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2024.01.15

ところどころでほっこり、にっこり。「由布院 玉の湯」その2【〝おもてなし〟を体感できる至高の湯宿】

至高の温泉地と湯宿をご紹介する全13回シリーズ、第8回は「由布院 玉の湯」その2をお送りします。

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創業者が植えた木々は半世紀近く経って、森のようになり、
宿全体を静かに包み込んでいます

大分県の由布院温泉には「御三家」といわれる宿があります。「亀の井別荘」「山荘 無量塔(むらた)」。そして「由布院 玉の湯」。山の盆地の小さな温泉地であった由布院が現在のように全国屈指の人気温泉地になったのは、この3軒の宿の個性と志(こころざし)の高さにあることは、よく知られるところです。まるで、京都や奈良における神社仏閣がそうであるように、由布院においては、たとえ町なかがどんなに多くの観光客でにぎわおうとも、この3軒の宿が、町の文化や精神性の静寂なよりどころになっているのだと感じます。

ところどころでほっこり、にっこり

左/親しみのある手づくりの看板に気持ちがゆるむ。中/大人が売店で買い物をしている間に、子供たちが遊べるように、と置かれた木馬。小さな木馬は多くの鉄道車両をデザインしている水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんがつくってくれたという。右/玄関まで緑の小径を歩いていくアプローチ。鳥や虫の声に招かれ、胸が躍る。

3軒の中でも「玉の湯」は、とりわけやわらかな雰囲気をもつ宿です。敷地内を包む樹木は、もともと田んぼであった場所に、創業者である溝口薫平(みぞぐちくんぺい)さんが植えて育てたもの。クヌギ、コナラ、モミジ、カエデ、ヤマザクラ……。〝山男〟であった溝口さんが、山の植生を参考にしながら、木々の下にはクマザサやシダなどの植物も植え、50年近くが経った今では本物の雑木林(ぞうきばやし)のようになりました。植物が育つとともに、虫や鳥、動物たちの種類もずいぶん増えたといいます。
いわば、雑木林のような〝多様性〞が「玉の湯」の心くばりに感じる本質なのかもしれません。社長である桑野和泉(くわのいずみ)さんが教えてくれます。

ほどよく人が傍らにいる優しい気配と安心感

左/禅寺の保養所であった旅館を1970年代に大改築して現在のかたちになった。それから50年近くが経ち、山荘のような建物も雑木林も深い味わいを増している。右/C.W.ニコルさんの発案でつくられた「ニコルズ バー」。おしゃれをしてこのバーでカクテルをいただくのを楽しみにしている90代の常連客もいるのだそう!

「うちのスタッフの年齢は、20代から80代まで。細かなマニュアルはなく、本人の個性で接客するところも大きいです。お客様も0歳から90代までいらっしゃいます。最近は、おじいちゃん、おばあちゃんとお孫さんで泊まりにこられる方々も増えました」
子供たちの楽しそうな声が聞こえるのは幸せです。同じ空間にさまざまな世代がいるという安心感。「世の中は、多様なものが交じり合う、やわらかい社会であってほしいと思いますし、『玉の湯』もそうありたい」と語る桑野さん。きっと、人は、「玉の湯」のような〝優しさ〞に憧れ、帰っていくのです。

知的な落ち着きが漂う空間

左/作家に愛される宿としても知られる「玉の湯」。談話室の書棚にはゆかりの作家たちの本も多く並ぶ。右/白い木の椅子に座って、のんびり中庭を眺めたい。

空海(くうかい)が杖を突いたら、動物が傷を癒やしていたなど、各地に温泉伝説が。日本人は大地の恵みに支えられている。写真は、大分県「由布院 玉の湯」の浴室。

【湯宿DATA】

由布院 玉の湯(ゆふいん たまのゆ)
住所:大分県由布市湯布院町湯の坪
電話:0977-84-2158
宿泊料金:2名1室利用時1名¥41,950(税込)~(1室1名利用は部屋数・タイプ限定で¥59,550(税込)~)
アクセス:JR久大本線「由布院駅」よりタクシーで約3分
公式サイト:https://tamanoyu.co.jp/


撮影/伊藤 信 構成/高橋亜弥子
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示の宿泊料金は税金・サービス料込みの金額です。別途入湯税や、入浴料などがかかる場合があります。また、連休や年末年始など、特別料金が設定されている場合もあります。
※お出かけの際には宿のホームページなどで最新情報をご確認ください。

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和樂web編集部

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