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2025.02.06

鰻からクラフトビールまで❤︎美濃焼が引き立てる、岐阜・ご当地グルメ旅

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毎日の生活の中で「この料理にはどんな器を合わせようか」「日本酒を飲むなら、このぐい吞みがいいな」というように、食と器には切っても切り離せない深い関係があります。美濃焼の里を訪れる旅の後編は、まさにこの器を通して出合う食の魅力をご紹介します。

やきものの町は、うな重ではなくうな丼『魚関』

岐阜県多治見市と聞いて、最初に思い浮かぶのは「陶磁器の町」というより、「日本一暑い町」ではないでしょうか。2007年8月に40.9℃を記録し、それ以降も、毎年天気のニュースに登場するほど、暑い町のイメージが定着しています。暑い町だからなのか、ここ多治見のグルメといえば、精の付く鰻が有名です。ちなみに、多治見市のマスコットキャラウターは「うながっぱ」。市民に親しまれている名物の鰻料理と、かっぱ伝説から作られたようです。

明治30年に創業、現在四代目を受け継ぐ「老鰻亭(ろうまんてい) 魚関」の主人、村手洋之(むらてひろゆき)さんは、多治見の鰻についてこう語ってくれます。

「多治見は窯元だけでなく、陶磁器の商社がたくさんあり、やきものを全国に出荷しています。そのため、日々の商談の中で、話がうまくまとまると、『ちょっとご飯でも食べましょう』と鰻屋に行って、パッと食べて、パッと仕事に戻るという風潮があって。だから多治見は「うな重」ではなく「うな丼」がメインです。贅沢なファーストフードともいえますね」

鰻は炭との出会い。上手い鰻を焼くための職人技が必要

鰻には、関東焼き、関西焼きがあるのをご存知でしょうか。背開きにして、蒸してから焼くのが関東風、腹開きで、蒸さずに焼き上げるのが関西風です。

「多治見の鰻は、関西風で焼いて脂を焼ききり、炭火の熱をじっくり加えてやわらかくしていきます。タレは尾張風でたまり醤油をベースに、みりんと氷砂糖だけで作ります。途中でみりんを塗ることでつやが出て、パリッとした食感になり、おいしいんです」と村手さん。

特別に焼いている瞬間を撮影させていただきました。団扇であおぎながら、火加減を調整し、早業で鰻を返しながら、焼ききっていくのだとか。鰻の料理人には、「割き3年、串打ち5年、焼き一生」という言葉があるそうです。刻々と変わる炭火の温度は、一定の温度を保つガスや電気と違い、熟練の感覚が必要。職人技があるからこそ、ふっくらパリッとしたおいしさで焼きあがるのです。

「鰻は炭との出会いでおいしくなるんです。それがよくわかるのが白焼きで、最初の一口は何も付けずに食べていただきたいと思っています。そこに合うのが多治見の地酒、三千盛(みちさかり)。辛口で、すっと鰻の脂を落としてくれます」とおすすめの食べ方でいただくと、まさに、鰻と日本酒のマリアージュ。目から鱗でした。鰻巻きや飛騨牛のタタキをいただき、最後の〆にうな丼をいただく。日本人であることの幸せを感じる瞬間でした。

お気に入りの店で、アットホームな雰囲気の中で味わう「うな丼」

多治見市には、20軒以上の鰻屋があり、その中の3軒は100年以上続く老舗です。親子3代で通う人たちも多く、それぞれに行きつけの好みの鰻屋さんがあるといいます。隣の土岐市が「どんぶりの生産日本一」ということもあり、丼への親しみも強いのでしょう。「運動会で息子が頑張ったな、というような、家族のちょっとしたいいことや嬉しいことがあった時など、『鰻でも食べに行こうか』といったカジュアルな感覚で食べるのが多治見の鰻です」と村手さんは笑顔で語ってくれました。初めて伺った私たちにも、アットホームな雰囲気でくつろがせてくれるのも多治見の鰻屋なのかもしれません。店の横には、鰻塚が建てられています。鰻を大切に思う気持ちが表れているようでした。

老鰻亭 魚関

住所:岐阜県多治見市本町4-32
電話:0572-22-5355
営業時間:11:30~14:00/17:00~21:30 ※尚、レストランでお食事(コース料理以外のお客様)に関してはそれぞれ13:30(昼) 19:30(夜)が
最終入店及びラストオーダー
定休日:不定休(webサイトに掲載)
webサイト

