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2021.09.15

上総一ノ宮駅とは?首都圏通勤列車の終点に行ってみた

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大都市への通勤を支える、都道府県をまたいで運行される長距離通勤電車。日常の足として活用する方も多いと思いますが、その走行距離ゆえに、終点駅まで乗り通したことがある方はほとんどいないのではないでしょうか。私も、そんな乗客の一人でした。

しかし、たとえ終点駅まで乗車しなくとも、行き先の駅名はいつも確認するもの。日常的に利用するJR総武線快速の行き先表示を確認していると、歴史好きの私が心惹かれる駅名があることに気づきます。

その駅は、「上総一ノ宮(かずさいちのみや)駅」。かつて千葉の中部にあった旧国名「上総」に、その国で一番社格の高い神社があったことを示す「一ノ宮」の文字を見ていると、無性にこの駅へ行ってみたくなりました!

「上総一ノ宮駅」行ったことはないけど、たしかに電光掲示板で見たことある!

そこで、「上総一ノ宮駅」と、この駅がある「千葉県長生郡(ちょうせいぐん)一宮町」はいったいどんな場所で、どんな観光スポットがあるのか、実際に取材して確かめてみました。

実はオリンピック開催地

上総一ノ宮駅は、東京駅から総武線快速・外房線を乗り継ぎ、1時間半ほど普通電車で揺られると到着します(神奈川県・東京都からの直通電車も走っています)。

駅舎を見てみるとかなり新しく、しかも「海」を全面に推していることに気づきます。

上総一ノ宮駅舎
駅舎、2020年にリニューアルしたばかりなんですね!きれい!

実はこの地域、教科書などでもお馴染みの九十九里浜に面しており、昔からマリンスポーツが盛んな地域だったのです。

また、電車を活用すれば首都圏にも十分通勤可能なため、サーファーなどの移住者も増えているとのこと。正直に言えば駅周辺はもっと田舎だと思っていたのですが、住宅地の開発などが進んでいる印象を受けました。

さらに、2021年に開催された東京2020オリンピックでは一宮町の海がサーフィン競技の会場にも指定されています。

町でもオリンピックに合わせた開発が行われていたようですが、2021年はコロナ禍ということもあり駅周辺の海岸では海水浴場が開設されず、マリンスポーツをしている人の姿はあまり見られませんでした。

地元の方にお話を聞くと、「稼ぎ時の夏がこれでは……」と頭を抱えている様子。一見「密」を避けられそうなマリンスポーツにも感染症の影響が出ているようです。

上総一ノ宮駅周辺の観光スポット4選

上総一ノ宮駅周辺は確かにマリンスポーツが有名ですが、「上総一ノ宮」という駅名が示すように、歴史に関係するスポットも数多く残されているのです。そこで、以下ではこの地域の歴史的な観光スポットを4つご紹介します。

玉前神社

まず最初にご紹介するのは、地名や駅名の由来になっている神社「玉前(たまさき)神社」。

「一ノ宮」という社格が示す通り古来からこの地で信仰されてきたと伝わり、平安時代に編纂された『延喜式(えんぎしき)』にもその名前が見られます。

しかし、戦国時代の上総国は後北条氏や里見氏が争いを繰り広げており、玉前神社も社殿や宝物、文書などを多く失ってしまいました。それゆえに詳しい歴史は分からないのですが、毎年9月10日から13日に行われる例祭には1200年以上の歴史があるそう。

玉前神社の例祭「上総十二社祭り」。2021年は開催中止となってしまったようですが、1200年の歴史があるお祭りいつか参加してみたい!


また、祭神が安産や子育てにご利益があるとされる玉依姫命(たまよりひめのみこと)で、源頼朝の妻・北条政子が安産祈願をしたとされていることから、現在では関東屈指のパワースポットとしても人気です。

境内には多くの見どころがありますが、個人的に注目したのは、はだしになって砂利道の上を3週歩くと幸運が訪れるという「はだしの道」。

実際に歩くと少々痛みはありますが、こうした障害を乗り越えた先に幸運が待っているということなのでしょう。

施設名: 玉前神社
住所: 千葉県長生郡一宮町一宮3048
公式webサイト:https://tamasaki.org/index.htm

芥川荘

次にご紹介するのは、あの文豪・芥川龍之介にちなんだ国登録有形文化財の「芥川荘」です。

もともと、上総一ノ宮駅周辺には明治時代から鉄道が開通しており、整備された海水浴場もありました。こうした事情から、神奈川県の大磯のように避暑地として愛され、別荘が立ち並ぶ地帯だったのです。

