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2019.08.21

数字に隠された暗号を解読せよ! 図書館を使いこなす鍵「NDC」ってなんだ【図書館のヒミツ】

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図書館に行ったけど、たくさん本があるのに、自分が欲しい情報がなかなか見つからなかった、という経験はありませんか?
そんな方に、図書館の本の並べ方の規則である「NDC」をご案内します。「NDC」を知って、図書館での調査の達人になりましょう!

そもそも、「NDC」って何?

図書館に行くと、「歴史とか、美術、スポーツなど、似たようなテーマの本が固まって書架に並んでいるな」と思ったことはありませんか?

図書館では、図書分類法を使って、本に書かれた内容(テーマや主題)によるグループ分けを行い、 そのグループごとに順序よく棚に並べています。 そんな図書分類法の1つが「NDC(日本十進分類法:Nippon Decimal Classification)」。NDCは、日本のほとんどの公共図書館、学校図書館、大学図書館で使われています。

NDCの数字には意味がある

NDCによる本の分類方法では、まず、すべての知識を9つに分け、1から9の数字を割り当てます。どこにも当てはまらないもの、あるいは全分野を扱うもの、例えば百科事典などは「0」に分類されます。
さらに、0から9に分けるという繰り返しで、分類を細分化していきます。

なお、NDCは、本に書かれた内容(テーマや主題)によって分類するための基準であり、本の大きさなど、外見の要素は考慮されません。

本の背のラベルに隠された秘密

図書館の本の背には、四角い3段あるいは2段のラベルが貼られています。このラベルを「請求記号」と呼びます。

ラベルの1段目の数字がNDCで、この数字は図書館内の本の置き場所を示すだけではなく、数字や桁が意味を持っています。「何丁目何番地何号」のような住所表示と考えたらわかりやすいかもしれません。NDC3桁の数字で表記する図書館が多いようですが、本が多い図書館では、更に詳しく分類するために、4桁や5桁のNDCを用いることもあります。
NDCの数字には意味があり、桁が増えるごとに詳しく分類されていく仕組みとなっています。

ラベルの2段目は、受入番号、著者名の読みのカタカナやアルファベット、両方を組合わせたものなど、図書館によって様々です。

ラベルの3段目は、大きな図書館では、シリーズ物の巻数、出版年としているところが多いのですが、3段目がない図書館もあります。

ラベルの形や色も図書館によって異なりますが、辞典類など(図書館では「参考図書」と呼んでいます)は赤いラベルで、「参考図書コーナー」にまとめて置いていている図書館が多いようです。

NDCを見てみよう

例えば、日本の地理についての本-日本の観光ガイドなど-は、NDC「291」になります。1桁目の「2」は歴史や地理、2桁目の「9」は地理、3桁目の「1」は日本を意味しています。

日本の地理の本を、もう少し詳しく、地方別、都道府県別に分類したい場合は、4桁目以降を使います。「291.1」は北海道の本、「291.2」は東北地方の本、「291.3」は関東地方の本というように分類していきます。
都道府県別に分類したい場合は、5桁目を使います。東北地方の県を北から順に、「291.21」は青森県、「291.22」は岩手県、「291.23」は秋田県、「291.24」は宮城県、「291.25」は山形県、「291.26」は福島県となります。

NDC分類の例

291  日本の地理全般
291.1  北海道
291.2  東北地方全般
291.21  青森県
291.22  岩手県
291.23  秋田県
291.24  宮城県
291.25  山形県
291.26  福島県
291.3  関東地方全般

NDCの数字はこう読む

NDCの数字の読み方にも特徴があります。
日本の地理についての本のNDCは「291」ですが、「ニヒャクキュウジュウイチ」ではなく「ニ キュウ イチ」と読みます。北海道についての本「291.1」は「ニヒャクキュウジュウイチ テン イチ」ではなく「ニ キュウ イチ テン イチ」です。

分類番号の数字は1つ1つが独立した意味を持つ記号であるため、数字を1つひとつ独立させて読むのです。

NDCはアップデートしている

NDCは、もり・きよし(森清、1906~1990年)が1929年に「日本十進分類法:和漢洋書共用分類表及び索引」として刊行したものが最初です。その後、10年に1回程度改訂が行われ、最新は第10版(2015年1月26日刊行)。

1950年に刊行された新訂6版以降は、日本図書館協会分類委員会が改訂・維持・管理しています。

分類の限界

NDCが普及したのは、戦後になってからです。現在のNDCの骨格になっているのは、1950年に刊行された新訂6版です。

新しい分野が話題になり、これに関連する本が出版されるようになると、NDCに適当な項目がなく、どこに分類すべきか決めるのに苦労します。

例えば、コンピューターについて、ソフト(情報)は「007」などに、インターネットなど通信関係やハード(電子機器)は「547」「548」などに、スマートフォン(通信)は「694」などに分かれてしまっています。

NDCの改訂は行われていますが、社会情勢に合わせてすぐに対応することが難しいという課題があります。

公共図書館の本の並べ方を知ろう — これを知れば、もう迷わない!

