啄木糸を再現して付け替える等を計画しています。
【point!】 返礼品では、組紐の老舗[道明]にて、甲冑に再現する啄木糸を「甲冑組紐マルチストラップ」に仕立てます。
【2】4代 細川光尚所用『栗色革包紫糸威二枚胴具足』江戸時代(17世紀)
4代・光尚(1619~49)が19歳の時に、父・忠利とともに島原の乱に出陣した際に用いたと伝わります。
現在も製作当初のまま残っている部分は維持を図り、欠損部分は新たに補いながら仕上げる計画です。
募集期間
2023年2月28日(火)~5月8日(月)23時
支援コース
3,000円~50万円まで10コース