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2025.09.01

京狩野の美を堪能できる「妙心寺天球院」

名作の障壁画と禅の世界が広がる空間

平安時代に貴族たちが別荘を構えて花畑があった地、花園(はなぞの)。室町時代、この地を愛し、禅の奥義を究めた法皇は離宮を改めて禅寺に。それが、名実ともに日本随一の禅寺、妙心寺。広大な敷地には46もの塔頭があり、そのなかでも狩野山楽とその弟子山雪による多くの障壁画で日本美術ファンを魅了しているのが、天球院です。

天球院の創建は、江戸時代初期の寛永8(1631)年。岡山藩主の池田光政(いけだみつまさ)が伯母・天球院のために建立した寺は、女性好みのやわらかな美しさと上質さに満ちています。

最大の魅力は、禅宗寺院に多い水墨画だけでなく、「竹に虎図襖(とらずふすま)」や「梅花遊禽図襖(ばいかゆうきんずふすま)」など彩り豊かな金碧画が多く残されていること。日本絵画史に君臨した狩野派のなかでもより繊細で優美な京狩野の傑作といわれる襖絵や杉戸絵は全152面を数えます。また創建当時のままという方丈建築の本堂も、静かな風情のある庭園も見どころに。隅々にまで受け継がれる京都の美を感じるお寺です。

この寺に伝わる天球院様の掛け軸も美しい

天球院(1568〜1636)は江戸時代初期の姫路城主池田輝政(いけだてるまさ)公の妹。因幡(いなば)の若桜(わかさ)城主の室となるが離縁して池田家に戻り、天球院様と呼ばれた。その姿は、寺の天球院が創建された時期に制作されたと思われ、今も受け継がれるこの画に残されている。「天球院殿像」天球院所蔵

飾り棚の奥には水墨画の「三笑の図」

方丈「上間一の間」の水墨画。中国の東晋(とうしん)時代、廬山(ろざん)に隠棲(いんせい)していた高僧・慧遠(えおん)が、友人である陶淵明(とうえんめい)と陸修静(りくしゅうせい)を送る際、話に夢中になるあまり、俗世との境界である虎渓の橋を無意識に渡ってしまい、3人で大笑いしたという、中国の故事「虎渓三笑(こけいさんしょう)」が題材になっている。

グラフィカルな「竹に虎図」は圧巻!


仏事が執り行われる「室中(しっちゅう)」20面に描かれた「竹に虎図」。東側には上方を見上げる虎、西側には子供の虎を自らの尻尾であやす虎の家族の風景が。狩野山楽・山雪筆。

「梅・柳に遊禽図襖」には、冬の景色も描かれて

「上間二の間」の襖絵は18面で構成され、「梅・柳に遊禽図襖」と呼ばれる。春と冬、ふたつの季節が描かれ、この南面には柳と白鷺を主とする冬の景色が。狩野山楽・山雪筆。

妙心寺天球院
寛永8(1631)年、岡山藩主の池田光政が伯母の天球院のために建立した、妙心寺の塔頭寺院。狩野山楽・山雪が手がけた襖絵や杉戸絵を152面も有し、いずれも重要文化財。文化財保護のため高精細複製画を展示し、オリジナルは京都国立博物館に寄託(水墨画の一部と杉戸絵はオリジナルを展示)。
住所:京都市右京区花園妙心寺町46
電話:075-462-9041
通常非公開 tenkewin.com

※本記事は『和樂(2025年10・11月号)』の転載です。
撮影/熊澤 透
構成/川村有布子、古里典子(本誌)

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和樂web編集部

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