尾花(おばな)、という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ときどき競走馬のしっぽにつけられている赤いリボン、あれが「尾花」?
いえいえ、植物の名前です。
これからの季節に見られる、とても風情のある花なのですが、さて何でしょう?
正解は、すすき!
正解は、秋の七草の1つ「すすき」。
すすきの花(穂)の形が動物のしっぽに似ていることから、この別名が付けられたとされます。
※異説に「ヲバナ(招花)」や「ホバナ(穂花)」を語源とするものもあり。
ちなみに競走馬のしっぽの赤いリボンは、「蹴るかもしれないので、後ろに近づかないでくださいね」というサイン。おしゃれでかわいらしいですが、ゴルゴ13のような警告だったのですね。
着物の色の取り合わせにも「尾花/花すすき」と名付けられたものがあり、表は白、裏は薄縹(うすはなだ。薄く明るい藍色)という、淡く美しい色彩です。
尾花を食べる!?
今ではあまり食用のイメージはないであろう、すすき。
ススキの穂を黒焼きにしたものをお粥に混ぜた「尾花粥(おばながゆ)」という食べ物がありました。
宮中で疫病除けとして旧暦の八朔(はっさく・8月1日)に食べられていたものが、江戸時代に民間にも伝わっていき、後に早稲(わせ)を黒焼きにしたものや黒ごまを用いることもあったのだとか。
尾花栗毛
馬の毛色に、尾花栗毛(おばなくりげ)というのがあります。茶色の体毛に白っぽいたてがみと尾を持つ、とても美しい毛色で、尾がまるですすきの穂のように見えることから名づけられました。競走馬ではトウショウファルコやタイキシャトル・ゴールドシチーなどが特に有名でしょうか。
また、少し似た毛色に月毛(つきげ)というのもあります。ごく薄い茶色の体毛に、体毛と同色、あるいはそれより白っぽいたてがみや尾を持った毛色もあり、西洋ではパロミノと呼ばれます。戦国武将・上杉謙信の愛馬にも月毛の馬がいました。
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なお、現在ではほとんど耳にしないのですが、「尾花葦毛(おばなあしげ)」という馬の毛色も平安時代~江戸時代の文献に見られます。全身の体毛が年齢とともに次第に白っぽくなっていく葦毛のうち、たてがみや尾と四肢が白に薄い黒の混ざった色をしているものを指していました。
アイキャッチ画像:鈴木其一「Young Nobleman Crouching beside His Horse(原題不明)」メトロポリタン美術館より
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参考文献:
・『日本国語大辞典』小学館
・『国史大辞典』吉川弘文館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『小学館 全文全訳古語辞典』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・JRA公式サイト・競馬用語辞典(https://jra.jp/kouza/yougo/index.html)