Culture
2019.10.04

東京都鍼灸師会の青年部主催「お灸フェス@墨田区江島杉山神社」レポート!

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2019年9月23日、両国駅から徒歩10分ほどの神社で「お灸フェス」が行われました。鍼灸って日本の文化ですが、詳しいことはまったくわかりません。そんな知識ゼロ状態での参加でしたが、尊い学びの連続でした。奥深いお灸の話を皆様へ。

神社と鍼灸のコラボ「お灸フェス」

お灸フェスとは、東京都鍼灸師会の青年部が主催する「お灸を通して鍼灸を知ってもらうイベント」とのこと。2016年に東京での開催がはじまり、2019年で4回目となります。

会場は、墨田区の江島杉山(えじますぎやま)神社。神社の境内どころか、普段は入れない本堂に会場を設置してフェスが行われます。これだけでもすでにありがたく、ご利益がありそうな感じです。

「お灸フェス」はこんな感じでした

最初は、鍼灸専門学校元教員の古海博子先生による講話です。

「お灸は熱い、鍼は痛いというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。半年に1回ぐらいを目安に通うと、病気や不調が深刻になる前に気づくことができます。東洋医学には、病気になる前段階を指す『未病(みびょう)』という概念があります。鍼灸治療では、未病のうちにトラブルを発見し、適切な養生をすることで健康を維持できます」というお話が印象的でした。なんとなく不調だけど病院に行くほどでは…というときこそ鍼灸の出番なのでしょうね。

その後は、お灸体験。この日の参加者は、鍼灸師、鍼灸学校の学生、一般の方という分類。鍼灸師を中心にいくつかのグループに分かれます。同じグループになった人にいろいろ話を聞いてみました。「この道ひと筋何十年」というベテラン鍼灸師や「50歳になったタイミングで手に職をつけようと、資格を取ったのよ」という主婦もいれば、「よくお参りする神社なので、何気なく参加しただけ」という若い女性もいましたが、みんな意欲的に体験していました。ほかのグループには80歳越えの鍼灸師もいて、皆さんお元気で肌ツヤも抜群。「こういう仕事だから、定年もなくいつまでも仕事を続けられます」という頼もしいコメントも聞こえてきました。

体験では、同じグループの鍼灸師が、実際にお灸を据えるツボを探り当ててくれます。

何気なく使った「ツボ」という言葉ですが、人体に流れるエネルギーの通路(経絡:けいらく)の要所にあるポイントのことなんですって。そして、「この症状にはこのツボ!」という決まりはなく、答えはいくつもあるらしい。私は、初心者向けの万能ツボである合谷(ごうこく)という人差し指と親指の骨が合流するあたりのツボをおすすめされました。指で押すと「ジーン」とくる、例のポイントです。右手だけにお灸を置くと…なぜか左手まで何らかのエネルギーが巡ってくる! 鍼灸師は、「あなたはきっと巡りがいい体質なのよ。お灸をすると、効果が出やすいと思いますよ」と教えてくれました。それ本当ですか。これをきっかけにお灸、はじめてみたいな。

使ったのは、裏面がシールになったお灸。

現在は、このように使いやすいお灸がさまざまなメーカーから市販されているそう。ライターで着火してから、肌に貼り付けるだけと簡単です。

ここは世界初の視覚障がい者教育所

「お灸フェス」会場の江島杉山神社、ちょっと変わった名前だと思いませんか。実はここ、鍼灸師にとって聖地的な存在なんです。

「お灸フェス」のトリは、ある人物をテーマにした講談。講談師は、声優でもある一龍斎春水(いちりゅうさいはるみ)さん。『宇宙戦艦ヤマト』の森雪の役や、『シティハンター』の野上冴子の役で知られています。

「伊勢の国に生まれた杉山和一は幼いころに伝染病により失明し、鍼術の道へ入る。江戸の鍼打ちの名人である山瀬琢一に弟子入りするが、不器用で破門となってしまう。江ノ島の弁財天で祈願をするがご利益もなく入水しようとしたとき、何かが足の裏に刺さる。見ると、枯れ葉に包まれた松葉であった。チクチクする松葉を触っているうちに新しい鍼療治を思いつき、江戸へ戻り開業すると大繁盛。将軍お抱え鍼医となり、褒美として本所一ツ目に屋敷を与えられた」

あらすじはこんな感じ。

その屋敷の跡地に建つのが、現在の江島杉山神社というわけ。杉山和一は、この地に世界初といわれる視覚障がい者のための教育施設「杉山流鍼治導引稽古所」を開き、江ノ島から弁財天を勧請しました。現在、境内に「杉山和一記念館」が建てられ、その上には鍼灸院まで。小さな池のほとりに建造された江ノ島弁天岩窟を模したものは、中に入ることもできます。こぢんまりとした境内ですが、見どころたっぷりで散策が楽しい神社なのです。

お灸、さあどうやってはじめる?

このように「お灸フェス」のおかげで、鍼灸とはとても奥深く、いいこと尽くめなものであることはわかりました。では、どうやってはじめましょう。主催者の秋元良公さんに聞いてみました。

「自分の家から通いやすいところが良いですね。ネットの口コミなどを参考にしながら、実際に足を運んで、まずは3回通ってみてはいかがでしょうか。鍼灸師の数だけ治療方法があります。自分に合う先生を自分の足で探しだしてほしいですね。それから、日本鍼灸師会、各都道府県の鍼灸師会に加入しているところだと安心だと思います」

江島杉山神社では、お灸と落語のコラボイベント(2019年10月14日)など、今後も続々とイベントを企画中。下調べの上、参加してみてくださいね。

参考リンク
(公社)東京都鍼灸師会
江島杉山神社

書いた人

出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」創業。著書に『入りにくいけど素敵な店』『似ている動物「見分け方」事典』など。民謡、盆踊り、俗信、食文化など、人の営みや祈りを感じさせるものが好き。四柱推命・易占を行い、わりと当たる。