そして当時の別荘地には、多くの文豪たちも足を運んでいました。その一人が芥川で、現在も旅館として経営されている「一宮館」の離れに1916(大正5)年に滞在したことから、この名がつけられました。

芥川壮に滞在中の芥川さん。当時恋人だった塚本文さんに、プロポーズの手紙を書いて送ったそうですよ。小説家の彼から手紙でプロポーズなんてロマンチック♡


ほかにも、一宮館では彼にちなんで文学・短歌大会を実施したり、文学碑の前で碑前祭を実施したりしているそう。文学に関心のある方は、ぜひ一度宿泊してみてはいかがでしょうか。

施設名: 芥川荘(一宮館内)
住所: 千葉県長生郡一宮町一宮9241
公式webサイト:http://www.ichinomiyakan.com/index.html

城山公園(一宮城址)

一宮町は、マリンスポーツや別荘の街だけでなく、城下町でもありました。一宮城があった標高約30メートルの高台には、城山公園が広がります。

一宮城址大手門

一宮城は、天然の地形を利用した城郭として建てられました。発掘調査などの結果から、城主は『里見八犬伝』でもお馴染みの里見氏を支えた正木氏だったことが確実視されていますが、戦火による城の消失で詳しい築城・落城の年代は分かっていません。

一宮城の遺構

いずれにせよ戦国時代には落城し、一宮町付近は江戸時代は本多忠勝が治めた大多喜領となりました。ただし領主は安定せず、江戸時代につくられた陣屋(今でいう役場の出張所)は明治を迎えると取り壊されました。

現在の城山公園には、柔剣道場である振武館が建てられています。この名称は、江戸時代後期にこの地を支配した一宮藩の武道所にちなんでいます。一宮藩主で明治時代には教育・司法など多方面で活躍した加納久宜(かのうひさよし)の墓からの眺望も見事です。

公園を歩いているだけで、戦国時代から明治時代までの歴史を感じられそうです。


施設名: 城山公園
住所: 千葉県長生郡一宮町一宮
公式webサイト:https://ichinomiya.org/spot/020/

寿屋本家

最後にご紹介するのは、明治時代の中期に建てられた海産物問屋の旧斎藤家住宅を拠点に、カフェとして運営されている「寿屋本家(すやほんけ)」です。

この旧斎藤家住宅は明治時代の姿をほぼそのままとどめており、国の登録有形文化財にも指定されています。内装は和洋折衷の明治らしい雰囲気で、伝統ある建築物に興味のある方は見ているだけで楽しめそう。

また、古くから現存する家ということもあり、館内には多くの貴重史料が眠っています。近年は館内史料の調査・修復も進められており、2階には江戸時代の屏風画も保管されていました。

1763(宝暦13)年宋柴石作の「墨竹墨梅図屏風」

なお、お昼時はランチも提供されているため、マニアには嬉しい文化財ランチができます。私はローストビーフ定食(1000円)を注文しました。

歴史ある文化財のなかでランチができるなんて贅沢!


周辺に飲食店は多くないので、上総一ノ宮駅に来た際はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

施設名: 寿屋本家
住所: 千葉県長生郡一宮町一宮2987
公式webサイト:https://www.facebook.com/suyahonke/

まとめ

ここまで、上総一ノ宮駅周辺の情報をまとめてきました。正直、この機会がなければ一生縁がなかった街かもしれないので、「終着駅まで行ってみる」のは我ながらいい試みだったかなと思います。

心置きなくマリンスポーツができるようになれば、上記の要素に加えてさらに魅力的な観光地になるでしょう。皆さんも千葉県観光の選択肢としてぜひ検討してみてください。

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書いた人

学生時代から活動しているフリーライター。大学で歴史学を専攻していたため、歴史には強い。おカタい雰囲気の卒論が多い中、テーマに「野球の歴史」を取り上げ、やや悪目立ちしながらもなんとか試験に合格した。その経験から、野球記事にも挑戦している。もちろん野球観戦も好きで、DeNAファンとしてハマスタにも出没!?