壁一面に美濃焼の陶板が!目と舌で味わう美濃焼の地ならではの「浪花」

やきものの産地でいただく食事は、おいしさもさることながら、美濃焼の器で味わえる楽しみがあります。多治見駅から徒歩5分、「美濃焼和食割烹 二代目 浪花」。店内に入るやいなや、まずカウンターにずらりと並んだ器が、客人を出迎えてくれます。二代目を継いだ木下高成(きのしたたかまさ)さんは、美濃焼で料理を味わってもらうのはもちろん、窯元や作家を応援したいとの思いから、部屋の装飾にも美濃焼をふんだんに使っています。

「地元の美濃焼を発信できるようなお店にしようと、2017年に座敷を拡張した時に、この陶壁をしつらえました。30ぐらいの窯元さんや作家さんに、自由に25㎝四方の陶板を作ってもらうようお願いしたんです」

まるでアートギャラリーにいるような個性豊かな作品の中で、食事ができるのは、とても贅沢です。

いずれは、二次元コードなどを活用して、それぞれの窯元や作家の情報が得られるようにしていくそう。ここで扱っているのは、全て現役で活躍されている方々の作品

旬の美味しさを引き立てるのは、やきものの器

食事は地の物を中心とした和食で、旬のものをベースに会席や、飛騨牛を使ったローストビーフ丼や瑞浪のボーノポークを使った自家製牛蒡味噌カツ定食など、ボリュームのある見た目にも豪華な料理が評判です。

海老のしんじょうあげ、飛騨牛のローストビーフ、刺身など旬のおいしさがギュっと詰まった一番人気の「彩り 七色御膳」は、見た目にも華やかで、カラフルな小鉢がより一層、食材を引き立ててくれています。

浪花では気軽に美濃焼を使ってもらおうと、箸置き専門店から仕入れた多様な箸置きを販売。食材や料理の形をした遊び心満載の箸置きは見ているだけで笑顔になります。店主の美濃焼への愛が随所に感じられるお店です。

美濃焼和食割烹 二代目 浪花

住所:岐阜県多治見市栄町1-46
電話:0572-23-6639
営業時間:11:00〜14:00/17:00〜23:30
定休日:昼 月・火曜/ 夜 月曜日
webサイト

静かな隠れ家で、自然に包まれながら緩やかな時間を味わうRyo-an

美濃焼が、豊かな自然の中で、大切に受け継がれてきたことを感じさせてくれた今回の旅。そんな東濃の魅力を体感できる、とっておきの隠れ家が、木々に覆われ、目の前を清流が流れる「オープンカフェ&ギャラリー Ryo-an」です。大自然に包まれた鬼岩温泉にある料理旅館の了山が、姉妹店として本格的な和と洋を採り入れた創作料理や、炭火焙煎コーヒー・森のケーキを楽しめる場所として10年前にオープンしました。テラス席は川床となっており、ダイナミックな自然を目の前に食事が楽しめ、心身共に開放されていきます。ランチは予約制30食限定のコース料理のみ。了山の板前が月替わりで考案する創作フレンチは、ご予約制となっています。

写真は、前菜のミートローフ、サーモンの寿司、焼きチーズ明太子、揚げかぼちゃ、グリーンレーズン白ワイン煮に、メインがクリームソースパスタ グリルチキンと盛りだくさん。これにプチケーキとコーヒーがついて、平日2200円(税込)、土日祝日はアミューズもプラスされて2750円とリーズナブルなのもうれしい

大自然の息吹を感じながら、時間の感覚を忘れ、自分たちだけの世界に浸れるのは贅沢の極み。2階にはギャラリーが設けられ、月替わりで美濃焼・ ガラス雑貨・アパレル等の販売も。古民家風の懐かしいスペースでゆったりしたくつろぎの時間が過ごせます。

オープンカフェ&ギャラリー Ryo‐an

住所:岐阜県瑞浪市日吉町9502-1
電話:0574-68-2208
営業時間:9:30~17:00
定休日:定休日:月・火曜日(祝日の場合は営業)冬季の平日は15:00クローズ(1月上旬~2月末)
※7歳以下のお子様はご遠慮ください。
webサイト

