古代中国の発祥で、遅くとも鎌倉時代には日本に伝わったとされる「盆栽」。足利義政や徳川家光などの権力者から無名の庶民まで、古くから多くの日本人が盆栽の虜になり、現代では海外でも愛好家を増やしています。
今回紹介するのは、その盆栽をモチーフにして大胆にアレンジして生まれたゲーム「BONSAI UCHU」(JUGAME STUDIO制作)です。
「BONSAI UCHU」をざっくり説明すると
2人で対戦し、厚紙でできた長方形の葉札と枝札を巧みに組み合わせて、相手よりも優れた盆栽を作り上げるのが、ゲームの目的です。プレイ時間は30分ほど。ルールもさほど難しくなく、すんなり入っていけるでしょう。
ゲームの途中で、育てた盆栽を交換し、そこからまた盆栽の育成を続けるというユニークなルールがあるのが、大きな特色となっています。
ゲームの要となるのは多数の札
「BONSAI UCHU」で要となるのが、多数の札です。葉や花を表す28枚の葉札と、枝を表す16枚の枝札、くわえて4枚の初期枝札と3枚の添配札があります。これらをつなげていくことで、盆栽が出来上がっていきます。
このうちゲーム開始時に持っているのは、初期枝札1枚だけ。これを鉢札につなげ、以降は所定の制限に従い、ピラミッド状に配置した札から交互に1枚ずつピックアップしては、自分の盆栽の葉札・枝札につなげます。葉札は他の札の黄色い縁同士、枝札は枝札同士でつなげるのが基本ルールです。札同士をつなげることを「育成」と呼びます
育成とは別に、添配(てんぱい)札を取得することもできます。添配とは、盆栽に添えて飾っておく小さな置物で、麻雀のテンパイとは無関係です。分かりやすく得点につながるので、勝敗のキーポイントになるかもしれません。
札の配置とは別に、「剪定」も行えます。これは既に盆栽を構成している札を取り除くというもの。このままだと、盆栽の形が崩れてしまうとか、発展性が見込めないと思ったら剪定するとよいです。
冒頭で述べたように、折り返し地点で盆栽を交換し(席を交換し)、今まで相手のものだった盆栽で続きを行うという面白い特徴があります。交換のタイミングは、配置した札が無くなった時で、新たに後半戦用の葉札・枝札(裏地に2つの黄色い丸があるもの)を、前半と同様に配置して、対戦を再開します。
現実世界の盆栽と同様の樹形にして高得点に
「BONSAI UCHU」の勝敗は得点(評価点の合計)で決まりますが、その算出は前半戦の終了時と後半戦の終了時に行います。
現実世界の盆栽では、「基本樹形」といって美しい盆栽の模範とされる形がありますが、このゲームにおいても基本樹形の達成が得点につながります。例えば、「懸崖(けんがい)」。断崖絶壁に生えている樹木のように、鉢より下に葉札が3枚連なっている状態を指しますが、これは「名人技」として4点与えられます。
「文人木(ぶんじんぎ)」は明治時代に流行した基本樹形で、枝を上部に8 つ以上伸ばして、その上に葉を配置すれば達成。難易度の高い「達人技」で6点も獲得できます。
名人技と達人技はそれぞれ3種類ありますが、各カテゴリーにおいて1種ずつからしか得点できません。このほか、添配札や「胡蝶の夢」(蝶の描かれた札の多寡)などの得点源があり、枝が途中で途切れる「忌み枝」という減点要素もあります。なお、後半戦の得点算出では、相手プレイヤーから引き継いだ部分の得点は引きます。相手の盆栽をどれだけ改良できたのかが、評価の対象となるからです。
実際に「BONSAI UCHU」を対戦してみて
以下、実際に対戦してみてのレポートとなります。下の写真が開始時のもので、中央上部分に両プレイヤーがピックアップできる葉札・枝札がピラミッド状に置かれています。
(今回は布製のプレイマットを敷いて、マス目の中で盆栽の完結を目指す、やや上級者向けのプレイ方法を採用。また、プレイヤーは横に座る形式をとっています)
札は、一番上にあるものから取ってゆくのが原則。ただし、上段に「乗っている」札がなくなったら、下の札も取ることができるようになります。ピラミッドの2段目、4段目は裏返しになっていますが、このときに表に返します。
最初から高得点を狙うのは至難の技?
