名劇場のある街「大阪・ミナミ」
江戸初期に開削された道頓堀(どうとんぼり)は文楽(ぶんらく)を中心に芝居町に発展、明治時代には「道頓堀五座」と呼ばれる大劇場がずらり。現在も「松竹座(しょうちくざ)」など、上方(かみがた)演芸の発信地となっています。
純喫茶 アメリカンの「玉子サンドウッィチ」
幕間にも食べやすい薄型の細三角形
創業78年目。明治生まれの祖父が私財を投じてつくり上げた喫茶空間は、イタリアの大理石、川島織物の段通(だんつう)などすべてが当時の最上級品を使用。
〝日本のブロードウェイ〟と呼ばれた最盛期のミナミを象徴するようです。
「味にも手を抜かず、料理はすべてひと手間かけたもの。コーヒーの焙煎(ばいせん)はもちろん、甘味の小豆も調理場で炊きます」と姉妹で店を守る山野陸子(やまのむつこ)さんと誠子(せいこ)さん。
サンドイッチは、当時幕間弁当の変化球として重宝されてきました。
専用の折箱は、ひざの上でも場所をとらない正方形で、細三角形に切られた薄切りパン4枚分がちょうど収まります。
「玉子サンドウィッチ」はからしバターを塗ったパンに、塩と隠し味で調味して、ふわっと仕上げたオムレツを挟むだけ。
「パンを切っている間にいい具合に蒸されて、パンもオムレツもふくらむ。熱いうちが食べどきです」と誠子さん。
シンプルに徹した味わいは、手づくりの味で魅了してきた自信の表れでしょう。
一子相伝の焙煎術によるコーヒー
螺旋階段にシャンデリア!
DATA「純喫茶 アメリカン」
住所:大阪府大阪市中央区道頓堀1-7-4
電話:06-6211-2100
営業時間:10時~22時
休み:月3回木曜、不定休
公式サイト:https://www.junkissa-american.com/
アラビヤコーヒーの「アラビヤサンド」
歌舞伎役者も贔屓のご褒美サンドイッチ
「はり重」といえば大阪を代表する老舗高級精肉店。
そのボンレスハムが贅沢に入る厚焼き玉子は、小さな専用器でつきっきりで焼かれます。
箸を時折さし込み、空気を含ませて中をやわらかく仕上げながらも、外はこげ目のつく手前までしっかり焼き込むのがこの店のスタイル。
「1回で1人前しか焼けないので、注文が重なるとお待たせすることになります。それでも口に入れたら、『これは待ったかいがあるわ』と皆さんおっしゃってくださる。その言葉がうれしくて」と2代目マスター・髙坂明郎(こうさかあきろう)さん。
父が1951(昭和26)年に開業。店はミナミの中でも指折りの美食店が連なる法善寺横丁(ほうぜんじよこちょう)の近く。
「美味しいものにうるさい役者さんたちの口コミで、いろいろな方から贔屓(ひいき)にしてもらってきました」と髙坂さん。
現在も、大阪公演があれば必ず一杯のコーヒーを求めて立ち寄る役者さんもいて、「アラビヤサンド」や「ホットケーキ」を幕間の楽しみにしているそうです。
深煎りが美味なコーヒー
DATA「アラビヤコーヒー」
住所:大阪府大阪市中央区難波1-6-7
電話:06-6211-8048
営業時間:11時~18時(土曜・日曜・祝日は10時~19時)
休み:水曜不定休
公式サイト:https://arabiyacoffee.com/
※本記事は雑誌『和樂(2024年6・7月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。