Culture
2021.05.02

クイズ!20世紀最速の市販二輪車は何?90年代の最高速度争いにこんなバイクが登場していた!

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1999年を迎えたばかりの頃、各国のモータージャーナリストはとあるマシンのせいで多忙を極めていた。

最高速テストができるサーキットをどうにか予約したい。いや、公道でそれができるなら役所と掛け合ってどうにか押さえろ。申請書類が必要だって? だったら早くそれを作れ! 他誌に先を越されてはいかん!

編集長が興奮するのも無理はないだろう。日本の静岡県に本社を構えるスズキという二輪メーカーが、未だ実現していなかった「最高速度300km/hの市販車」を発売したというのだ。レーサーではない、市販車である。誰しもがその公表を疑った。単に誇張しているだけではないのか?

しかし、それは誇張ではなかったのだ。

夢の300km/h

90年代の二輪車業界は、カワサキとホンダ、そしてスズキの三者間で「最高速度戦争」が繰り広げられていた。

1990年発売のカワサキZZR1100は、夢の300km/hが現実のものになるのではと思わせたマシンだ。実測270km/h超を発揮し、それでいて良好な操縦性のツアラーとして、今でも根強い支持を集めている。

ZZR1100は6年間もの間、最高速度の王座を守り続けた。が、他社のエンジニアは単に指をくわえていたわけではない。1996年、ホンダからCBR1100XXスーパーブラックバードが発売された。アメリカ空軍の戦略偵察機SR-71ブラックバードから名前を拝借したマシンだ。

CBR1100XXは300km/hの壁を破ることはできなかったが、それでもZZR1100を上回る数字を発揮した。そしてこの瞬間、世界最速の市販車の座はCBR1100XXに移ることになる。

が、スズキの本社では既に「アルティメットスポーツ」の開発許可が下りていた。

EUの交通当局を震撼させた!

スーパースポーツを超えるアルティメットスポーツを具現化する。

ただしこれは、レースに出場するためのマシンではない。この当時、既にTL1000Rという市販車レースを念頭に置いたマシンが別に開発されていた。このTL1000Rというマシンを知っている人は、中古車店のスタッフかスズキマニアのどちらかだろう。市販車レースのレギュレーションに合わせて設計されたVツインリッターマシンである。

が、TL1000Rより1年遅れて発売されたGSX1300R HAYABUSAは、バイクに乗らない人にもその名が知られている。漢字一文字で「隼」と書けば、「ああ、あれか!」と頷く人もいるはずだ。

隼は、スポーツツアラーというジャンルに絶大なインパクトをもたらした。

まず、最高時速。300km/hの壁を見事に打ち破り、「20世紀最速の市販二輪車」としてその名を刻むことに成功した。それはEUのモータージャーナリストどころか交通当局の責任者をも震撼させてしまった。

300km/hはあまりに危険過ぎる!

そう指摘された二輪メーカー(スズキだけではない)は、2001年以降の新車から300km/hを超えないスピードリミッターを搭載した。さらに、速度計に300km/hの目盛りを表示しない自主規制まで実施した……というより、せざるを得なくなった。

隼はツーリングの相棒

が、それ以上に重要な要素を隼は持っている。

このマシンはツアラー、つまりツーリング用途のバイクだ。そうである以上、一般ライダーにとっても乗りやすいものでなければならない。

実際、隼には「乗りやすい」という定評がある。このあたりも、上述のレーサーTR1000Rとの普及度、販売面での明暗を分ける要素になった。

土日の浜名湖周辺に行くと、割と頻繁に隼を見かけることができる。ここは全国有数のツーリングスポット。筆者もスズキSV400Sに乗ってたまに出かける場所だ。さすがに隼相手に、SV400Sが加速力で敵うはずがない。筆者を悠々と追い越すその後ろ姿は、まさに隼である。

獲物を狩る時の隼は、約300km/hで急降下する。だからこそ、マシンにこの名が与えられたのだ。

そして今年2021年、隼に転機が訪れる。実に13年ぶりのフルモデルチェンジが発表され、さらに2017年以来の国内ラインナップ復帰も明らかになったのだ。

隼の物語は、まだまだ続く。

【参考】
『モトレジェンドVol.7 スズキGSX1300R HAYABUSA編(三栄書房)』
Hayabusaスペシャルサイト スズキ