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2020.06.03

百発百中の占い師?水野南北と街頭占い50年のプロから、運気UPの秘訣を学ぶ!

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「黙って座れば、ぴたりと当たる」といっても、「新宿の○○」などではない。本家本元は、江戸時代の占い師・水野南北(みずのなんぼく)である。水野南北は、人相学の大家として生涯をまっとうしたが、かつては酒や博打、けんかに明け暮れた無頼者であった。投獄され、牢屋の中で気づいたのは人の運命と人相の関係。以来、粗食により運勢をガラッと改善したというわけだ。水野南北の物語は、今を生きる私たちの道しるべとなりそうだ。

なんだかツイてない、毎日サエないという方は、「食」を見直して運を変えよう。

黙って座れば、ぴたりと当たる!?

水野南北を描いた、『だまってすわれば』という小説がある。タイトル通り、水野南北の占いは百発百中だったという。占いをして悪い結果が出ると、「食を見直すべし」と指導し、多くの人を開運に導いたという。自らも粗食により死相を変え、運命を変えた。水野南北は、「食」を開運法として最重要視していたのである。

水野南北の著書は、江戸時代のものから、現代語に訳されたものまでが販売されており、『南北相法 修身録』(東洋書院)が読みやすい。

平易な解説文にイラストを交え、人相の見方を解説しつつ、精神論として「人知れず徳(陰徳)を積み酒食を慎むことで運を開く」ことの重要性を説いている。不遇の幼少期を経て荒くれ者となり、「死相が出ている」とまで言われたのに、禅寺の住職に「1年間米飯を口にせず、 麦と大豆のみで過ごせたら入門を許す」と言われ食を見直したところ死相が一変し、運勢も改善。そんな水野南北の生きざまから学ぶべき点は多い。

具体的なテクニックが披露されているが、「男性器が下の方に反る人は、妻子との縁が薄く、妻との縁が変わるでしょう」など、「マジ?」と驚く内容もあり、おもしろく読める。

本書には、裁判所書記を経て占い師となり、日本開運学会を設立した横井伯典(はくてん)氏が文章を寄せている。序文に、「南北の容貌は醜悪だったらしく、本人の述懐にも、わが容貌について《背ハ低ク、顔貌セセコマシク、口ハ小サク、眼ハケワシク落チクボミ、印堂(眉と眉のあいだ)狭ク鼻低ク、頬骨ハ高ク、歯ハ短クスクナシ。マタ、足小サシ》」とある。かなりの言い様であるが、水野南北は人からはバケモノと呼ばれたと語るほどの容貌であったらしい。これを「少食」により改善し、死相さえも消えたというから驚く。

横井氏はすでに死去しているため、取材することができなかった。現代語訳を担当した水沢有氏には、実は対面で占いをしてもらったことがある。余談だが、2ちゃんねるの「ゲイが頼れる占い師in東京!」という名物スレッドでも腕前が絶賛されていたが、現在は占い師として活動していないとのことで、残念ながら取材不可。

街頭占い50年の天童春樹氏に聞く

そういえば、高知の天童春樹(てんどう・はるき)氏も伝説的な人相見である。作務衣を着て、街の一角に台を出し、「占い」などと書いた行灯を掲げるクラシックな街頭易者スタイルである。易占も行うが、主に人相や手相を使い、約50年、延べ10万人を鑑定したベテランだ。

高知市の帯屋町のアーケードで鑑定(19時~22時) ※新型コロナウイルスの影響により変更の可能性も

天童氏の講座にも、1日だけ参加したことがある。半紙に墨で漢字の「一(いち)」を書き、そこからお告げを読み取る「墨色一文字占い」だ。「墨色占い」「墨色判じ」などとも呼ばれ、江戸時代から行われているが、なかなか摩訶不思議で難解な占いである。ある人に、「半紙に一と○(いちとまる)を書かせて運命を透視する『いちまる先生』という占い師がときどきやってきて占ってくれた。的中率ほぼ100パーセント」と聞いたことがある。ここまでくれば、占いというより霊感の領域なのだろう。

天童氏に相談したところ快諾、電話取材と相成った。

感染症のまん延は試練の一つ

温かな人柄だが天童氏の眼光は鋭い

――天童先生、墨色一文字占い講座ではお世話になりました。

天童氏:人相見だから、顔を見れば思い出せるんだけどねえ!

私は高校のころから、水野南北先生を含め、人相の本はたくさん読みました。江戸時代と現代とで食事情が違うので、私たちが水野南北先生のような少食を目指すのは現実的ではありませんが、食べすぎや偏食をやめ、野菜でも肉でもバランスよく食べることは有効です。

――天童先生も、粗食や肉食をしないなどを心がけていますか?

天童氏:まさか、そんなことありませんよ。何より大事なのは、すべてのものに感謝して食べることです。感謝の気持ちは、食以外にも通じます。

水野先生は、体を張って少食開運法を体得なさいました。今の私たちが本を読めば開運法を知ることができることもありがたいですね。水野先生の本だけでなく、占いや開運法の本は難解なので文字だけ追いかけても理解はできません。水野先生などの筆者の魂を感じながら、感謝して読み、実践あるのみです。

それから、世界平和も感謝の心から。この世界は生きている人のものだけでなく、死者の世界からの影響もあります。霊的な世界は信じなくてもいいので、存在は感じてほしいですね。自分が今いるのは、両親、祖父母……と連なる無数の先祖のおかげです。こうした存在へ感謝することを心がけましょう。人づき合いの基本としてあいさつも大事です。食を見直すことと、感謝の気持ちを持つことで、人相が良好になり必ず運が開けます。

――新型コロナウイルスへの恐怖もあり、生きづらい世の中になりました。先生の視点でアドバイスをお願いします。

天童氏:易や易占いでは、陰陽のバランスを重視します。疫病のまん延は、便利さを追い求めて物質主義に走りすぎたことによる、自然の報いだと思っています。食の軽視や環境破壊など、反省すべき点は多いです。私は毎年、国家の運勢を占っており、このような事態はある程度予想していました。

天童先生、含蓄に富んだいい話をありがとうございました。あとは、一人ひとりが「自分だけよければいい」という気持ちを改め、食の恵みを与えてくれる自然に感謝し、奉仕や調和の心をもって生きていきたいですね。易(断易)において食は「財」の星であり、「食を見直せば開運する」という考えにつながる。また、最近注目されているのが「腸内フローラ」。腸内には細菌がフローラ(花畑)のように分布し、食べたものを消化吸収し全身に巡らせるので、食事が偏ると健康に悪影響となることが報告されている。

いにしえの占い師が命をかけて探り当て、連綿と受け継がれた食養生理論に科学の光が当たり、正しさが証明されつつある――食は運命を左右する!

◆取材協力=天童春樹(てんどう・はるき)
旧名は天道春樹。高知県生まれ。高校時代から人相や易占などの占い研究をはじめ、高校卒業後から高知市の街頭易者として約50年。高知、東京、大阪であれば出張鑑定も可(鑑定料は良心価格)。近著は、『人生を豊かにする人相術』(説話社)
公式サイト:http://wwwe.pikara.ne.jp/tendou-haruki/

アイキャッチ画像:鳥文斎栄之、シカゴ美術館蔵

書いた人

出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。民謡、盆踊り、俗信、食文化など、人の営みや祈りを感じさせるものが好き。四柱推命・易占を行い、わりと当たる。