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2020.07.20

クイズ!「埼玉」県名の由来は?これを知ったらもう「ださいたま」なんて言えない!

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さいたまの民よ……なぜ、なぜ、このカードを切らぬのだ~~~!!!
あきみずの声にならぬ絶叫が行田(ぎょうだ)の空に吸い込まれていった。

それに呼応したネコたちの大合唱もまた、空に……まったく響かなかった。

さいたま、って何だ?

さて、しょうもない小芝居はさておき。

地名にはたいてい何らかの意味がある。ノリで付けちゃおう! みたいなものが中にはあるのかどうか、門外漢のため把握していないが、少なくとも「さいたま」の地名にはちゃんとした意味がある。

そういえば名付けで思い出したのだが、「トゲアリトゲナシトゲトゲ」という昆虫がいるらしい。「トゲトゲ」というハムシの中の、トゲがない種類である「トゲナシトゲトゲ」、さらにその中で、なぜかトゲがある一群だから、「トゲのあるトゲナシトゲトゲ」なのだそうだが、これについてはもうノリなんじゃないか、と思ってしまう。トゲトゲ、ってたくさん言いたかっただけなんじゃなかろか。他にも「ネズミキツネザル」とか、もう何の生き物なんだか、と思ってしまうような素敵に楽しい名前が生き物界隈にはいろいろあるが――と、脱線が過ぎた。時を戻そう。

「ださいたま」だの「めんどくさいたま」だの、原作漫画も映画も大ヒットした『翔んで埼玉』では散々なイジられキャラだった埼玉、しかし実は翔んでも――とんでもなく由緒正しい名を冠した地なのである。

埼玉すごいぜ!

埼玉県行田市、古墳群のほど近くに「埼玉県名発祥の碑」はある。
今、さらっと言ったのだが、そう、古墳群があるのだ。それもスペシャルファビュラスエクセレントな古墳群が。

稲荷山古墳(いなりやまこふん)。この名前は古代史ファンならずとも耳にしたことがあるだろう。ちょっとお腹が空いてくる響きだが、ここからの出土品がまたとんでもない。

金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)。昭和43(1968)年に稲荷山古墳の発掘調査によって出土し、その後の保存処理中に115文字の金象嵌が施されていることが判明して「100年に一度の大発見」とニュースになった国宝である。
全長73.5cm、刃長約58cm、刀身には表裏に制作年(「辛亥の年」:西暦471年もしくは531年)およびこの鉄剣を造った経緯が金象嵌で記された、当時の情勢が窺える歴史的価値の非常に高い文化財である。

2019年12月~2020年2月、この金錯銘鉄剣を当代一流の職方の手によって忠実に再現した復元品が、埼玉県立さきたま史跡の博物館で展示された。古代の研磨は現代とは異なるため、復元品も当時にならって青砥(あおと)と呼ばれる砥石で最終仕上げが施してあったのだが、これが実に美しかった。青砥での最終仕上げは砥石目がかなりはっきり見える方法だから、研師の技量が露わになる。製作当時、この復元品ほど精緻に目の揃った研磨がなされていたかはともかくとして、古代にもこの玉虫色に輝く鉄肌(現代の研磨技法からしたら荒いと見えるだろうが)が賞翫されていた可能性を明確に示されたのである。大興奮して眺め回し、警備の人に不審な目で見られてしまったのだった。あ、単眼鏡を貸してくださったジェントルマン、ありがとうございました。

ああもう、脱線しすぎてまったく話が進まない。誰か鼻先にニンジンぶら下げて先導してくだされませ。
それもこれも、埼玉がすごいのがいけないのである。

「さきたま」が「さいたま」へ

金錯銘鉄剣や古墳を見学し終わって、さて帰ろうかと思ったが、次のバスまでしばらく時間がある。時間潰しにと、ふらふら糸の切れたタコのように散歩していて偶然見つけたのが、前玉神社(さきたまじんじゃ)である。
お気づきだろうが、これこそが「埼玉」の地名の由来を紐解くカギであった。ふう、ようやく本題にたどり着いた。

発祥の碑と前玉神社とは少し距離がある。といっても徒歩7~8分程度のものだが、発祥の碑は埼玉県立さきたま史跡の博物館のすぐ近く、前玉神社はそこから道路沿いを歩いて少し入ったところに鎮座する。碑のある場所がピンポイントで発祥の地というよりは、古墳群や前玉神社のある、この地域が県名発祥の地ということらしい。

何度撮影してもピンボケしてしまった。撮るな、ということだろうか

神社はなんと古墳の真上に建てられている。前玉比売神(サキタマヒメノミコト)と前玉彦命(サキタマヒコノミコト)の男女2柱が祀られているため、恋愛成就や夫婦円満、縁結びの神様として親しまれている。

前玉神社公式サイトによると、「幸魂(さいわいのみたま)神社」とも言い、人と人の縁を結び、人の身を守り、幸福をもたらす神様なのだという。古代にこの神社につけられた「前玉郡」が後に「埼玉郡」へと漢字が変化し、現在の埼玉県の名になったそうだ。

祝詞でも耳にする「幸魂(さきみたま)」は、人びとに幸福をもたらす恵みの神の霊魂とされる。県名の由来については異説もあるようだが、各種野菜や米・茶などが特産物となっている豊かな地域であるから、人に幸いをもたらす地、が由来であると思いたい。

「さいたま」は「さきたま・さきみたま・さいわいのみたま」、実におめでたい名前なのである。不用意にイジってはならない。たぶん。

実は猫好きの聖地でもある

ところで、前玉神社の境内で、やたらお猫さまに出会った。しかも、ここの主のような風格すら漂わせているのである。にゃんだ、これ?

前玉神社自身が猫とゆかりのある場所ということではないようなのだが、お猫さまたちは、ここのリアル招き猫である。毎月22日には、特別な御朱印が授与されるというのだが、これがにゃんと、猫御朱印。しかも月替わりらしい。そして常時、猫グッズも用意されている。埼玉県名発祥の地は、猫好きの聖地の1つでもあったのだ。

お猫さまは、接客だってお手のもの。子どもがちょっとビビりながら手を伸ばしても、平然と撫でられていた。苦しゅうにゃいぞ? といった風。さすが。常連招き猫たちがモデルとなった「猫おみくじ」なるものもある。たまらんにゃ。

ださいたま、ってもう言うにゃよ?

さて。「さいたま」の名が光り輝いて見えてきたに違いない。なんたって「幸魂」の名を戴いた土地なのだから。これからは「ださいたま」なんてきっと言えないだろう。――いや、なんかこれでも言われそうな気がする。そこがまた埼玉のいいところなんだろうなあ。

余談だが、「その辺の草」を使った、かどうかは知らないが、ふらっと入った和菓子店の草餅がぶっ飛びそうなほど美味だったことを言い添えておく。

前玉神社 情報

住所: 361-0025 埼玉県行田市大字埼玉字宮前5450
御朱印受付時間:午前9時~午後4時(正午~午後1時の間は休止)詳細は公式サイトでご確認ください

書いた人

人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。