Culture
2019.11.18

2019年度文化功労者選出!少女漫画の神様・萩尾望都の妖しく哀しい魅力に迫る

この記事を書いた人

少女漫画ファンにとって、萩尾望都は特別な存在。なかでも代表作といわれる「ポーの一族」は高い人気を誇ります。2016年には40年ぶりのシリーズ新作が発表され、2018年には宝塚歌劇団で舞台化と、世代を超えて愛され続けている名作です。デビュー50周年を記念して、2019年12月4日から16日まで「萩尾望都 ポーの一族展」が大阪で開催されます。初日には萩尾望都のトークショーがあり、300点以上の原画や資料など、ファンには見逃せない充実の展示。公開にさきがけて見どころをご紹介します。

少女漫画の神様と呼ばれる萩尾望都

萩尾望都は1969年にデビューして以来、SFからファンタジー、バレエもの、心理サスペンスと幅広い分野の作品を発表。竹宮恵子、大島弓子らと共に「花の24年組」と呼ばれ、その中でも代表格で、「少女漫画の神様」と呼ばれています。作品に文学的な要素が強いことから文化人達からの支持も厚く、2012年には少女漫画家では初となる紫綬褒章を受章。2019年10月には文化功労者に選ばれました。第一線で活躍を続ける姿は、後進の女性漫画家達の道しるべのような存在になっています。

撮影/横田紋子

不朽の名作「ポーの一族」とは

「ポーの一族」は、バンパネラ(吸血鬼)の一族に加えられ、少年の姿のまま永遠の旅を続けるエドガーが主人公です。作者の萩尾望都は、「永遠の子どもを描きたい」との思いから、西洋に伝わる吸血鬼を題材に1972年から作品化しました。共にバンパネラになった妹を慈しみ、守りながらも孤独を漂わせるエドガー。魔性の者として人間の血を奪わなくてはいけない妖しさと、葛藤を抱えた哀しみが物語に深みを与えています。物語はオムニバスで構成され、舞台もイギリスの貴族の屋敷や、良家の子息が通う寄宿舎など様々。年をとらないことを隠しながら人間社会で生きる異端の存在を主人公にした作品は、当時衝撃的でした。多くの読者を獲得して、少女漫画の地位を向上させた名作と言われています。

1975年「ペニー・レイン」(C)萩尾望都/小学館  

圧巻の原画の数々

今回の展示では、初期の作品からシリーズ最新作の原画までが間近で見られるのが見どころ。本展のために描き下ろした原画もあるのは、何とも贅沢ですね。阪急百貨店マーケティング1部9階企画・運営部の中島朋子さんは、「先に東京で開催された展示を見学したのですが、繊細な線のタッチに驚かされました。近くで見ると、より作品の思いやテーマが感じられます。是非、この感動を味わって頂きたいですね。原画のイメージをセットで再現したコーナーもあります。萩尾望都先生の世界観を感じて頂けたら嬉しいですね」と語ります。必ず下書きをした後に、線を彫り込むように丁寧に仕上げるという原画は、ため息の出る領域だとか。作品が身近に感じられそうですね。

1972年「ポーの一族」(C)萩尾望都/小学館

2019年「バラのロンド」(C)萩尾望都/小学館 
※本展のために萩尾先生が描き下ろした作品  

宝塚の歴史に残る、明日海りおのエドガー

2018年に宝塚歌劇団が「ポーの一族」を上演しましたが、原作のイメージを崩すことなく完璧なまでに表現した舞台に、多くの人が驚きと感動を覚えました。中でも難役とされるエドガーを演じた男役トップスターの明日海りおは、この世の者ではない風情を漂わせていて秀逸と評判になりました。私も舞台を見ましたが、漫画の美しいビジュアルそのもので惹きつけられました。エドガーの内面も表現されていて、宝塚歌劇の歴史に残る舞台だったと思います。今回、明日海りお他の衣装7点を展示。宝塚ファンは、伝説の舞台の思い出が蘇ることでしょう。

2018年 宝塚歌劇 花組公演「ポーの一族」
左より華優希、明日海りお、仙名彩世、瀬戸かずや
(C)宝塚歌劇団

40年ぶりのシリーズ新作の原画も!

最愛の妹を亡くして一人ぼっちになったエドガーは、友人のアランを仲間に引き入れます。永遠の旅を続けるなか、二人はロンドンの火災に巻き込まれて姿を消してしまいます。旧シリーズは、このような余韻を残す終わり方でした。最新刊「ユニコーン」の物語は、このラストから直結して始まります。「月刊フラワーズ」(小学館)で2018年7月号から9月号、そして2019年5月号から6月号にかけて掲載されました。ファンが待ち望んだ新シリーズの原画も堪能できます。

2018年「ユニコーン」(C)萩尾望都/小学館 

登場人物の葛藤を描き続ける!

萩尾望都作品は過酷な状況で、様々な葛藤を抱える主人公を描き続けています。それは、手塚治虫の漫画に描かれた人物の葛藤に共感することで、救われた経験を持つからだそう。読者はそんな主人公の生き様に心を揺さぶられ、作品に潜む骨太なテーマに励まされてきました。ファンタジーの要素を織り込んで親子の確執を描いた「イグアナの娘」は、テレビドラマ化されて注目を集めました。この作品の原画も展示されています。

「萩尾望都 ポーの一族展」基本情報

会場:阪急うめだ本店9階阪急うめだギャラリー
住所:大阪市北区角田町8-7
期間:2019年12月4日(水)~12月16日(月)
開催時間:日~木曜日 10時~20時
     金・土曜日 10時~21時
(※最終日は18時閉場、入場は閉場の30分前まで)
料金:一般800円 大学・高校・中学生600円 小学生以下無料
(※小学生以下のお子様は、保護者の同伴が必要)
会場公式ウェブサイト
展覧会公式サイト

展覧会開催記念トーク『ポーの一族』と萩尾望都の世界

会場:阪急うめだ本店9階阪急うめだホール
日時:12月4日(水)14時~15時
出演:萩尾望都
定員:400名
受付開始:11月19日(火)
問い合わせ:NHK文化センター梅田教室 06-6367-0880
(※参加有料、展覧会ペアチケットつき)

書いた人

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。