得意の絶頂、大得意になる、という意味の「有頂天(うちょうてん)」。なんとなく周囲の冷ややかな視線も見えてきそうですが、そもそもそんな状況になれること自体がとても羨ましいなあ、なんて、恥の多い生涯を送ってきた私は思ってしまいます。
しかし、ここで疑問が。得意の絶頂にあるのに、頂点が見えてしまっている? 頂点がどこにあるかすら分からない、というほうがイメージに近い気がするのですが。
ということで、「有頂天」の意味と語源を調べてみました!
「有頂天」の意味
「有頂天」の意味を、改めて確認してみましょう。
1、得意の絶頂にあること、大得意になること。
2、物事に熱中して夢中になること。我を忘れること。また、夢中になってその他のことを顧みないこと。
夢中になる、我を忘れる、という意味もあったのですね!
なぜ「頂点」が「ある」? 「有頂天」の真実
では、本題に入りましょう。「有頂天」にはどんな語源があるのでしょう?
「有頂天」の語源はこれだ!
仏教の世界観で、仏界を除く最高位の世界、形ある世界のトップ、それが「有頂天」です。
欲界・色界(しきかい)、無色界を「三界(さんがい)」と呼びますが、三界は有(う)ともいいます。この「有」の最高位にある非想非非想処天 (ひそうひひそうしょてん)あるいは色究竟天(しきくきょうてん/阿迦尼吒天[あかにだてん]とも)こそが「有頂天」なのです。
なるほど! 「有」の「頂き」にいる「天」、だったのですね!(そういえば頂「点」ではなく、頂「天」でしたね……。)
修行を究めた人がこの天に昇ることができるとされるのだそうですが、やっぱり少し皮肉めいた響きを感じるのは、私の気のせいでしょうか。
▼「天」についての詳細は、こちらの記事で。
あなたの推しは誰? ユニークで人気者ぞろいの「天」【美仏鑑賞が100倍面白くなる!その5】
「有頂天」いろいろ
「有頂天」にはいくつかのバリエーションがあります。基本的な意味は同じですが、ぜひ言い回しの妙を味わってみてください。
有頂天になる
物事に熱中し、夢中になる。無我夢中になる。
極度の喜びを表す表現で、三界中の色界の最高位である色究竟天になる、という意味。
有頂天に上(のぼ)り詰める
いい気になって、すっかり夢中になる。「有頂天になる」と同じ。
有頂天へのぼす/有頂天へ釣り上げる
相手を無我夢中にさせる。
有頂天外(うちょうてんがい)
有頂天の外。非常に夢中になって、我を忘れること。
▼こんな「ウチョウテン」も!
ハンバーグが絶品! 野村万之丞のお気に入り「ウチョウテン」へ【狂言プリンス「笑い」の教室】 vol.3
アイキャッチ画像:魚屋北渓(ととやほっけい)『恵比寿大黒図』メトロポリタン美術館より
参考文献:
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『デジタル大辞泉』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『故事俗信ことわざ大辞典』小学館
・『例文 仏教語大辞典』小学館
・『新選漢和辞典 Web版』小学館