うどんの聖地、香川県へ讃岐うどん巡りに出かけたいと思っているアナタ。「できるだけ効率よく自分の好みのうどん店を数多く巡りたい」そんなわがままが叶う「うどんタクシー」をご存じだろうか?「公共交通機関を使えばいい」「地元のタクシーなら皆うどん店に詳しいのでは?」などと思っているならちょっとお待ちを。
これら全て香川県の讃岐うどんあるあるなのです。
加えて開店時間、混み合う時間帯なども店によってさまざま。これらをパズルのように匠に組み合わせアテンドしてくれるのが「うどんタクシー」なのです。
しかし、うどんタクシーのドライバーになるには虎の穴のような厳しい訓練を受けた者にしかなれないという噂があるとかないとか、どっちなんだか。
とにもかくにも讃岐うどん巡りの最終兵器、うどんタクシーの秘密を取材するべく取材班(1名)は出没しそうなうどん店に向かった。
人気の老舗うどん店「さか枝本店」で待ち伏せしてみた
高松市の中心部、1958年に日本を代表する建築家丹下健三が手がけたことで有名な香川県庁舎(現・東館)のすぐ近く。製麺所からスタートした1964(昭和39)年創業の老舗「さか枝」は地元の人たちに愛される名店です。イリコ、鰹節、昆布でていねいにとった出汁と毎日食べても飽きることがないゆでたてのうどんがいただける香川県民のスタンダード。自分でうどんをあたため出汁をかける完璧なセルフスタイルを採用しています。朝7時の開店にはモーニングコーヒーならぬ“モーニングうどん”を楽しむ常連さんたちで賑わっています。おすすめは「かけうどん」。なんと250円、ドヤ!人気の天ぷら110円を乗せても360円、ドヤァァァ!
雑誌『和樂』読者の店主・坂枝繁さんにうどんタクシーについて聞くと「県外からの観光客の方は土地勘もないし、店と店との距離感もつかみにくいだろうから便利だと思いますよ。店としてもお客さんを連れてきてくれるのは有り難いよね」と坂枝さん。「そうだ、和樂webを見てきました!と声をかけてもらったらオリジナル・バッジあげるわ!」。ありがとうございます。
噂の「うどんタクシー」が登場!
店の前で待ち構えていると、現れました!おっと~あの車体は!そしてあのタクシーの天井に輝くうどんを模した行灯は!間違いなく、うどんタクシーの登場です。
うどんタクシーのドライバー兼広報も務める琴平バス(株)の多田純さんに「うどんタクシー」の秘密について詳しく伺いました。
―― そもそも「うどんタクシー」はいつ頃からスタートしたのですか?
多田:当社「琴平バス」の本社は琴平町にあって、もともと県外からの観光客が多く、よくお客さんから「美味しいうどん屋に連れて行って欲しい」というリクエストも多かったそうです。20年ほど前に当時の現役ドライバーのアイデアで「うどんタクシー」がスタートしました。現在所属しているタクシードライバー10名のうち5名がうどんタクシー専任ドライバーです。ちなみに女性は私1人です(笑)
過酷な試験をパスした者だけに与えられる「うどんタクシードライバー」の称号
―― 噂ではうどんタクシーのドライバーになるには厳しい試験があると聞きましたが本当なんですか?
多田:はい・・・・・・。それは難しい試験です。例えばうどんの歴史に始まって、うどん店さんの歴史から人気メニュー、営業時間や混み合う時間帯も頭の中に入っています。完全セルフスタイル、ハーフセルフスタイルなどお店の特徴も覚えなくてはなりませんね。
―― めっちゃ大変ですね。
多田:新店がオープンした情報を得るとすぐに食べに行ったりしますよ。
―― 新店オープンの情報はどこから?
多田:SNSをチェックしているほかにも、同僚のタクシードライバーが実際に見つけて「新しくうどん店がオープンしたらしい」と情報をもらうこともあります。
―― ドライバーさんは皆さんうどんが打てるって本当ですか?
