江戸時代の人々に大人気だった浮世絵。なかでも江戸の遊郭「吉原」は、絵師たちがこぞって題材にした場所です。才色兼備な高級遊女は憧れの存在で、江戸の流行にも影響したからかもしれません。
この紙の名前は?
吉原の遊女の浮世絵で、紙をくわえている姿をよく見かけます。さて、この紙はなんと呼ばれたでしょうか。
答えは……。
御簾紙(みすがみ)
遊女が客との寝間へ向う時に持参した高級紙で、御簾(みす・宮殿や神殿などに用いるすだれ)の如く透き通っているからこの名前になったとも言われます。事後処理用に使用されたようですが、当時の紙は貴重品でした。こんなところにも、夢の世界を演出する工夫があったのでしょう。
「冷やかし」という言葉がありますが、この語源も遊女と紙が関係しています。遊郭の近くで作業中の紙すき職人が、紙の材料を水で冷やしている間が暇なので、遊女をからかったり、品定めをしたりしていました。知らずに遊女が声を掛けると、遣手婆(やりてばば・元締め役の中年女性)が、「冷やかしてんだよ」と、原料を冷やしている最中だから相手にするなと教えたのだとか。そんなことから買いもしなくて覗くだけのことを、冷やかしと言うようになったそうです。
▼吉原遊郭についての詳しい記事は、こちらからどうぞ
隣に美女が寝ているのに、何もできない!遊郭吉原・蛇の生殺しシステム「名代」とは
参考書籍:『吉原遊郭のすべて』双葉社 『日本大百科全集』小学館
アイキャッチ:歌川国貞 国立国会図書館デジタルより