クラフトビール界のレジェンドが生む、極上の味カマドブリュワリー

美濃焼の里を訪ねる旅、最後に訪れたのが瑞浪市。ここにはクラフトビール界を賑わすブルワリーがあります。

JR中央本線で現存する最古の駅舎がある釜戸駅から徒歩3分。地元への親しみを込めて、店名を付けた「カマドブリュワリー」。地元を盛り上げたいとUターンした東美濃ビアワークスの社長、東恵理子(あずまえりこ)さんと、醸造長を務めるブルワリー歴28年のレジェンド、丹羽智(にわさとし)さんがタッグを組み、おいしいクラフトビールを提供しています。

「2020年の11月から醸造をスタートし、丸4年が過ぎました。定番のビールが4種類、準定番が4種類、また月ごとに限定ビール数種類を作るなど、現在までに仕込んだビールの種類は100種類以上にのぼります」と丹羽さん。彼からクラフトビール造りを学ぶ人たちが、全国に40名以上いることから、このカマドブリュワリーは知る人ぞ知る場所でとなっています。

クラフトビールは、ブルワリーの感性が決め手

「1日1日の管理で味が変わってしまうほど繊細な生き物がビールです。年がら年中ビールのことを考えていて、休みの日も時間があれば、工場に様子を見に来ています」と丹羽さん。そんな彼のもとには、現在もたくさんの研修生がビール醸造を学びに来ています。

工場に併設されたビアバー「HAKOFUNE ハコフネ」では、出来たてのビールの飲み比べが味わえるなど楽しい試みも。地元の野菜や瑞浪のブランド豚、ボーノポークを使った料理を味わいながら、美濃焼で作ったビアカップで飲むビールは格別です。

自家製燻製ミックスナッツや季節野菜のおつまみ、ボーノポークのビール煮、ボーノポークのキーマカレーなど地元の食材をふんだんに使った料理もおいしい

海外での生活や東京での仕事を経験した東さんですが、地元の自然豊かで、暮らしやすい、魅力を再発見。「クラフトビールを通して、瑞浪の良さを伝えながら、町を活性化していきたい」とカマドブリュワリーを拠点に、コミュニティづくりや移住者の受け入れ相談など、町おこしにも力を入れています。本格的なクラフトビールのおいしさをぜひ、味わってみてください。

すっきりしたフルーティな味わいの「竜吟」やスパイシーなおいしさの地元で発掘された古生物の名をビール名にした「Paleoparadoxia」、コーヒーのような深い味わいの「窯焚物語」など、地元愛を感じるビールがたくさん味わえます。地元の作家が作る個性的なビアカップは、アートに触れる楽しさも

カマドブリュワリー

住所:岐阜県瑞浪市釜戸町3154-3
電話:0572-51-2620
営業時間:18:00~22:00(金曜)、12:00~22:00(土曜)、12:00~19:00(日曜)※平日は特別貸切(6名様~)
webサイト
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自然あふれる東濃の秘境で古に思いを馳せる

東濃は名古屋駅から1時間弱で、山や川に囲まれた風光明媚な自然と触れ合えるエリア。おいしいビールの後は、自然を満喫しに、瑞浪の秘境「竜吟の森」を訪ねました。自然環境学習にも使われているこの場所は、希少な植物が生息し、四季折々の美しい景観が楽しめます。敷地内に建てられた「瑞浪市自然ふれあい館」では、展示コーナーがあり、この地域の自然に関する展示コーナーやボルタリングスペース、ワークショップなども開催。周辺には竜吟七滝を含む竜吟峡や竜吟湖があり、沢コース、山コース、湖コースの3つのウォーキングコースが楽しめるとあって、人気のスポットとなっています。大自然に包まれながら、1300年以上の歴史を誇る美濃焼の歴史に触れると、自然と人との深いつながりも見えてきます。古の時代に思いを馳せながら、美濃焼を巡る旅をじっくり味わってほしいと思いました。

瑞浪市自然ふれあい館

住所:岐阜県瑞浪市釜戸町1069-307
電話:0572-63-0015
営業時間:9:00~17:00
休館日:月曜、祝日の翌日、年末年始
webサイト