選べる札が限られ、前半戦は枝札の絶対数も少ないので、「あーでもない、こーでもない」と悩みながらの盆栽育成となります。
両者とも、得点の高い「文人木」や「豪華絢爛」を狙って始めたものの、なりゆきから「どうもそれは無理そう」と結論が出てしまいます。そのため、ちょっと迷走しながら、少しでも高い得点を目指しました。
前半の中盤で、左側のプレイヤー(私)は、「吹き流しができそう」とにんまり。「吹き流し」とは、「鉢の左右どちらか一方だけに葉を作る」という名人技のテクニック。これは3点と高くはないですが、あとは「胡蝶の夢」が有利なので、さらに3点はいけそうです(蝶のある札が多い側が3点獲得)。
中盤過ぎて剪定から添配の確保を狙う
中盤を過ぎてからは、両者とも主に添配札狙いに注力しました。添配札は、蓄積した「趣点」と交換して取得しますが、この趣点は剪定によって得られます。例えば、1枚の葉札や枝札を選定すれば、前半では1点、後半では2点得ます。私は3枚の葉札を剪定したので、趣点は3点。これでカエルの添配札(評価点は3点)を入手しました。一方、対戦相手は4点の趣点で、猿の添配札(評価点は4点)を入手。こうして、前半戦が終了しました。
この時点で、評価点を集計します。私は、吹き流しのおかげで3点、カエルの添配札で3点、合計6点です。相手は添配札の4点のみ。さらに、札をマス目が形作る円からはみ出さないことによる評価点として3点を両者が獲得。胡蝶の夢は、両者とも1枚の蝶の入った札があるため、得点になりません。
(この時になって、添配札の置き方が二人とも間違っていたことに気付きますが、ゲームの展開を壊すものでなく、脇に置いておき最後に得点に加味するという合意がありました)
後半戦で威風堂々の達成を目指すも…
そして、後半戦に突入。盆栽を交換し、新たな葉札・枝札を並べ、ついさっきまで相手のものだった盆栽を受け継いで、育成を続けます。
私の新たな盆栽は、同種の葉札が3枚揃っています。これをあと最低2枚増やせば、達人技の「威風堂々」(同種の葉札を5~7枚つなげる)が達成できます。ひとまず、これを最優先で考えます。
相手は、今のままでは発展性が見込めないと判断して、早々と(私が前半戦で作った)吹き流し全体を剪定してしまいます。それでたまった趣点でネコの添配札を手に入れました。
ところが、その後に取得した枝札の流れで、また一から吹き流しを作ることになりました。どうやら、枝札は全体の戦略に影響するカギとなるようです。
私はといえば、粛々と要らない札は剪定しながら、ひたすら威風堂々狙い。終盤近くでこれを達成しました。以下の写真は終了図です。
後半戦の得点は、私が威風堂々で3点、マス目からはみ出さないことで3点の計6点。相手はネコの添配札で5点、吹き流しで3点、胡蝶の夢で3点、マス目からはみ出さないことで3点の合計14点も獲得。前半の得点(私=9点、相手=7点)を加えると、私が15点、相手が21点と大差で逆転されてしまいました。
敗因は、威風堂々のことばかりを考えていて、ほかのことが頭から抜け落ちていたことでしょう。例えば、相手の胡蝶の夢を阻止するために、蝶のある札は取ってしまうなどすれば、このような逆転劇はなかったかもしれません。あと、添配札は意外に大きな要素ですね。これは、相手より早めに確保するよう常に留意しておくのが賢明そうです。
当初は「運の要素が強いゲーム?」と思っていましたが、意外と戦略性が問われるゲームでした。プレイ時間は短く、サクサク進むので、ちょっとした空き時間に遊んでみてはいかがでしょうか。盆栽好きも、そうでない人も楽しめますよ。
・「BONSAI UCHU」商品サイト:https://www.jugame.info/bonsai.html
・購入手段:「ゲームマーケット2019秋」(2019年11月23~24日)のブース番号「イ05」にて先行発売(http://gamemarket.jp/game/bonsai/)後、2020年春に一般販売の予定。