人が大事な話をしているときって、なぜかちょっといたずらしてみたくなりますよね。平安貴族の中にも、緊張感漂う雰囲気の中いたずらした男がいました。なんとその男は、大事な会議中にアソコを丸出しにしたのです!
いたずらにしては度が過ぎるぞ、平安貴族!どうでもいいかもしれませんが、宮中で起きた「アソコ丸出し事件」の顛末をご紹介しましょう。
『今昔物語集』に記録された、丸出し事件
事件の様子は『今昔物語集』28巻25段に記録されています。
話はこうです。藤原実資(ふじわらのさねすけ)というエライ人が、宮中で大事な会議を行っていました。そこに同席していたのが、藤原範国(ふじわらののりくに)という男。重々しい空気が漂う中、範国はこんな光景を目撃したのです!
源顕定と云ふ人、殿上人にて有りけるが、南殿の東の妻にして、まらを掻き出す。
訳:源顕定(みなもとのあきさだ)という殿上人が、南殿の東の端にいて、まらを丸出しにした。
これを見た範国は、おかしくてたまらず吹き出してしまいます。しかし、エライ人からは顕定が丸出しにしている様子は見えません。さて、この後怒られるのは範国と顕定、どちらでしょう?
天皇に報告されてしまった!
「大事な会議中に笑うとは何事だ!」 範国はエライ人から叱責されてしまいます。その上天皇にまで報告されてしまったからたまりません。しかし、「顕定がまらを出していたから笑いました」と言うわけにもいかず、ただただ困り果ててしまったのです。
この様子をうけ、本文には以下のように書かれています。
顕定の朝臣は、「極めてをかし」とぞ思ひける。
訳:顕定は、おかしくてたまらなかっただろう。
笑わせた相手が怒られていても、いたずらをした張本人は知らんぷりを決め込むもの。ここでも、まらを出した顕定ではなく、思わず吹き出した範国が怒られてしまいました。
「いたずら」はTPOをわきまえて
丸出し事件は、以下のように結ばれています。
折節しらぬ由無き戯れは、すまじき事なり、となむ語り伝へたるとや。
訳:時と場所をわきまえないいらずらはしてはならない、と語り伝えているそうだ。
アソコ丸出しは、平安時代でも度が過ぎたいたずらだったようです。ちなみに、丸出しにした源顕定は親王の子で、かなり良い血筋の貴公子です。平安貴族がちょっと身近に(?)感じられるエピソードでした。