このように、NDCは多くの図書館で使われていますが、それぞれの図書館が利用しやすいよう、本の並べ方を工夫しています。

図書館の配置図を手に入れよう

図書館に行ったら、本の配置の全体像をつかむために、図書館の地図である書架案内図があれば入手しましょう。利用案内に、館内の平面図が載っていることもあります。
これらは、入口付近のラックや相談カウンターなどにあります。

NDCを使わない本の並べ方もある

図書館の配置図を見ると、その図書館がどういう分野に力を入れているかがわかります。

利用が多い小説が入口近くにまとまって置かれている図書館もあれば、ビジネスマンの利用が多いビジネス街の図書館では、「ビジネス情報コーナー」を設けて、ビジネスに役立つ資料を置いていることも。

文庫本や新書のコーナーがある図書館もあります。

子ども向けの本や絵本は、児童コーナーにあります。児童コーナーの書架は、子どもが取り出しやすいよう、一般の書架より低くなっています。

児童コーナーの書架は、カラフルな色使いの図書館も

中高生向けの本を集めた青少年向けコーナー(ヤングアダルトコーナー、YAコーナー)を設けている図書館もあります。

その図書館のある自治体の発行した資料や地域の歴史や地理、文化に関する資料、地元出身者の著作などを集めた「地域資料コーナー」「行政・郷土コーナー」には、その地域ならではの珍しい資料があるかもしれません。

図書と形態が異なる雑誌や、CDなどの視聴覚資料のコーナーが設置されている図書館もあります。

ミニ展示やテーマ展示も忘れずにチェック!

図書館では、ミニ展示やテーマ展示を設けて本を紹介してします。

季節に関するもの、話題の出来事など、テーマは様々。図書館の本を良く知っている図書館職員の視点で選ばれた本が並んでいます。「えっ、こんな本があったの?」というような、思いがけない本との出会いがあるかもしれません。

この本はどこにある?

似たようなテーマの本が、別々の所に分類されている場合があります。具体的に見ていきましょう。

仏像の本

仏像に関する本は、「美術(718)」と「宗教(186.8)」の両方にあります。

仏像について、どちらの観点から書かれているか、著者の専門分野がどちらかによる場合が多いので、両方の分類をみて内容を確認したほうがぴったりの本を探すことができるのではないでしょうか。

『源氏物語』の本

『源氏物語』に関する本は「913.3」にあります。

『源氏物語』の現代語訳を探している場合は、日本古典文学全集(918)に収録されている源氏物語も見てみることをおすすめします。

NDCを知ると、図書館がもっと便利になる!

NDCを知り、図書館の本の分類の仕方と並べ方を覚えると、図書館での調査がもっと便利になること間違いなし?

図書館の本は、同じテーマのものが近くに並んでいます。蔵書検索パソコンで見つけた本を探して書架に行った時は、ぜひ、その本の近くの本も見てみてください。もしかしたら、思いがけない本が見つかるかもしれません。

主な参考文献
・『NDCの手引き 「日本十進分類法」新訂10版入門』 小林康隆編著 日本図書館協会 2017年4月
・『NDCへの招待 図書分類の技術と実践』 蟹瀬智弘著 樹村房 2015年5月
・『図書館で調べる』(ちくまプリマ-新書 160) 高田高史著 筑摩書房 2011年6月
日本図書館協会 分類委員会
分類記号と図書館の本の並べ方(大阪府立図書館)

書いた人

秋田県大仙市出身。大学の実習をきっかけに、公共図書館に興味を持ち、図書館司書になる。元号が変わるのを機に、30年勤めた図書館を退職してフリーに。「日本のことを聞かれたら、『ニッポニカ』(=小学館の百科事典『日本大百科全書』)を調べるように。」という先輩職員の教えは、退職後も励行中。