Culture
2019.10.31

両国「刀剣博物館」の見所を解説!刀剣ファン必見の展示内容とは?

この記事を書いた人

近年、刀剣の展覧会が多く開かれるようになりました。展覧会会場が大勢の若い女性で賑わっている光景も珍しくありません。熟練の目利きが難しい顔をして眺めている、というようなイメージもかつてはあった刀剣展示ですが、数年前に発表されたゲームなどの影響を受けて、いまや女性が入場者の多くを占めているといいます。

日本刀剣研究の最高機関であり、年間を通して刀剣が見られる「刀剣博物館」を併設する日本美術刀剣保存協会の広報担当、荒川史人(あらかわふみと)さんにお話を伺いました。

刀剣博物館について

– 刀剣博物館、そして日本美術刀剣保存協会について、お教えいただけますでしょうか。
荒川さん(以降、敬称略):昭和23(1948)年に、東京上野の東京国立博物館内の一室で活動を開始したのが当協会の始まりとなります。当時、美術品としての刀剣を後世に残す、という火急の課題があり、こちらでしばらく活動させていただきました。昭和43(1968)年に、日本刀の保存や職人さんの作品の展示発表といった日本刀文化の普及のため、刀剣を保存・公開する専門施設としての機能を備えた建物を東京代々木に建設し移転し、それから長らくこの地で活動してきたのですが、施設の老朽化に加えて東日本大震災の影響を受け、2018年1月、現在の両国の地にリニューアルオープンしました。

– 代々木の頃と比べて、変わったな、と思われることはありますか?
荒川:そうですね。代々木も雰囲気のあるとてもいい場所だったのですが、こちらは駅からのアクセスが非常によいことが挙げられるでしょうか。また、周辺には江戸東京博物館、すみだ北斎美術館、たばこと塩の博物館など数多くの美術施設がありますので、美術館巡りをされるかたがルートの1箇所としてご来館いただいているのも特徴の1つでしょうか。代々木の頃に比べると、来館者は倍近くになっています。

代々木の旧刀剣博物館

– 徒歩3分くらいの距離には、両国国技館もあるのですね。
荒川:そうなんです。大相撲ファンのかた、国技館のイベントで両国にいらっしゃるかた、ぜひ当館にもお越しください。お待ちしております。

ブームで客層が変化!

– やはり昨今のブームで、来館者の層などに変化はあったのでしょうか。
荒川:ありましたね。当館だけではなく、全国の博物館や美術館で刀剣展示が非常に増えています。当館で言いますと、以前はご年配の男性がとても多かったのですが、現在は30~40代くらいの、あるいは10代20代の若い女性がとても増えています。皆さんとても熱心に見学されていて、びっくりしてしまうほどですよ。もちろん、変わらずご年配の男性もいらしてくださいますし、海外からのお客様も多くご来館されます。

– 海外で日本文化が注目されていますが、刀剣にも注目が集まっているということでしょうか?
荒川:それもあると思いますし、現在刀剣博物館のある墨田区は、ドミトリーやホステルなど、海外からのお客様が利用しやすい宿泊施設が多くあることも追い風になっているように感じます。また、墨田区内には30~40ほども博物館や美術館がありますので、日本アート巡りのうちの1つとして、お立ち寄りくださっているのかもしれません。東京オリンピックの開催もありますし、地域一体となって盛り上げていきたいですね。

台風19号の影響が残る隅田川

– ちょっと近所を散歩してみたのですが、近くに隅田川も流れていますよね。
荒川:はい。現在はまだ準備中なのですが、来年夏ごろには隅田川の船着き場が再開されて、浅草から両国まで船で来ることもできるようになります。

– 船ですか! なんとも風情がありますね。ぜひ乗ってみたいです。
荒川:ぜひご利用ください。両国はJRや地下鉄、都バスや区内バスなど、いろいろな交通機関が発達していて、とてもアクセスしやすい場所にありますので、多くの方々に墨田区巡りを楽しんでいただきたいですね。

– 刀剣博物館には、とても貴重な収蔵品が数多くあると聞きます。
荒川:当館には国宝指定された3点、明石国行(あかしくにゆき)の号を持つ来国行(らいくにゆき)、当麻国行(たいまくにゆき)、龍門延吉(りゅうもんのぶよし)の太刀をはじめ、伊達政宗遺愛の品と伝わる雲次(うんじ)の太刀を含む重要文化財7点など、多くの貴重な刀剣を所蔵しています。これらの作品の展示時期は現在未定ですが、公式サイトや公式ツイッターなどで随時情報を発信しておりますので、ぜひチェックしてみてください。
刀剣博物館公式サイト

展示室を拝見

さっそく展示室に案内していただきました。現在は「日本刀の見方 パートⅡ 地鉄(じがね)」の期間中。
少し照明を落とした展示室に入るとすぐに、美しい刀が出迎えてくれます。

ん? 何か今までの刀剣展示と様子が違うような。

荒川:新しいファン層が増えてきたこともありまして、今年度から、あらためて刀剣鑑賞の原点に立ち戻ってみよう、という試みを行っています。今回は実物の刀剣の下にパネルを置いているのですが、それが実物の刀の肌模様の拡大写真になります。

見るのにコツが必要と言われる刀剣鑑賞の中でも最も難易度の高い肌模様、「地鉄(じがね)」の様子が、このパネルを見れば手に取るように分かります。これはすごい……。

荒川:こちらは、「映り(うつり)」と呼ばれる、刀の重要な鑑賞ポイントの展示です。映りはとても繊細なものですので、展示で見づらいことも多い特徴です。こちらは写真ではなく、押形(おしがた)という、刀の特徴を細部まで描いた絵で示したパネルをご用意しました。

見やすいです。そして非常に分かりやすいです。

展示室の入り口では、展示品を展示順に沿って解説した「展示MAP」が配布されていたり、より展示品が見やすいように、作品を拡大して見られる単眼鏡が無料で貸し出しされていたり、まさに至れり尽くせりです。

今こそ刀剣を見に行こう!

今までの刀剣展示は、解説文が添えられていても難解な刀剣専門用語がずらっと並んでいて、まるで呪文のような感じでした。刀剣愛好家の層が変化してきたことで、誰にでも分かりやすい、誰にでも見やすい展示が、全国各地で開かれるようになってきています。

刀剣は日本の工芸品の中で国宝に指定されたものの約半数を占める、日本文化の重要なジャンルです。今まで興味がなかった人も、刀剣がもう大好きな人も、ぜひ刀剣展示に足を運んでみてくださいね!

荒川さん、本日はお忙しい中お付き合いいただき、ありがとうございました。

日本美術刀剣保存協会・刀剣博物館 基本情報

住所: 〒130-0015 東京都墨田区横網1-12-9
開館時間: 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日: 毎週月曜日(祝日の場合開館、翌火曜日が休館)・展示替期間・年末年始
公式webサイト: https://www.touken.or.jp/

今後の展示予定

「日本刀の見方 パートⅡ 地鉄(じがね)」
~2019年12月23日(月・祝)

「第65回重要刀剣等新指定展」
2020年1月11日(土)~2月16日(日)

「日本刀の見方 パートⅢ 刃文(はもん)」
2月22日(土)~5月17日(日)

書いた人

人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。