多田:もちろん打てます。お客様にうどん作り方を聞かれることもあります。また移動中に作り方のコツをレクチャーすることもありますから。
―― うどんタクシーの試験が難関だと聞いたことがあるのですが。
多田:確かに。何度も挑戦している人もいます。歴史や知識についての筆記試験はもちろんですが、実際にお客さん役の上司を乗せた実地試験が大変難しいですね。ご案内の仕方や対応、会話の内容など厳しく審査されます。
―― ヒエ~大変そう。実際に利用する場合、お客さんの希望などはどのように反映しているのですか?
多田:お客様の対応はうどんの知識が豊富なオペレーターが伺います。電話やメールなどで詳しく要望を伺い、その内容をドライバーに伝えます、担当ドライバーは要望と条件に沿ってお店をセレクトします。
―― え?ドライバーさんのセレクトなんですか?
多田:そうです。必ず担当のドライバーがお店を選びますね。
―― 例えばどのような要望がありますか?
多田:空港からホテルまでの移動の間に人気のお店に寄りたい、3時間でとにかく多くのお店を回りたい、旅行から帰って皆に自慢したいのでテレビに出ていた有名店だけを選んで回りたい、ぶっかけうどん、かけうどん、肉うどんなど別々のメニューを楽しみたい、など様々です。
―― できるだけ回りたい人には開店時間の早いうどん店から攻めたりするんですね。
多田:そうですね。後は地元の人で混み合っていない時間帯にセルフスタイルのお店を入れることも。お店に着いたら一緒に店内に入って、注文の仕方まで詳しく説明しますので初めてでも戸惑わず美味しいうどんを楽しむことができますよ。
3時間で6店舗回った強者も!!
―― おお~細やかなサービス!では利用するときは細かくこちらの要望を伝えた方がいいんですね。
多田:そうですね、そうしてもらうとこちらもプランが立てやすいです。それと実際に3店回るはずでも、2店目でお腹いっぱいになってしまった・・・という場合でも時間内に行けるお勧めのお土産店や観光スポットにご案内するなど臨機応変に対応させていただきます。
―― それは助かりますね。公共交通機関で移動していたらなかなかそこまでは難しいですもんね。 ちなみに最高でどのくらいのお店を回ったことがありますか?
多田:3時間で6店舗です。
―― クセが凄い!ドライバーさんごとにチョイスするお店も違ってくるのですか?
多田:もちろんです。ドライバーによって同じ希望でも選ぶお店が違ってきます。2日連続でご利用の方で別のドライバーを指名して違いを楽しむという通のお客さんもいらっしゃいますよ。
―― お店を指定する場合何を参考にしたらいいですか?
多田:テレビや雑誌、SNSの他に、うどんタクシーの公式YouTubeチャンネルに現在173本の動画があるので、そちらをご覧になっていただいてもいいかなと思います。ご案内するお店は当日のお楽しみです。
―― 料金システムについても教えてください。
多田:60分4,800円、90分7,800円、120分9,600円です。これは1台のお値段なので定員の4人乗っていただくと1人あたりの価格もぐっと抑えられますよ。
後部座席に潜む謎の影・・・
―― 場所はどこからでもOKですか?
多田:香川県内ならどこでもOKです。駅や空港、ホテル、観光地などご都合の良い場所にお迎えにあがります。
―― なるほど。ありがとうございま・・・・・・ちょっとまって!!タクシーの後部座席に人影がッ!!
多田:見習いドライバーの「ツルきゃら うどん脳」です!研修中なんですよ。
―― ここにもうどん脳が!!!やっぱり香川県はクセが強い~~~!
なかなかのオチがついてしまいましたが、せっかくの香川県を旅するなら、効率的に楽しくうどん店巡りができる最強のアイテム「うどんタクシー」を利用して、山奥の名店や地元の人しか知らない名店に足を運んでみてはいかがでしょうか?
うどんタクシー
香川県仲多度郡琴平町1228-1
電話:050-3537-5678
HP:うどんタクシー公式HP
取材協力
さか枝うどん本店
香川県高松市番町5-2-23
電話:087-834-6291
営業時間:7:00~15:00
休:日・祝日、土曜不定休
Instagram:さか枝うどんInstagram