断末魔の叫び、などという表現を小説や漫画などで見かけたこと、ありませんか? だいたいちょっと怖い場面だったりします。
それもそのはず、息を引き取る間際、あるいはその際の苦しみのことを「断末魔(だんまつま)」と呼びます。
でも、「断末魔」ってなに? どんな魔物なのでしょうか?
調べてみると、まったく想像もしていなかった語源だったんです!
断末魔は魔物じゃない!その由来とは?
魔物の一種かと思いきや、実は魔物とはまったく関係のないもの。しかも、断末の魔物ではなく、末魔を断つ、だったのです。
末魔とは古代インドのサンスクリット語marmanを音訳したもので、「死節」や「死穴」と訳されます。体内にあるごく小さな特殊な急所で、これが分解して苦痛を生じ、死に至ると考えられていました。また、なにかがここに触れると死んでしまうとされます。
この末魔という急所を断つ、というのが断末魔の語源でした。
ちなみに「断末摩」という別の漢字表記もあります。
ちょっと変わった「断末魔」
本来の意味そのものではないのですが、ちょっと変わった断末魔関連、ご紹介いたします!
断末魔の念仏?
死苦から逃れるために、不動明王の呪文の護符(ごふ)を首からかけて行う念仏法があります。平安時代中期の高僧・恵心僧都(えしんそうず)が始めたとされる「断末魔念仏」というもので、100日に100万回の念仏を唱え、病気で亡くなるときにこの護符を飲むのだそう。
不動明王の呪文は主に3種類あるのですが、このときに唱えるのは、1番長くて複雑なもの。これを100万回、と考えると、その大変さがちょっと想像できるような気がします……。
断末魔という人
断末魔、という名前を持つ人が安土桃山時代にいました。
本名ではないのでしょうが、名人と評された能面師で、主に狂言の面を作っていたと伝わっています。
どうしてこの名前を名乗ったのか、いろいろ想像がふくらみますね。
アイキャッチ画像:『不動明王像』メトロポリタン美術館より
参考文献:
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『故事俗信ことわざ大辞典』小学館
・『日本人名大辞典』講談社