秋の実りの季節、田んぼに1本足ですっくと立ち、顔はへのへのもへじ……
答えは、そう!
「かかし」です!
私は案山子というと、アメリカ映画『オズの魔法使い』に登場する案山子が思い浮かびます。わらの脳みそなので自分は頭が悪いと思っている案山子。主人公ドロシーと旅をするうちに、成長する姿が感動的でした。英語名は「スケアクロウ」で、「カラスおどし」という意味です。
元々は嗅がし!?
案山子の語源は、「嗅がし(かがし)」ではないかと言われています。田畑の作物を狙うスズメやカラスなどの有害鳥獣を追い払うため、髪の毛や魚の頭などを焼き、串に刺して立てたそうです。悪臭で追い払っていたことから、嗅がしと呼び、次第に案山子に変化したのだとか。何だか最初は、ちょっと不気味な感じだったのですね!
案山子は歌でも歌われている!
案山子を歌った歌があるのはご存知でしょうか? 田園に1本足で立ち続ける姿を童謡にした『案山子』です。明治の終わりごろに発表された文部省歌で、浦和市のはずれにある田園を舞台に作られたと言われています。歌詞の中に簔傘つけてとあることから、当時はこの姿が一般的だったのでしょう。
またシンガーソングライターのさだまさしが発表した『案山子』もあります。都会で1人暮らしをする弟や妹を、雪の中にぽつんと立つ案山子になぞらえた名曲です。「お金はあるか、金頼むの一言でもいい」の歌詞の後には、母親への電話を促す内容が続きます。田舎から上京した経験がある人には、きっと胸に迫る内容ではないでしょうか。
町おこしの役割を担う案山子
案山子は竹やわらで造形した人形で、鳥獣に対して「人間がいる」ように見せかけることが目的でした。最近では鳥獣対策ではなく、町おこしの一環として案山子が利用されています。
限界集落に住む高齢の女性が、かつての住民たちを手作り案山子で表現したところ、思いがけずインターネットで反響を呼ぶことに。集落のいたる所に飾られている案山子を見物しに、観光客が押し寄せるようになっています。
また秋の季節は、全国各地で案山子祭りが開催されて、賑わいを見せています。暮らしの一場面を切り取ったものや、人気キャラクターを模したものなど、ユーモラスで微笑ましい案山子が勢揃いします。コンテストを兼ねた催しも多く、参加者はのどかな景色を楽しみながら投票することができます。
2020年はコロナウイルス感染拡大防止のために、やむなく中止の会場もあるようです。一方、この状況を逆手に取って、オンライン投票や、棚田からのライブ中継に挑戦している主催団体もあります。これを機会にネットで参加するのも良さそうですね。